ま、魔法ぅぅ!?
―――コンコンコン
「お嬢様、お食事にございます」
ヨダレ全開で寝ていた私は慌ててベッドから飛び起きる。それと同時にじいやがテコテコと手ぶらで部屋へと入ってきた。
「……?」
「お嬢様、本日は何をお召し上がりになりますか?」
白い歯を見せながら私へ問い掛けるじいや。私の腹の虫は最大音量で鳴いており、ガッツリと肉を食べたい気分だった。
「肉ね。肉の塊を頂戴な!」
「かしこまりました」
―――パチンッ
じいやが指を鳴らすと白い煙と共に熱々のステーキが目の前に現れた!
「えっ! 何これ、どうやったの!?」
「手品……もとい『魔法』でございます」
私は肉の焼ける良い匂いと確かに感じる鉄板の熱で、それが確かに存在するのを感じていた。
「魔法って……あの魔法?」
「左様で御座います」
私はナイフとフォークで肉を荒々しく分解し、ポイポイと口の中へと放り込んでいった。うん、旨い!
「この世界では魔法が当たり前に使えるもんなの?」
「いえ、極々一部の限られた者のみで御座います。資質、素質、気質、体質、性質の5つを兼ね備えた者のみが使えるのであります」
……何だか難しそうな話。
「私には無理かな」
「いえいえ、そんな事は御座いませんお嬢様。簡単な魔法でしたらすぐに使えるようになりますぞ。それに世界の各地には魔法学校も御座います。学べば高位の魔法もちょちょいのちょいですぞ!」
じいやが嬉々として語る中には魔法の面白さがあっての事なのだろう。……私は最後の一口を頬張りながら少し考えた。
「じいや」
「はい?」
「醜男をイケメンにする魔法ってあるかな?」
「勿論御座います。魔法は万能ですから」
「私が元に居た世界に戻ることも出来るかな?」
「……かなり難しいと思いますが恐らくは……」
じいやが言葉を濁らす。相当難しいのだろう……。しかし、折角新しい世界に来たのだから、試してみるのも悪くは無い。
「決めたわ」
「行きますか?」
「ええ! 魔法学校とやらに行くわよ!」
私は高らかに拳を振り上げた!
「あ、でもその前におかわり」
「はい♪」




