君と殺し合う運動会……ですわ! ⑤
「じいや……」
「お嬢様どうなさるおつもりで?」
私の顔を見たヒゲじいやが問い掛けた。あの盾や障壁を正面から突破するのはかなり難しそうだ。ならば何か手を打たねばならない。
「多分だけど、あの盾や障壁は手をかざしてないと発動出来ないんだと思う。校長がずっと前や横に手を伸ばしてるから……」
「……確かに」
「そして同時に操作できるのは二つまで。腕が増えたら知らないけど……」
「と、言いますと……?」
私はニッコリとじいやに笑った。正直突破できる気はしないがやれることは少ない。
「両手で攻められたら防ぎきれない。かといって両手で防がれたら攻めようが無い。……だから一つは受ける。そして開いた箇所から攻めるしかない」
「しかし今のリース殿は守りながら攻められる攻守自在な状態ですぞ?」
凄まじい勢いで回転しつつこちらへ向かってくるボール状の障壁をギリギリで躱し、私は地面へ手を添えた。
「先ずは地面を壊すのよ!」
「かしこまりました」
──ボゴッ!
手を添えた目の前から一瞬にて巨木が生え、地面は捲れ上がるように凸凹になった。
──ボゴッ! ボゴッ!
離れた箇所へも幾つか巨木を生やし、地面を転がれなくなったリース校長は停止した。
「じいや!ペイント弾!!」
「かしこまり♪」
リース校長へ向けた掌から色鉛筆が無数に発射され障壁に着弾する! 弾けた色鉛筆から染料が溶け出し瞬く間に障壁はパステルカラーに包まれた。
「小賢しいわね!」
リース校長がパステルカラーで見えなくなったが、向こうからも見ることは出来ない。つまりリース校長が攻撃を仕掛けるには一度障壁を解くしかない!
「じいや、先に痛くならない様に出来ないの?」
「えー……出来ない事はありませんが、ダメージが測れなくなるので止めた方が賢明でございます」
「……流石に私も無痛のまま死にたくはないわね」
「お察しします……」
勢い良く走り出しボール状の障壁をじいやハンドで押し出す!
「な、なんだ!?」
中から慌てるリース校長の声。そして暖簾に腕押しの如くじいやハンドが空振りした刹那、解けた障壁の中からリース校長が現れた!
「この至近距離なら『球』で防ぐことは出来ないんじゃなくて!?」
「ふん! 盾一つで十分だわ!!」
じいやハンドが鈍器を握り盛大に振り下ろす!!
「―――楯魔法!!」
上部を護るピンク色の可愛い盾がじいやハンドの鈍器を弾き返した!
───ズバッ……
そして私に向けられた校長の掌から放たれた丸い小さな盾は、私の脇腹を思い切り突き破り遙か彼方へと消えていった……。
「グアァ……!! めたくそ痛い……けどっ!!」
私は掌を伸ばし最大火力で爆発魔法を解き放つ!!
「もう盾は無い! これで終わりよ!!!!」
「甘いわね! 盾は後からでもサイズ変更が利くわ!!」
爆発魔法の発動寸前に上部の盾が大きくなりリース校長を覆いだした―――
「魔法少女魔法―――変身!!!!」
何処からともなく聞き覚えのある声がした。リース校長は苦悶の顔をし動きを止める。盾も止まり私の爆発魔法が発動する―――!!
──ドドォォォォン!!
「キャァァ―――!!」
弾き飛ぶリース校長。爆発をモロに受け地面へと倒れ込む。私は直ぐに脇腹を押さえるも出血が凄まじい。リース校長が先にリタイヤしないとコッチの身が持ちそうにない。
「お嬢様、治癒まで30秒掛かります。しばしお待ちを……」
「ダメ……後10秒で意識を失いそう……」
私は時間終了のファンファーレと同時に意識を失った―――




