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じいや

じいやの正体が明らかに―――!?

 意識を失ったルルルゥを魔法で持ち上げ、高らかに指を鳴らすとルルルゥの姿は霧の如く霧散した。


「……!?」


 消えたルルルゥを見てクラスの生徒たちが少し響めく。


「消したのか?」


「ええ、お嬢様には安全な場所へと移って頂きました」


 彼を睨みつけるかの様に、蘭は鋭い眼光を飛ばす。


「……七公三民」


「え?」

「何か言いましたか蘭様?」


 蘭の一言に生徒達の視線が一度蘭へと集まる。彼はニヤリと微笑むが微動だにしない。


「中級クラスの授業でやったろう? このじーさんは消えた【七公三民】の一人だ……今の空間魔法を見て確信したよ」


「し! 七公三民!?」

「はぁ!?」

「……え!?」


 度肝を抜かれた生徒達。蘭以外の生徒達は次々と戦意を失い、彼から距離を取っていく……。




 かつて、この世界に存在する七大属性を代表する実力者を【七公】と呼び、七公に匹敵する無所属の民間出の選ばれし実力者三人を【三民】と呼んだ。彼等は協力し合い魔法による世界平和を目指し、日々研究に余念が無かった。


 特に彼等が目指したのは【時間魔法】と【空間魔法】の確立であり、時間と空間を自由自在に行き来出来れば、世界平和は容易いと考えたのだ。しかしそれはあまりにも安直で、そして困難を極めた…………。


 七公は研究所代わりの魔法学校を各地に設立し、研究と次世代の育成を兼ね魔法を広く学ばせた。それでも時間と空間を操る魔法は誰も会得する事が出来ず、彼等は半ば諦めかけていた。


 ある日―――それは突然訪れた。三民の一人であるシツージ・ジーヤ・メシツカーイが偶然にも空間魔法の領域に足を踏み入れる事に成功したのだ。彼は偶然の産物とは言え大変喜んだ。しかし……同時にあることに気付いた。


(これは、人の手に負える物では無い……!!)


 目の前で消えたまま戻ることの無い机の半分を眺め、彼は深くため息をついた。一歩間違えば世界が消える。この力は手にしてはいけない力だと瞬時に悟ったのだ!


 彼は迷った。空間魔法の会得を公表すべきかどうかを。しかし、それはすぐに七公の知るところとなった。何故ならば、七公は民間出の三民を信用しておらず、身近な世話人として【(くさ)】と呼ばれるスパイを送り込んでいたのだ!!


 七公の行いに世界の終わりを見た彼は、憶えたての空間魔法でその姿を消し、そして自らの記憶を魔法で消し去ったのだ―――





 じいやは遠い昔の記憶に哀愁を漂わせ、少しだけ眉を潜めた。


「歴史上では実験時の事故としてその姿が消えたままとなっているが、今こうして彼が私達の目の前に居る……! 私達は消えた歴史の一ページを目の当たりにしているんだ! これ程に面白恐ろしい事は無いだろう!?」


 蘭は両手の五指を百合の花へと変化させ、彼へと素早く向けた!


「咲き誇れリリウム―――!!」


  ―――ドドドドドッッッ!!


 百合の花から放たれし魔弾が彼を容赦無く襲う! 逃げ場も無いほどに放たれた弾幕は、受けるかいなすか死ぬか殺すしか彼に選択肢を与えなかった!


「良い魔法だ……それだけに貴女を始末しなければならない事が実に惜しい!!!!」


 彼は右手で顔を押さえ苦悶の表情を浮かべた。しかし、その実彼の手の隙間から見えた口角は……上がりきっていた。

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