表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

なかなおり

 思いっきり泣いたら、なんだか気持ちがすっきりした。


 父はきいちゃんの足を風呂場で洗いに行き、母は絨毯の汚れを落とし、私もテーブルの上を片付けた。

 お手本と、新しい半紙が何枚かと、着ていた服に墨が飛んでいたけれど、だんだん大したことじゃない気がしてきた。

 

 ひと段落したら、両親と私はホットレモンとクッキー、きいちゃんは父の足元で猫のおやつを食べた。


 そうしてお腹が落ち着いたところで、もう一度習字に挑戦した。

 父に教えてもらいながらゆっくりと筆を動かしてみるうちに、なんと数枚練習しただけで、今までで一番上手に書けた。


 きいちゃんの足跡のついた失敗作は、母が『今年初めの共同作品ね』と言い、どこからか持ってきた額に入れてリビングに飾った。


「ほら、ごらんなさいな。なかなか味のある書初めじゃない」


 言われてみれば、変な方向に飛んでしまった最後のはねは、きいちゃんの足跡を追いかけているみたいでなかなか面白いように見えた。


「……きいちゃん、さっきはごめんね」


 ちょっと離れたところに座り込んでこっちを見ているきいちゃんに、おずおずと謝ってみると。


「……にぃ」


 きいちゃんは一声小さく鳴いて、トコトコと私の近くまでやってきて、一旦通り過ぎて、また戻って。

 ちょいと。

 しっぽの先だけで私のふくらはぎを突っついた。


「きいちゃん?」


「に!」


 短く鳴いたらいきなり駆け出して、ジャンプジャンプして猫タワーを駆けのぼり、てっぺんのバスケットにおさまって、ぷいっと背を向けた。


「……やっぱり、怒っているのかな。怖かったよね」


「ちがうわよ。照れくさい……とはちょっと違うわね。とにかくきいちゃんは、どうしたらいいのかわからないのよ。今はそっとしておあげなさい」


 母に促され、明日の支度の為にリビングを出て自分の部屋へ戻った。



 翌朝。


 目が覚めたらお布団の中にきいちゃんが潜り込んでいて。

 ぷーぷーと鼻息をたてて熟睡していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ