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逢魔が刻の一ツ星  作者: スズヤ ケイ
七 荒れ狂うもの
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八十五 飛翔するもの

 翌日、宴の後も生々しいままに龍穴へ案内された白星は、早速にも竜宮の地に気脈の根を張り始めた。


 これは、娘を止める為に必要なことであると、鰐淵王の承認、と言うよりも懇願を受ける形で行っているものだ。


 見事に竹生姫を退治した暁には、姫の御霊を要に据え、鰐淵王が祭祀の引継ぎを約束してのことである。


 根を張り終えた白星が、今度は龍穴の気を吸い上げ始めると、周囲の水温がみるみる下がり、ぱきぱきと氷の粒が混ざり出す。

 白星の第一の権能である氷雪が、馴染み深い水の気を受けて活性化したのだ。


 これには鰐淵王以下竜宮の従者達は耐えかね、たまらず白星から離れざるを得ない一幕もあった。


 やがて白星による龍穴の支配が済むと、行き場を失くしていた氷の粒は溶け去り、元の穏やかな竜宮が戻って来た。


「うむ。これなら策に必要な気を十分に練れよう。早速龍退治といくかの」

「どうぞお気を付けて。娘をお頼み申します……」


 複雑な心境であろうに、鰐淵王は焦り一つ見せずに一礼した。

 さすがは一国一城の主と言うべきか。


「任せよ」


 白星は敬意を込めて短く返し、白鞘を床に打ち付けた。


 すると白星の足元へと大量の水が螺旋を描いて集まり出し、その身を水中へ浮かべ始めたではないか。


 そして十分な量が貯まったと見るや、白星は自らを間欠泉の如く噴出する水の力で、高く高く打ち上げた。


 竜宮の天井には、竹生姫が出入するための大穴がある。そこを通り抜け、湖を横切り、ざばりと湖面を割ってもまだ勢いは止まらない。


 見れば、白星の足元には太い激流が水柱となって立ち、白星を乗せて空へと押し上げているのだった。


 これが鰐淵王が提案した策。地上から攻撃できなくば、直接空で対峙すればよいという力技であった。


 対して白星も、須佐の里を発つ際に水柱を操った経験がある。

 それを龍穴の力で増幅した水流を使うのだ、失敗など微塵も考えていなかった。


 あとは実際に竹生姫と戦い、勝利するだけである。


 やがて、雷雨の中でも勢い衰えずに浮上を続ける白星の視界に、雷雲の中で泳ぐ蛇身が映る。


「かか。おろちが龍神を退治するなぞ、滑稽な話よな」


 徐々にはっきりと見え始めた竹生姫を見て、白星は笑みを作る。


 数ヶ月に渡り雷雨を降らせ続け、なお力を損なっていない強力な龍神。

 その力の源はどこから来るのか、と白星は考えていた。


 龍穴と繋がっていたのなら、白星が支配を奪った時点で失墜していただろう。


 しかし現実にはまだまだ精気に満ち満ちている。


 で、あれば答えは一つ。()()()()動力源があるのだ。


 その頃には竹生姫も白星に気付き、標的と定めて軌道を変え始めていた。


 白星は正面から迎え撃つべく上昇を止め、白鞘で竹生姫を指し示した。


「かか。見えたぞ、竹生姫! ぬし、わしの首を宿しておるな!」


 白星の嬉し気な叫びに呼応するように、巨大な龍神が身の毛もよだつ咆哮を上げた。

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