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あなたに夢中


 毎日毎日。


 きいちゃんは私たちの中心だった。


 チョコレート色の肉球に、由緒正しきリビア山猫を思わせる複雑な顔の模様、つやつやな毛並みのなめらかな背中、ぴんととんがったはたらきものの耳……。

 とにかく何もかもキュートで、ちょっとした仕草一つに私たちは喜びの悲鳴をあげるくらい、きいちゃんに夢中だった。


 気まぐれで、食いしん坊で、好奇心が強くて、両親が『七色の鳴き声』と名付けるくらい、色々な鳴き方をして私たちに気持ちを伝えてくれた。


 おはよう、おきて、おなかすいたよ。

 うんち、でた。すっきりすっきり、きぶんはじょうじょう。

 おみず、ジャージャー(水道の蛇口)からのみたい。

 あそんで。

 かまって。

 なでて。

 ちがう、そうじゃない。

 ごきげんななめなの。さわらないで。

 ねえ、もうそろそろおやすみしようよ。ねむいよう。

 おふとんにいれて。

 とりさん、いるよ。

 おそとにでたい。だしてだしてだして!


 リビングの前には小さな庭があって、きいちゃんはいつもそこから外を見て、鳥や虫を近くで見たいとか花の匂いを嗅ぎたいとねだる。


 ただ面白いことに、きいちゃんの中にイエネコの掟のようなものがあるらしく、絶対に家の敷地から外へ出ることはなかった。 

 窓を開けてもらうとするりと出て駆けだしていくけれど、風に髭をそよがせて、おひさまに当たって満足したらきちんと私たちのところへ戻ってくる。


 私たちがきいちゃんを大好きなのと同じくらい、多分きいちゃんも私たちの事が大好きだったのだと思う。


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