全ての始まり
どうして!
胸の中に渦巻く自責の念に押しつぶされないように、硬い地面を搔きむしり続ける。指先の爪はとうに剥がれ紫色に膿み始めている。
リン……
初恋の相手の顔を見るため首を上げようとするが、体はそれを拒むように全く言うことを聞かない。やっとの思いで顔を上げると、やはりそこにはリンの死体があった。彼女の胸に刺さった短剣が、現実を無慈悲に突きつけてくる。
「まだ君に好きだって伝えられてなかったのに……」
その嗚咽に近い告白は誰の耳に届くこともなく、冷たく暗い冬の空に吸い込まれる。
「まだ俺を置いてかないでくれよ……教わることはまだたくさんあるんだ……」
今にも消えてしまいそうなリンの骸の存在を確かめるようにリンの手を握る。すると、リンの手の内側から何か握られているような感触を覚えた。とても大切なものだったのだろう、しっかりと握っていて、なかなか取り出すことができない。何とか取り出して確認してみるとそれはメッセージカードだった。忘れもしない、昨晩、クリスマスプレゼントに付けて渡したものだ。そして、
『ありがとう もっと君と過ごしたかったよ』
今にも消え入りそうな文字でそう書き加えられていた。
「なんて馬鹿なんだ僕は、やることなんて初めから決まってたっていうのに!」
この十七文字が胸の中の後悔を吹き飛ばし、ある覚悟を決めさせた。胸の中に溢れ出した決意が満身創痍の身体を突き動かす。
絶対に助ける!
そう心に誓って、自分を叱咤するように叫んだ
「リブート!」
視界に映るすべてのものにヒビが入り、砕け始める。大地が裂け、闇が隙間から顔を覗かせる。やがて裂け目は足元に達し、僕 池上ユウ を飲み込んだ。この瞬間、世界に来てからの1週間が壊れる音を聞いた気がした。