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四畳半のバグ  作者: マツダ
4/8

第Ⅳ畳

バグとは?

突然頭に声が響く。


「聞こえるか?恒一よ」


部屋には僕とバスターしかいない。

誰が喋りかけているかわからない。


また声が響く


「私だ。下を見ろ」


僕は下を見た。

そこにはバスターが座っていた。

僕はありえない事を考えた、バスターが語り掛けていると。

そんなわけないのに。そうとしか思えない。


声が響く


「恒一が考えている通りだ。そうだ私だ」


嘘だろ


犬はテレパシーが使えるはずがない。

少なくとも僕が知っている生き物でテレパシーを使うものはいない。


「バスター、お前なのか?」


そう問うとバスターは

「ワン」

と静かに鳴いた。


最近の僕は疲れているのか?

ありえない事を体験して、ありえない光景を見てきた。


そうだ


仕事をやりすぎたんだ


声がまた響く

「違う。これは現実だ。いや、現実と呼んでいいのかわからない」


「なんでだ?」


「この世界はシュミレーションで君は"バグ"だ。君が見た"それ"は君たちをシュミレーションしている"プレイヤー"だ。そして私たちはバグやウイルスを排除するプログラムだ。」


衝撃だ

開いた口がふさがらない、でもなぜか信じてしまう。


続けて

「君を私は"プレイヤー"に"バグ"として報告しなければならない。だが、なぜか私はそれをしたくない。私自身もバグってしまったのかもしれない。」


「報告しないだって?」


声が喉に引っかかる。

理解ができていないのに、言葉だけが先に出た。


「本来ならすで報告している。」


バスターは畳に伏せたまま、こちらを見上げている。

口は動いていない、でも確かに声は続いている。


「君は今観測誤差を起こしている。行動が最適化されていない。感情が過剰に保持されている。それは"バグ"だ」


頭が重い

夢の続きみたいだ、でも夢にしては具体的すぎる。


「じゃあお前はなんだ」


「私は修正プログラムだ。正式名称は長い。君が読んでいる"バスター"で構わない」


冗談のような話に急に現実味が帯びる。


「"バグ"を見つけ、隔離し、報告し、排除しなければならない。それが私の役割だ」


「....僕も?」


「本来はそうだ」


一瞬。部屋の電気がチリっと音を立てた。

心臓が跳ねる。


「でも、君を知ってしまった」


「知った?」


「君の過去を見た。疲れていたこと。逃げ場がなかったこと。それでも私を抱き上げたこと」


あの日の光景がかすかに浮かぶ

ペットショップ

小さな体

理由のない衝動


「感情は私たちにはいらない不要なデータだ。だが、削除できなかった。」


「それが....情ってやつか?」


頭が静かになる。


バスターは一度だけ、ゆっくりと尻尾を振った。


「私は今、規定外の行動を取っている」


「つまり?」


「君に協力する。報告はしない。その代わりに...」


畳の上に、文字が浮かぶ。

歪んだ線。

一つ一つに意味があるようだ。


【き み は ま だ し ら な い】


「何を?」


【ぷ れ い や ー は ば ぐ を "け す" だ け じ ゃ な い】


背中に冷たいものが走った。


「文字を覚えてくれ。言葉を共有しよう。時間があまりない」


その瞬間、畳がまた軋んだ。

一本だけ、逆向きに。

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