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第09話 没落令嬢は王妃様にお会いする

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第09話 没落令嬢は王妃様にお会いする


 南門から進むとそこはどうやら王家に直接仕える騎士や下級貴族の住宅街であるようでした。


「あの辺に、うちの実家の子爵邸があります。ちっさいけどね」

「「「……」」」


 確かに、それぞれの屋敷は決して大きいとは言えませんわね。進行方向には……『新王宮』の巨大な城館が見えますからなおさらです。


「でも、街並みが整備されていてとっても気持ちのいい街ですぅ」

「ありがとう、これもご先祖様から引き継いだ都市計画のなせる業だよ。この辺は新王宮を建設する時に、一緒に東側の街区から騎士・貴族を移して防衛計画に基づいて再構築されたエリアだからね」


 子爵家の家業は『王都の管理』であり、防衛計画も含めた街区の管理も範囲なのだそうですわ。


「今のスラム化している旧騎士爵街区と王都墓地の区画の再開発が最後の仕事なんだけど、それも計画自体は完成したからね」


 王都の集合墓地の跡地に『中等孤児院』を建設し、更に一般市民向けに職業訓練校を設けるのだそうですわ。


 孤児は無料、一般市民も比較的安い授業料で技術を学ぶことが出来るそうです。その後は、ニース商会と王家が主催する工房で仕事を得ていくということが……計画されています。


「ですが、王都以外でギルドの影響力が強い都市にどのように商品を供給するのですか?」


 商人と職人は互いに取引先を守り合うように共存しています。


「え、そこは『農村』だからね。問題ないよ」

「……どういう意味です?」


 商人系の貴族の子女であるリザが踏み込んで質問します。アイネ曰く、例えば、ギルドに加わらない村落在住の鍛冶屋から都市の商人が金物を仕入れることはあるのだそうですわ。


「質は低いかもしれないけれど、安価で十分役に立つ商品が村の鍛冶屋でも作れる。それを都市で販売するとそれなりに儲かる。ギルドに加盟している鍛冶屋は決まった数しか作れないから商品自体競争できない」

「王都にはその辺りの縛りが特に少ないのですね」

「そうそう。だって、城外の街みたでしょ? あそこで商売している人たちは、王都のギルド関係ないからね。だから、王都の住民も時間があれば買い物に行く人はいるんだよ」


 アイネの計画では、聖リリアル学院の門前市を形成して、そこで中等孤児院で作成した商品を直接販売することも考えているのだという。


「リリアル生の多くは孤児院出身の魔力持ちと言うのは王都では有名だからね。孤児院=リリアルというイメージは結び付きやすいのね」


 あの食堂にいた少年少女のほとんどは孤児でしたのね。とてもそうは思えない……いえ、私たちの知る孤児と言うのはそういう風に周囲にさせられている存在でしかないのですわ。


「孤児でも頑張っている子は多いのですぅ」

「当たり前じゃない。自分しか頼れる者がいないのに、頑張らないわけがないわよね」


 親のいない孤児が努力しているのに、貴族の子女である私が努力しないわけにはまいりません。それに、今日王妃様とお会いする理由も何かあると思われます。リリアルに滞在するだけであれば、わざわざお時間を頂けるとは思いませんもの。




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




 サボアの公爵邸をはじめ、多くの高位貴族の御屋敷をこの度で訪問したのですが、新王宮はその大きさと言い調度の見事さといい、大いに驚きまた緊張する場所でございます。


 数人の近衛騎士・侍女に連れられ四人は緊張の極致でした。


「お、元気にしていたかなカトリナちゃん」

「……む、アイネか。相変わらずの傍若無人さだな。アリーは元気か」

「そうね、元気と言えば元気だけれど、大変そうね」

「ならば、姉として力になってやればよいではないか」

「それもあって、今日のお話なのです!」

「そうか。私も楽しみだ」


 赤みがかった茶色い髪に長身美女の近衛騎士がアイネと並んで話しながら前を進んでいます。彼女はリリアル男爵とも親しいのでしょう、愛称でお呼びしています。高位貴族の子弟かもしれませんわね。


「ああ、後で正式に挨拶するが、ギュイエ公爵令嬢カトリナだ。リリアル男爵とは騎士学校の同期でな。色々世話になった」

「「「「……」」」」


 こ、公爵令嬢ですわ。その美貌と堂々とした振舞いは流石であると感心いたしましたが、どうやら気さくなお人柄のようです。その後も、近況の話をぽつぽつと二人はしながら、やがて王宮の奥にある王妃様の私室に近い応接用の部屋に案内されたようですわ。


「あら~ 今日は随分と若い淑女の皆さんが来て下さったのね~」


 イーナの顔が引き攣る。それは、たぶん私も同じように見えるでしょう。王妃殿下は……想像していた以上に率直な方のようです。


「アイネ様、お久しぶりですわ。今日は楽しみにしておりましたの!!」


 王妃様の隣には、よく似た金髪碧眼の少女が座っております。


「この方達がわたくしの侍女候補ですのね」

「「「「……え……」」」」


 全員の視線がアイネの背中に突き刺さります。ええ、まったくもって初耳なのですが!!


「その最初の四人ですわ王女殿下」

「話を急ぐものではありませんわ。先ずはご挨拶から。その前に、お茶の用意をお願いしますわね」


 控えていた侍女の何人かが退出します。もしかすると、あの方たちの後輩となるのでしょうか。伯爵令嬢とは言え、田舎の貧乏貴族。このような場所で殿下方にお仕えするような存在ではございませんのよ。





 悪戯成功とばかりにニヤニヤとするアイネに腹立たしく感じるものの、実際は大いに緊張しております。王国の王家に仕える侍女。それも、王女殿下に……ですが、王女殿下はレンヌ大公子と婚約されたと聞いています。


 私たちは一通り挨拶を済ませると、今日の本題とばかりにアイネが話を始めます。


「『魔装侍女』ですか」

「……なんだかとても強そうですわぁ……」


 背後で近衛騎士であるはずのカトリナ様が「それはいいな」「盲点だ」「よく考えたらカミラがそうだな」等と呟いております。同僚の近衛騎士の女性から「カトリナ様……お声が」と窘められておりますわ。


「リリアルの騎士の皆さんがいてくれれば心強いですが、レンヌ公国からすれば王家の騎士が我が物顔をするのは大公家が許しても、感情として面白くない者が現れるかもしれませんわね」

「侍女でしたら、常に傍にいていただけるのですから、安心ですわね。それに、皆さま貴族の娘であるのでしょう? 社交や会話も楽しみですわ」


 王国の姫君が喜ばれるような会話は……自信がございません。伯爵家とは言え、身代は男爵家並。騎士も数えるほどしかおらず、正直、リリアル男爵の足元にも及びません。


「王都近郊の貴族の子女では実家との力関係で寝返られる可能性もあると思い、サボア公国のトレノ近郊の子女を募りましたのです」

「そうですか。確かに、連合王国から実家経由で何か示唆された場合、断れない方もいるでしょう。サボア公国出身ならば、安全ですわね」


 ほほほ、と王妃殿下が笑うのだが……目が笑っておりませんわ。確か、王女殿下が舟遊びの最中に連合王国の海賊船に襲撃され、それを僅か二人で返り討ちにしたことで……リリアル男爵になられたのですわね。昔、お芝居で拝見した記憶がございます。


『妖精騎士』の物語は、書物でもお芝居でもとても人気があります。未だに様々な題材で続編が作成されておりますわ。最近では竜討伐のお話が人気であると聞いております。私には見に行くことはできませんので、内容は人づてに聞いただけです。


「フィリア殿下の身は、近衛騎士である私が、命に代えてもお守りする」

「それはだめでしょカトリナちゃん。あなたが殺されても大問題じゃない」

「むぅ、だがそれが役割でもあるではないか」


 比較的安全であり、王家とギュイエ公爵家のあいだに不和がない事を示す為の近衛配属でしょう。子爵・男爵の娘と、大公家の娘である『殿下』と呼ばれるカトリナ様では意味が違いますわ。


「……まあ、それはそうだな……」

「修道女も世俗から切り離された死人のようなものですから」

「でも、まだ死んでいないのですぅ」


 それはそうですわね。その確率を下げるための『魔装侍女』なのでしょう。気配を消し、周囲の安全を確保し、万が一の際は魔術とその装備で王女殿下をお守りするという役割。騎士達の壁の内側、最後の砦ですわね。


「それに、王女殿下用の新装備もご用意しております」

「まあぁ!! それは是非身に着けてみたいですわね」

「……着替えてらっしゃい」


 どうやら魔装手袋とビスチェタイプの胴衣はお持ちのようですが、コルセットとファルシングエールは最新装備のようです。


 暫くして戻って来た王女殿下は、今までよりも窮屈そうにされておりすわね。


「魔力を流してみてください殿下」


 暫く四苦八苦しているようでしたが……


「スカート回りが軽くなりましたわ。ドレスがとても軽く感じます!」

「魔力を纏わせて軽くするのは魔装馬車の応用です。それと、その方がスカートの裾をつままずに走れますから、楽です」

「……む、それは私にも是非譲ってほしいなアイネ」

「あらー 最近肩こりが辛いのよ~ 私の分も用意してもらえているのかしら~」


 王妃様の分は既に一緒に持ち込まれているそうですが、カトリナ様の分が交渉の余地ありとアイネに跳ねのけられておりましたわね。


「アリーに頼むとしよう」

「あー もう、妹ちゃんに迷惑掛かるからやめてよね。まあ、ちょっとお高くなるけれど、有償で供与してあげるわ」


 王家に献上するのは問題ないのでしょうが、ギュイエ公爵家には販売するということですわね。



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