異世界で幼女に成り代わってしまった私を拾ったのはロリコンだった
※若干、性的な(下品な)会話と暴力的な表現がございます。
朝起きたら幼女だった私の気持ち、誰かわかるだろうか。
痩せ細った、ろくに動かない身体。
確かにダイエットしたいとは思ってたけど、これは違う。
見知らぬ場所で、食べるものもなくて、死に掛けて、思い出した。
ワタシハ、モウ、シンデイル。
トラックに轢かれたあの一瞬を思い出して茫然自失の状態で道端に横たわっていた私は、その少し後に拾われた──。
「ディア、そろそろいいだろう? お前を私のモノにしようと思う」
私を拾ったヒト。名前はアルフリング様。
前々から、束縛が激しいとは思っていた。
孤児だったことになっていた私を拾って、『ディア』という名前を付けて育ててくれた、竜騎士だったのに、私と一緒にいる時間が少なくなるからと竜騎士を辞めて、山奥の、竜が住み処にしているような洞窟に引っ越して買い物に行くときも必ず竜を置いていくようなヒト。
拾われて五年、身体の成長具合から見て歳は十二歳くらいだろうか。最近、彼の視線が怪しくなってきたような気はしていた。
「アルフリング様! これは犯罪です!」
だけどまさか──欲情されていたとは。
「犯罪? それは人間同士でのみ適用される制度だろう。今は竜だ。関係ない」
「無理です!」
竜騎士というのは、自身も竜体になれる竜族のことなのだと初めて知った。
竜体になったアルフリング様は、私の三、四倍は大きく、まるで薄氷のような鱗をしている。
涼しげな見た目とは裏腹に、その瞳は捕食者のようにギラギラとしていた。
そんなアルフリング様に押し倒されたというか、のし掛かられる寸前というか、爪が私の身体を地面に縫い止めていて逃げられない。
ねっとりと首筋を舐め上げた舌に身体が跳ねた。
本物の少女じゃない私は、この後にナニをされるか予想がついてしまって……。
「くくっ大丈夫だ。お前はただ私に身を任せればいい」
嫌な予感がした。
こいつ、この体格差のままヤるつもりだ……っ。
必死に辺りを見回して、入り口に佇んでいたアルフリング様の竜であるリルメル君を見つけた。
もしかしたら助けてくれるんじゃないか、そんな願いを込めて見つめる。
『兄上、ちょっといいですか?』
リルメル君は私とアルフリング様を見比べてゆっくりと口を開いて──兄上!?リルメル君はアルフリング様の弟だったの!?
って今はそんなことは些細なことでしかない。
「……なんだ」
リルメル君の念話に、不機嫌そうにアルフリング様が答える。
『竜体でつがうのはやめたほうがいいですよ。ただでさえ彼女はロリ……いえ、未成熟な身体をしているんですから。僕がお手本を見せましょうか?』
いぃいいいやぁああ!?
今まで、リルメル君を純真な竜だと思い込んでいた私のハートが粉々になった。
あれ、だって一緒に水浴びした……よね。
一瞬、抵抗を忘れた。
「いらん。今から人間に戻る」
『そうですか』
「そうですか、じゃないです! 人間の時だってものすごくおっきいでしょう!」
私に比べたら背が!
うん、間違ってもアレのことじゃない。アレの大きさなんて知らないから。
「もちろん、小さくはないと思うが……思っていたよりも乗り気だな。安心したぞ。期待には答えなければな?」
アルフリング様はクックッと笑いながら、人間の姿に戻った。
絶対に勘違いされた!っていうか全裸だし!
『兄上だけじゃ心配だな。僕も参加していいですか』
「そういう意味じゃなくて……って参加!?」
リルメル君の姿が変わっていく。
瞬きするくらいの間に、リルメル君は人間になっていた。
天使のような美少年……全裸の。
「ん、んーんーあー。久し振りに喋ると不思議な気分になりますね」
「前くらい隠せ」
「何故です? 兄上だって全裸じゃないですか。それにどうせこれから使うんですから」
もうやだこの人(竜?)たち。
拾われた恩も、育ててもらったり守ってもらった借りはあるけど……。
「こういうことは、好きな人としか出来ません」
「大丈夫だ。私はお前を愛している」
「大丈夫です。僕は人の体になっても竜の扱いで構いませんから」
ちょ、アルフリング様はともかくリルメル君のは理由になってない。
照れるよりも先にビックリした。
「そういう意味じゃ、ない、です!」
バタバタと暴れる。
──ガスッ。
「く、うぐぁっ」
不意に、私の足が、アルフリング様の股間にクリティカルヒットしてしまった。ダイレクトアタックだ。
それなのに、アルフリング様は私を離さない。
「ご、ごめんなさ……っ」
さすがに、自業自得とはいえ急所に蹴りはまずい気がした。
しかも、服がない状態でだからダメージは計り知れない。
どうしようかと視線をさまよわせていると、リルメル君が大きな溜め息を吐いた。
「兄上……ニヤニヤしないでください。ドン引きしますよ」
……ニヤニヤ?
そんなはずはないと思いつつ、アルフリング様の顔を見る。
「……、は?」
「ディア、お前がそれほどまでに私を愛していたとは。気付かなくてすまなかった」
そのニヤニヤっぷりは、ついに頭がおかしくなったのかと思ってしまうくらいだった。
「はぁああぁ……興醒めです。僕は、ちょっと遠くまで出掛けてきますから、どうぞ蜜月でも楽しんでください、兄上──と、義姉上」
またしても一瞬にして姿を変えたリルメル君は、返事も聞かずに飛び立った。
あねうえ、と縁起でもない言葉を残して。
「私も愛している、ディア。同じ気持ちでないのならいっそのこと強引に奪ってしまおうと考えていたが、両想いならば何の遠慮もいらないな?」
私は、目の前が真っ暗になるのを感じた。
否、ニヤニヤ顔のアルフリング様が再び私に覆い被さっている。
「あ、アルフリング様?」
……そして私は、アルフリング様に美味しく食べられた(性的な意味で)。
「子供は何人欲しい? ああ、半竜族は数が少ないが差別するような者はいない。安心していい」
「ぎゃー!?」
そんな私は後に、竜族では雌が雄の股間にダイレクトアタックをするのが最上級の求愛行為だと知るのだった。