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逢魔が刻の一ツ星  作者: スズヤ ケイ
七 荒れ狂うもの
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八十六 衝突するもの

 龍神の咆哮に合わせ、黒雲のあちこちから雷撃が迸る。


 しかし白星は事前に白氷の吐息で幾つもの槍を生み出し周囲に展開しており、避雷針と成していた。


 そうして雷撃をかわしつつ、竹生姫とすれ違い様、氷の槍を突き刺してゆく。


 くあああああああ!!


 苦悶に喘ぐ竹生姫だが、それも一瞬の事、その身に雷の衣をまとって、迫り来る無数の槍を全て蒸発させてしまった。


 これでは近寄るのも困難とあって、白星は距離を取り、作戦を切り替える。


 一気に高度を下げたと思うと、湖面を白鞘でなぞり、大胆な水しぶきをあげ始める。

 そして一定距離を滑空した頃に、大きく白鞘を振り上げた。


 すると跳ね上げられたすさまじい量の湖面の水が巨大な刃となって、竹生姫を両断せんと中空へ舞い上がったではないか。


 こと水に関しては、白星は今や自由自在。

 龍穴から流れ込む力と、伊勢の大亀が宿していた水の首の権能を取り戻した事で成立する大技であった。


 強力な水圧を利用した巨刃が迫ると、竹生姫も脅威に思ってか、まとう雷撃の電力をさらに上げ、蒸発させながら避ける態勢へと入った。


「かか、ぬしは力の振るい甲斐があっていいの。ほれ、次々ゆくぞ。捌いて見せよ」


 白星は湖面を縦横に飛び回り、楽し気に水刃を多数繰り出してゆく。


 竹生姫はといえば、その巨体が徒となり、刃が身にかする場面も増えていた。


 このままでは押し切られると判断してか、大咆哮を上げてさらに巨大な黒雲を生じさせると、湖全体にそれこそ雨霰あめあられの如く紫電を降らせ始めた。

 それはもう寸部の隙間のない有様で、まるで天より極太の光の柱が立っているようだった。


「ふむ。これはたまらん」


 白星と言えば、一瞬で自身の周囲に分厚い氷の壁を作り出して雷避けとしていた。

 一歩遅ければ黒焦げとなっていたであろう。


木気もくき水気すいきでは、いかにも分が悪いの。まずは忌々しい雷の根を断つか」


 すると白星は、雷の範囲から逃れるように全速で急上昇を始めた。



 それは竹生姫が回避に移る暇さえ許さぬ早業だった。


 数秒もしない内に黒雲を抜け、竹生姫の頭上を取ると、間を置かずに巨大な氷の剣を作り出し、竹生姫の頭の角をばっさりと斬り落としたのだ。


 突如途切れる雷の雨。


 竹生姫も一瞬何が起きたかわからぬ様子。


 次の瞬間には、その身に帯電していた稲妻さえもが消え失せた。


「かか。龍の雷の元と言わば、その突き出た角と相場が決まっておるでな。これで遠慮なく近付けるというものよ」


 白鞘を構えて迫る白星に、異能を取り上げられた憐れな龍神は、咆哮と共にかぶりつきに行くより他はなし。


 その無謀な特攻の隙を見逃す白星ではない。


 両者が交差した瞬間、しゃん、と軽やかな音が響き、その後すでに音もなく納刀していた白星の脇を、竹生姫が通り過ぎた。


 対峙していた龍神は、慣性のままに緩い曲線を描いて湖面へ落ちてゆく。

 その身を二枚におろされて。


「竹生姫、討ち取ったり。せめて故郷の水底で眠れ」


 強敵に敬意を表し、白星はくるりと一つ舞いを贈った。


 こうして荒ぶる龍神は、白星の音速を超えた居合抜きにて引導を渡され、湖底に沈んだのであった。


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