ないものねだり
思い付きで書きました。
だから先があるとは思えないし、あるかもしれない。
そんな感じで、思いつくままに思いついたまま書いた
ちょっとした 思春期を送る ちょっとした風景を書きました。
意味があるようで、ないような意味で書いてみた。
BGMは、才悩人応援歌 でしたぁ~~~
数多の多くの物語は、色々な主人公がいてとても輝いている。
物語は主人公と脇役の二つの選択岐に分かれてしまう。
持つモノと持たざるモノである。
だれもが、持つモノを望むが、そうはいかない。
持つモノは少ないからこそ希少価値があり、憧れである。
では、その反対の存在は…
持たざるモノは、何もできない脇役としてその物語が終わるまで存在する
まぁ脇役がいるからこそ、主人公が輝くことも知っている。
それでも、憧れはあるはずだ。
脇役だって輝きたい。
名前のない脇役でも特別だって思いたい。
だれだって、自分の中の「特別」があると信じたい。
ボクもその一人だ。
特別な能力なんてのは求めないにしても、なにか、特別な何かが
あればなんて、考えてしまう。
現代に生きるボクにファンタジーめいた能力なんて、ありえないし
存在すらしてない。
思い切って、コンビニをでたら異世界なんてのもありえはしない。
すべては物語。
妄想で、空想で、架空のことでしかない。
それでも……それでも、ボクは求めたい。
ボクの中の特別が何かを……
ポッポッポッポ…
ハトが鳴くような、目覚まし時計が今日も朝を告げる。
「ん……」
目が覚めると、何か夢を見ていた気がするが、目覚めと同時に消えていた。
何か焦燥感だけがある感じ。
「太助ぇ~起きてる~?」
階段の下から母さんの声が聞こえる。
「うーん、起きてる、今いくよ~」
いつものように、母さんの声が届き、それに反応して、ベッドから起きて、着替えて、学校のカバンを持って、下に行く。
それがいつものボクの日常だ。
「母さん、おはよう」
「はい、おはよう」
こちらを見ずに、せっせと母さんは朝のごはんの準備をしている。
ボクは、そのままダイニングにあるテーブルに席をつく。
どうやら父さんは、もう仕事に行っているみたいだ。
「おまちどぅ、さぁ食べましょう」
母さんは、おかずを置き、ご飯をよそい、ボクに手渡してくる。
「ありがとう、母さん」
それを受け取り、一旦テーブルにおく。
「「いただきます」」
お互い、手を合わせて食事を始める。
「太助、今日からとうとう、高校生ね」
母さんは、うれしそうに笑顔を見せてくる。
「そうだね、制服が若干大きいけどね」
「すぐ成長するわ。まだまだ育ちざかり、ちゃんとご飯を食べてね」
また笑顔で答えてくれる。
母さんは、高校生の子供を持っているようには見えないくらい若いらしい。
ボクはずっと見てきてるから、そこの感覚がズレてよくわかんないけど、母さんも自分で若いもん なんていってるあたり、若いんだろうなって思ってる。
「うん」
たんぱくに答えて、またごはんをひと口。
「太助も高校生なら、彼女ができるかしらね」
「どうだろうね、あんまり考えていないよ」
ボク自身、そんな恋とか彼女とかはそこまで興味がなかった。
ただただ、過ぎていく日々を暮らしているだけ。
「わかんないわよ~相手から告白されるかもよ?太助意外と可愛い顔してるし、モテるかもよ?」
「男相手にかわいいとか言われてもうれしくなし」
顔がいいとかかわいいとか、自分の顔をそんな風に思わないのに母さんは親ばかだな。
「そぉ?母さんは母さんに似てくれた太助は可愛いけどね」
「それ親としてじゃん、周りはそんな風に思ってないかもしれないじゃないか」
母さんは、笑いながら箸を持つ手を左右に振りながら、チッチッチと口に出して言ってる。
「それがそうでもないわよ、隣の奥さんとか、わたしの友達もいってるし、自信もっていいわよ」
「全部、大人じゃん」
大人と子供の感覚を同じに言われても、ボクは高校生なんだから子どもの意見を言ってほしいよ。
「あははは、そうね、でも女性目線で言えば少しは、自信持ってもいいと思うけどな~」
楽しそうに、おかずに手をつけている。おいしそうに食べてるなぁ。
「そうかなぁ、モテるモテないは別として、恋とかわかんないからなぁ」
「太助の初恋はお母さんだから仕方ない」
「っぶ」
思わず吐き出してしまった
「わっ、きたない、ちょっと太助いきなり吐き出さないでよ」
「っごめん、てか、母さんが変なこと言うからでしょ」
反論しながら、口からでたごはんを手で集めると母さんは、布きんを持ってきてくれて手渡してくれる。
「ふふふ、まぁまぁ、ちいちゃい頃に「将来お母さんと結婚する」って言ってくれたんだから」
「小さい頃になにを言っているんだろう、ボクは」
恥ずかしくて、穴に埋まりたい。
「お父さんは、まさか、息子にライバルになるとはとか言っていたわね うふふ」
「はぁぁ、もう夫婦して何を言ってるんだか」
「案外、年上に恋しちゃったりしてね 先生とかに」
と、テーブルを拭いていると、母さんはおでこを小突いてきた。
なら…
「…母さんに恋するかもね」
少し、悪戯に反論してみる。やられっぱなしは悔しい。
「…っえ」
あれ、まさかの驚き…
「いや、冗談だからね、そんなのあるわけないし、同じ禁忌を犯すなら、先生に恋するから」
「あはは、びっくりした、もぅ、焦るじゃない」
まんざらでもないのかなと思うけど、家族崩壊したくない。
「母さん、冗談だからね、ないから、そんなのないからね」
ジト目で、再度母さんを忠告する。
「あ、当たり前じゃない、そんなのはダメ、父さん一筋なんだから」
困ったように、笑う姿をみて、嘆息をもらしてしまう。
「それじゃ ごちそうさま」
ボクは、そのままテーブルを離れてカバンを持ち、玄関に向かった。
「じゃ、行ってくるよ」
「ええ、素敵な出会いがあるように願ってるわ」
「そうだね、それはいつも願ってるよ」
ボクは玄関を出て、マンションの廊下を歩く。
――特別な何かをいつも、捜して
いつも、そんなものがないと
諦めそうで諦めきれない
そんな毎日を
送っている――