ただの、後輩。
イマドキの高校生、なんだけど。
部活の先輩後輩内では凄く盛り上がってる恋バナを、外から眺めてる。
昔から恋愛事にはうとかった方、誰かと付き合ったことなんてない私には、カレカノ有の皆の話についていけなかった。
時々質問は回ってくる。
「夕胡は?彼氏いないの?」
「ぇええっ、いませんよっ」
「えー、もったいないなあ。じゃあ、亜衣ちゃんは?」
「私は…、遠距離の彼が…」
「ぉおー!」
──で。
いつの間にか傍観者。
最近はもう諦めて、今日の大会の休み時間も輪から一歩離れた所で耳を傾けてた。
そう。
いつもと、同じ。
「ちょっと避難ー」
「え?」
驚く私の目線の先には、三年の男子の先輩が座っていた。
うちの部活の男子は一年と三年の二人だけしかいない。
その内の一人の、私の唯一の男子の先輩が、原中卓也先輩だった。
「田坂君が捕まちゃってさ」
もう一人の男子を探すと、さっきまで恋バナをしてた10人位の女子に囲まれてた。
何だか順応してる。田坂君も彼女持ちみたい。
「俺、昔からああいうのついていけなくてさ。なのによく彼女持ち疑惑かけられちゃうから、逃げてきた」
「えへへ。私もです」
仲間を見つけた気分で、ちょっと嬉しい。
「なんなのかな、昔から女の子と話すことほとんどなかったからなあ」
「私も。皆さん青春してるなー、て、見てました」
「あはは、俺らジジくさいのかもねえ」
「ええー!?でもそうかも…」
「いや、やっぱり洗脳されちゃいけんと思う!俺ら位がちょうどいいんだよ!…と思いたい」
「そ、そうですよねぇ」
他愛ない会話。
30分位ずっと二人で話してた。
恋愛の事。
テストの事。
好きな漫画の事。
今度本を貸してくれる事。
30分なんて、すぐだった。
しばらくすると、「もうそろそろ結果発表だよ!」と部長が叫び、皆少しずつ動き出した。
「はあー」
「なあに?」
「その、やっぱり高校生なんだから彼氏位いなきゃ変なのかな、と…」
「ええ?んー、別にいいと思うよ?」
私は先輩を振り仰ぐ。
「そういうのって自然に見つけられるものだと思うし、焦ることないよ」
「でもやっぱり、話についていけないからなあ」
「大丈夫、俺もいるじゃん。今のまま変わらないでいてよ?」
「でもでも、先輩引退したら私、一人じゃないですか…」
「心配せんでいいって。俺引退してもちょくちょく遊びにくるし、そん時は」
先輩が、にこ、と笑う。
「守るから」
別に、特別な感情なんてないって、知ってる。
先輩は誰にだってこれでもかって位優しいし、私を妹みたいな感覚で扱ってるのも重々分かってる。
分かってた、はず。
私に向けて発せられた言葉は、私の胸に大きくて深すぎる傷を遺した。
その傷は、じわじわ私を苦しめる。
痛くて。
辛くて。
どうせ「妹」なら、
「他人」の方が、良かった。
まだまだ、彼氏は未定。
先輩と、そのままって約束したんだから。
遊びに、来て、くださいね?