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逢魔が刻の一ツ星  作者: スズヤ ケイ
八 枯らすもの
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九十 枯らすもの

 飛行の権能により、あっという間に琵琶湖に到着した白星は、思わず我が目を疑った。


 中天に、太陽が二つありて、周辺をじわじわと焦土と化しているのだ。

 水気の元々少ない場所などは完全に乾き切り、ひび割れまで起きている始末。川が干上がるのも時間の問題と思えた。


 よくよく見れば、片方は目で見ても潰れぬ程度の光量で、偽物だとはすぐ知れる。しかしその熱量は侮れないものがあった。


(白星様。ご足労頂き、ありがとうございます)


 湖面の上で浮いている白星の脳裏に、鰐淵王の思念が届く。


(うむ。状況は聞いておったが、これ程とはの。竜宮と琵琶湖の守りは安泰か?)

(はい。今のところは龍穴の力もあり、結界が途切れることはありません。しかし、流れ込む支流が枯らされれば。いずれは……)

(猶予はないか。なれば多少力技でも、偽の太陽を討ち破らねばな)

(お願い致します)

(任せおれ)


 脳内でのやり取りを終えると、白星は早速にも行動に移った。


 まずは龍穴の真上に陣取り、白鞘を通じて水気の力を汲み上げる。

 するとたちまち白星の頭上に、偽太陽と同等の大きさの水球が渦を巻いて膨らんでゆく。


 これを直接ぶつけてもよいのだが、白星は思い留まって熟考する。


 球状というものは見た目は派手だが、面でぶつけるために左程の突破力が無い。

 仮にぶつけた後、表面に届く前にいくらか蒸発することも有り得るのだ。

 そうなれば二度手間、三度手間となりかねない。


 こちらの消耗を避ける意味でも、一撃で消滅させるのが理想である。


 思考しながらも偽太陽の観察を怠らなかった白星は、その表面に黒点のようなものがぎょろぎょろと動き回っているのに気が付いた。


「ふむ。あれが弱点かの。一か八か、ねろうてみるか」


 白星は白鞘で黒点に狙いをつけると、水球から絞り出すように激流を放った。

 水を極限まで圧縮し、噴出する勢いをもって水流の槍と化したのだ。


 その勢いは目で追うのも難しく、一瞬で偽太陽を撃ち抜いていた。


「う、ぎゃああああああああああ!?」


 黒点を潰された偽太陽は見事に消失し、次いで凄まじい悲鳴が周囲に轟いた。


 偽太陽が消失すると、琵琶湖から見て東側に立派な山が姿を現した。

 あれが件の三上山なのだろう。


 その山には黒く細長い何かがとぐろの如く巻き付いていた。

 そして悲鳴と同時にそれは解けていき、こちらへ飛翔してくるのが見えた。


 となればあれが今回の敵、大百足本人なのであろう。途中ふらつき、山や平地にぶつかって地形を変えながらやってくるのを見ると、相当な大きさなのであろうと推察できる。


「貴様あああああ!! よくもおれの右目をおおお!!」


 湖までまだ距離があるというのに、大百足は雄々しく叫ぶと、それは言霊と化したように激しい火炎が白星の元まで届き、周囲を薙ぎ払った。


 白星は白鞘をくるり回して水の壁を作るも、あっという間に蒸発し、一時後退を余儀なくされた。


「かか。己の右目を媒介として偽太陽を創りよったか。あの温度も納得よな」


 自らの身を捧げて術の中核と成し、威力の底上げを行うのは珍しい話ではない。

 誰もあの偽太陽を撃ち破れはしないとの慢心から、火力に全てをかけていたのだろう。


 しかし白星はそれを見抜き、その上を行った。

 それ故手傷を負う羽目になったのだ。見れば右目から、とめどなく血が溢れている。


 火炎を吐いた隙に琵琶湖まで肉薄した大百足は、龍神よりも一回り大きいのではと思わせる威容を誇っていた。


 そして……


「この小娘がああああ!! おれに歯向かってただで済むと思っているのか!!」



 轟!!



 叫ぶ度に言葉が灼熱となって駆け抜ける。


 ひゅうひゅうと呼吸をする度にもちろちろと炎が噴き出し、強力な火気ひのきを宿していることは一目瞭然であった。


 しかしその言葉は白星の耳の右から左へと抜けて行った。何故なら、


「かか。なんと幸先のよい。ぬしもわしの首を宿しよるか」


 大百足の中に、己の分け身を見出した喜びに打ち震えていたからであった。


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