魔道大会 ②
その日、私は懐かしい夢を見た。
奇妙な仮面を付けた道化の周りに子ども達が群がり、道化が繰り広げる魔法ショーに目を輝かせている。
純粋な眼。
純粋な好奇心。
しかしそれは、所詮子供だましだった……
月日が流れグレイト魔道校に通うようになり、同じく目を輝かせていた童達は私を見下すような冷ややかな眼へと変わっていた。
何がそうさせるのか。
私は……………………
「―――朝か……」
ぐちゃぐちゃの寝癖をかき分け欠伸を噛み殺す。元々髪質が良い方ではないが、これでは魔道大会に出場するにはあまりにも申し訳ない。
「おはようございます」
じいやが隣で柔やかな顔で立っている。
「朝食の用意が出来ております」
廊下から運ばれてくる色鮮やかなサラダと焼きたてのパン。とても良い香りが部屋へと漂い私の腹の虫が本格的に覚醒する。
──グゥゥ……
「…………」
「私は何も聞いておりませぬぞ?」
「何も言わんでくれ……恥ずかしい」
じいやがサラダを取り分けている間、私はパンを齧る。香ばしい香りと柔らかいバターの味が朝によく合う。
「ジュースもありますぞ?」
「ありがとう」
注がれたリンゴジュースを素直に受け取り、私は充実した朝食を頂いた。
「食後にデザートは如何でしょう?」
「……些か豪勢過ぎやしないかな? 本当にココの朝食かい?」
私は疑いの眼差しをじいやへと向けた。よく見れば朝食達から微々たる魔法のオーラを感じ取れる。
「私が魔法で出しました」
じいやがニコリと笑い、私はその笑顔に朝食の出所なんかどうでも良くなった。
──コンコン
「はい」
──ガチャ
「朝食をお持ちしました」
宿の従業員が薄いパン(しかも生)を二枚皿へ入れ此方へと向ける。流石安いだけあって朝食も凄い質素だ……。
「―――ってお客様既にお召し上がりの様で……?」
「そういう訳だ。それは貴方に差し上げます」
従業員はパンを齧り部屋を後にした。
「さて、そろそろお時間です」
「ああ……行くとしようか」
私は緊張した掌を見つめ握り拳を一つ作る。大会で死ぬような事は流石に無いが、もしかしたら大怪我位はするかもしれない。私はじいやの顔を軽く見つめ、部屋を後にした。




