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明惠公主  作者: 英
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第一章(4)





「ははうえ、あねうえ!」



 拙い声が耳に届く。見れば、裏庭から光陽君(クァンヤングン)が頼りない足取りで走ってくる。


光陽君(クァンヤングン)


 ついこの間、歩くようになったかと思えば、こんどは元気な子犬のように庭を走り回っているらしい。子供の成長は早いものだ。


「ははうえ、あねうえとなんのおはなしをしていたのですか?」

「お前の話だ、光陽君(クァンヤングン)


 わたしのはなし?と首を傾げる光陽君(クァンヤングン)に近付き、屈んで視線を合わせる。


光陽君(クァンヤングン)がとても可愛くて仕方がない、と話していたのよ」


 そう言うと、光陽君(クァンヤングン)は嬉しそうに笑う。


「そうだ、あねうえ、ともにあそびませんか?」

光陽君(クァンヤングン)、我儘を言うでない。」


 光陽君(クァンヤングン)が無邪気にソヒョンの手をとると、玲嬪(リャンビン)がそれを叱する。


「いいえ、お気になさらず。もちろん、遊びましょうーーと、言いたいのだけれど、今日は兄上に呼ばれているの。また今度でもよいかしら?」

「はい、もちろんです!」

王女(コンジュ)様、失礼致しました……」


 ソヒョンは、よいのです、と微笑み、光陽君(クァンヤングン)の頭を撫でる。そして、それでは、と頭を下げ、呼びつけられた東宮殿に向かった。





「ーー兄上、お呼びですか……あら、(ミン)従事官(チョンサグァン)、いらっしゃったのですね」


 (ミン)従事官(チョンサグァン)ーー(ミン) 礼俊が立ち上がって一礼する。彼は禁衛宮に所属する従事官(チョンサグァン)である。

 彼の隣には、寧彦大君(ニンノンテグン)も座っていた。


明惠(ミョンヘ)惇慶(トンギョン)堂へは行ったか?」

「はい、先程」

「礼を言う」


「それで、姉上、黒幕の件でーー」

寧彦大君(ニンノンテグン)!」


 慌てて寧彦大君(ニンノンテグン)に目配せをする。この場には、(ミン)従事官(チョンサグァン)がいるのだ。例の件が他に知れてはいけないというのに。


「ああ、伝えていなかったな。実は、例の件の解決に、(ミン)従事官(チョンサグァン)に協力してもらうことにしたのだ」

「……えっ?」


 頓狂な声。隣で、ソヒョンを焦らせた寧彦大君(ニンノンテグン)が、楽しげに笑って言う。


「王族である私達だけでは、思うように行動できないでしょう?」

「ーーたしかに……(ミン)従事官(チョンサグァン)は適任かもしれませんね」


 (ミン) 礼俊。彼の名は、朝鮮最高の剣士として、広く有名なのだ。その力量と優れた判断力で、若くして武科に合格し、今では従事官(チョンサグァン)の地位を与えられているーー最も、彼の従事官(チョンサグァン)という地位は半ば名前だけのもので、実際は、能力を世子(セジャ)に買われ、従事官(チョンサグァン)としての実務ではなく、世子(セジャ)の側近として護衛や密命の執行に当たっている。


「この者は他言するような者ではない故、信頼するとよい。そなたも必要ならば頼るとよい」

「分かりました。(ミン)従事官(チョンサグァン)の人柄は存じております。昔からの仲ですから」

「恐れ入ります」


 (ミン)従事官(チョンサグァン)は、世子(セジャ)の側近として、ソヒョンも長く知り合っている。それだけでなく、幼い頃の学友であったソヒョンの友達の兄でもある故、かれこれ7年以上の長い付き合いなのである。


「それで、兄上。話というのは……」


 ああ、そうだった、と世子(セジャ)の顔が暗くなる。


「話というのは、3日後の陵幸の件だ」


「陵幸……」




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