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四畳半のバグ  作者: マツダ
1/8

第一畳

一人でも多くの人に読んで感動してもらいたい。だからこそ頑張る

「バスター、ただいま」


僕は家にカギをかけ、力が抜ける。


誰かに合わせるのはもう慣れた。

自分を出しすぎると周りから人が消えていく。


そんなことを思いながら、今日も乗り越えた。


この四畳半の部屋に戻ると畳はいつも通りに四枚と半分あった。

あるはずだった。


僕は鉄久恒一。

三十二歳。

会社員。

家族は愛犬バスターだけだ。 


今日も普通の一日を送れた。

少なくともそう思う。


僕は靴を脱ぎ、四畳半の部屋に上がる。


畳はいつも通りなのに胸がざわつく。

なぜか違和感を覚えた。


僕は数える左、右、奥、手前。半畳は部屋の角。


バスターが畳に上がらない。

いつもなら元気よく走り回るのに、今は小さく鼻を鳴らしてその場から動こうとしない。

畳の縁ぎりぎりに前足を置き、見えない何かを警戒するように耳を伏せている。


「どうしたんだよ」


声をかけても、バスターは一度こちらを見ただけで視線を逸らした。

まるで、そこから先に行ってはいけないと知っているみたいだった。


僕は気のせいだと思った。

そう思ったほうがいいと感じた。


しかし畳をよく見てみると畳の目が一本だけ逆を向いている。


今朝まではこんなんじゃなかった。

少なくとも僕の記憶では。


しゃゃがんで指先でなぞってみる。


固く冷たい。

いつもと同じ感覚。

それのなに僕の心がおかしいと言っている。


もう一度強く押してみた。 


「ぐにゃ」

 

まるで泥に指を入れるように指先が沈んだ。 


「....え?」 


床でもなく畳でもない。不思議な感触だった。


慌てて手を抜く。

心臓が早くなるのを感じた。


バスターが低く唸った。

それはまるでサイレンのようだった。


僕は部屋を見渡す。

壁も天井も何一つ変わっていない、四畳半の部屋のままだ。


息を吸うと、空気が重い。

肺の奥まで入ってこない感じがした。


「大丈夫だ」


誰に向けたかわからない言葉が零れ落ちる。


今日も普通の一日だ。そう思わなければいけない。


もう一度指で押してみたが沈まない。

固く冷たい。


....証拠は何もない。


それでも確かに触った。

確かにぐにゃと沈んだ。


バスターはまだ畳には上がらなかった。

僕の足元を避けるように玄関で丸くなっている。


その夜は眠れなかった。


目を閉じると沈み込んでしまうような感覚がした。

天井が少し低くなった気がした。

壁が少し近づいている気がした。


四畳半の部屋は静かだった。

静かすぎた。


今日も普通の一日を送れた。そう思いたい。この違和感がただの気のせいであること祈るばかりだ

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