特別授業開始……!!
「いつもこんな感じで?」
実戦訓練用の部屋へ移動する最中、私は他の生徒に色々と聞いてみた。
「うん。ノノ先生の機嫌が良いとこんな感じ。いつもノノ先生にボコボコにされて、授業が終わると全て元通りに戻ってるの」
血塗られた木刀を担ぐエリカはどことなく嬉しそうな顔をしている。戦闘民族かしら?
「ま、お嬢様は最初は後で見てなすって。俺の雄姿……見せてやるよ」
イケメン君がニカッと笑い大きな剣をブンブンと振り回した。華奢な体に拘わらず力があるみたい。
「…………」
金髪の大人びた女の子は緊張しているのか小さなメイスを強く握り締めたまま少し顔が強張ってる。
「痛いのヤダ~♡」
オカマは小指を咥えながらクネクネと腰を左右に振っている。うん、無視しておこう。
突き当たりの部屋の壁には『使用中の扉の開閉は死が伴いますので絶対にしない事!』と書かれていた。
「部屋の中で死んでも復活するけど、扉の外で死んだら終わりだから気を付けてね♪」
エリカが笑顔でとんでもない事を口走りながら部屋へと入っていく。
「大丈夫でございます。お嬢様を御死にになられましてもじいやが何とか致しますので……」
じいやが笑顔で更にとんでもない事を口走った。じいやはネクロマンサーか何かなのかしら!?
部屋の中は至る所に戦闘による物と思しき傷跡や汚れが目立っており、部屋の中央には大きな魔方陣がデカデカと怪しい蒼色と共に鈍い輝きを放っていた。
「皆揃いましたか~~? それじゃあ始めますよ~~?」
後から来たノノ先生は可愛らしいフリルのドレスを着ており、手にはどう見ても人を滅するのに最適なマシンガンが握られていた。腰には手榴弾が沢山ぶら下がっており、シャワちゃんが映画の中でしか持ってなさそうな代物に、私は思わず息を飲んだ。
「ルルルゥちゃんは最初は見ていてね~。何となく雰囲気を察したら混ざるからね~♪」
生徒たちが思い思いの得物を手に構え始める。
「それじゃあ授業開始ね~~…………シネェェェェ!!!!」
ノノ先生の顔付きが恐ろしく変貌し手にしていたマシンガンを生徒たちに向けて乱射した!!
―――バババババババ!!
薬莢がカラカラと地面に落ちる。生徒たちは魔法によるシールドや得物で弾丸の雨を凌いでいる。
「!?」
現代では最強の威力を誇るマシンガンを受け止める生徒たちに、私はやはり紛れもなく異世界に来たのだと今更ながら目の当たりにした……!
「じいや! 凄いわよ!!」
「左様で御座いますねぇ。じいも早く闘いたくてうずうずしております♪」
じいやはソワソワした面持ちで出番を今か今かと待っている。どうやら異世界の住人はもれなく戦闘民族の様で……。
巧みな木刀捌きで弾丸を弾くエリカが、ノノ先生に向かって跳びかかった!
「木刀魔法! 兜割りーー!!」
木刀を振りかざし、勢い良くノノ先生の頭目掛けて振り下ろすエリカ。
(……あれって魔法なのかしら?)
しかしその木刀はノノ先生を捉えることは出来ず、ノノ先生は素早く身を躱し手榴弾を……手にした!
「イケメン魔法! ウインク!!」
イケメン君がパチッとウインクをすると、ノノ先生の手から弾かれるように手榴弾が零れ落ちた。
(……ま、魔法なのよね?)
「ヒロイン魔法! 変身!!」
金髪の子が小さなメイスを振りかざすと、時が止まった様にノノ先生の動きがピタリと止まってしまった……!!
そして彼女は何故かキラキラと謎の輝きを放ちながら魔法少女の様なものに変身をしている。
「変身中は待たねばなりません。それがルール」
じいやが感心した様に腕を組み頷いている。ノノ先生、止まってるんじゃなくて『待ってる』の!?
「オカマ法!! 鉄拳制裁!!!!」
最後にオカマが止まったノノ先生の顔目掛けて、筋肉モリモリの体で思い切り正拳突きを放った!!
(あ、うん。こいつのは絶対に魔法じゃないわ……)
―――ボゴォ!!
吹き飛ばされたノノ先生はきりもみ回転をした後に煙となって消えた。
「こっちだボケェ!!」
―――バババババババ!!
生徒たちの後ろからノノ先生が現れマシンガンを乱射する! 突然の反撃にイケメン君が土手っ腹に銃弾を受け倒れた。
「ああ!!」
思わず声を出してしまった私に、ノノ先生は無言の笑顔で手招きをした。地獄の底みたいな笑顔で手招きされても……困りますわ。
「お嬢様……行きましょう」
待てなくなったじいやが早く一緒に遊びたい子どもの様な顔で私を見ている。
「でも、何をすれば……私戦闘なんて出来ないわよ?」
「じいに命じて頂ければそれでオーケーでございます」
「……それじゃあ、先生に向かってファイヤーボールよ!!」
「かしこまりました♪」
じいやは両腕を広げて円を描き始めた。そして良く分からない構えの後に両手を突き出し、とんでもない熱量の炎を先生に向かって浴びせた!!
―――ゴゴゴゴゴォォォ……!!
ノノ先生は受け止めようと魔方陣を目の前に描いた。そしてノノ先生を巨大な炎が包み込む!!
「ルルルゥちゃんやるぅ!」
イケメン君が大きく叫ぶ。やったのはじいやだ。
炎が止まりノノ先生を取り囲む黒炎が晴れると、そこには何も無くノノ先生が居た場所には僅かな焼け跡が残るだけだった。
「……じいや?」
じいやは姿勢を正して私の方を向いた。そしていつもの真面目な顔付きで口を開く。
「やりすぎました……」
……どうやらノノ先生を殺してしまったようだ。殺ったのはじいやだ。
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