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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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87/92

87珊瑚海海戦(敵機動部隊、発見)

1942年7月。 マリアナ諸島の制圧した日本帝国海軍は、サイパンとトラックを拠点に南太平洋の要衝――ラバウルへと進出した。 狙いはただ一つ。MO作戦によるポートモレスビーの完全攻略。


5月の稼働正規空母ゼロという屈辱に立たされた日本だが、加速する技術革新は、戦場の様さえも塗り替えていた。


ラバウルから飛び立つ一式陸攻は、もはや史実のようなワンショット・ライターではない。巡航速度は270ノット(時速500km)を記録。800km離れた目的地までわずか2時間弱。搭乗員の疲労を極限まで抑え、彼らは高度1万メートルの成層圏から、2トンもの爆弾を雨あられと降らせるだろう。


海上からは軽空母飛鷹、隼鷹、そして十六隻もの大隅級強襲揚陸艦。この圧倒的な物量と重厚な航空支援が、ポートモレスビー攻略の勝利を約束している。




8月。日本の潜水艦哨戒網が、敵艦隊の影を捉えた。珊瑚海に侵入するアメリカ軍機動部隊。その数、正規空母3から6隻。


それを迎撃する戦力、正規空母十、軽空母十二、正しくハンマーで、卵を叩き割る作戦。


この再編日本海軍航空艦隊がツラギ攻略にあたっていた第十九戦隊の救援に向かう。


過去の戦績にて圧倒的な数的不利から苦戦、ついには飛龍喪失という事態に陥り、海軍はこれ以上は無いという慎重さでこの戦いに臨んだ。あるのは、二度と、一隻の空母の損害も出さないという慎重さだけだった。


今の日本にとって、空母はもはや貴重な資産ではなく、工場から出荷される工業製品に過ぎない。正規空母改大鳳級出雲が既に進水しており、三か月後には戦線に投入できる。それ処か中型空母雲龍級は既に三隻就役しており、来月から毎月就役する。月一空母となり、軽空母樟くす級に至っては毎週就役する。


正規空母のうち、赤城と加賀はこの戦いの後、練習空母となる。それ程の余裕があるのだ。




「まさか、この私が最新鋭艦を預かる身になるとはな・・・。帝国海軍で最初に空母を喪失させた不名誉な指揮官が、私で本当にいいのだろうか?」


最新鋭空母大鳳の中枢、液晶パネルの光が明滅するCIC(戦闘指揮所)。苦渋に満ちた声を漏らしたのは、山口多聞少将だった。その隣では、かつて共に死線を越えた加来止男艦長が静かに頷く。


「閣下、それを仰るなら、不甲斐なくも敵爆撃機の着弾を許した私も同罪です」


沈鬱な空気が漂いかけたその時、とぼけたような朗らかな声が割って入った。伊藤参謀長だ。


「お二人とも、ご自分を過小評価しすぎではないですか? 飛龍、蒼龍の第二航空戦隊のキルレシオは中型1隻に対して大型6隻ですよ。この戦果で評価しない方がおかしい」


伊藤は肩をすくめ、わざとらしく溜息をついた。


「沈みゆく飛龍からお二人が脱出していないと聞いた時は、本当に肝が冷えましたよ。・・・勝手に若者を残して逝かないでください。残された身にもなってほしいものです」


「・・・すまん、伊藤君。友永との誓約に、引きずられていたのかもしれん」


「すまない・・・」


猛将二人が揃ってうなだれる。そんな奇妙な光景の中、突然の電が飛び込んだ。


「偵察型天山より入電! 『敵空母4、巡洋艦2、駆逐艦多数。位置へレサ56、針路○九○、速力20ノット』」


「――今度こそ、先に、見つけたぞッ!」


山口の瞳に鋭い光が宿る。これまでの海戦、どれほど入念な索敵を重ねても、常に敵に先手を取られ続けてきた。だが、今回は違う。


「待ってください! 第十三独立遊撃艦隊より入電です!」


「・・・13だと? まさか」


「おそらく、そのまさかでしょうな」


山口と加来は思わず顔を見合わせた。首を傾げたのは、事情を知らない伊藤参謀長だ。


「13独立艦隊・・・? そんな部隊ありましたか? お二人はご存知で?」


「・・・伊藤君。しばらくすれば、嫌でもわかる」


「ああ・・・我ら老兵は、もうダメかもしれん・・・」


「一体何を仰っているんですか! それより、攻撃隊編成の準備を!」


慌てて急かす伊藤に対し、山口の顔色はなぜか急速に土気色へと変わっていく。まるで、これから戦う敵艦隊よりも恐ろしい何かを思い出したかのように。


「・・・ところで、第13艦隊に返信しなくていいのですか?」


「いらねぇよ、あのクソッアマぁッ!!」


突如、山口がキレた。日頃の沈着冷静さはどこへやら、その咆哮はCIC全体を震わせるほどだった。


「あの女・・・! 今度会ったら、艦長という責務がどれほど重いか、完膚なきまでに叩き込んでやるッ!」


「・・・教育が必要だ!」


加来艦長までがドスの利いた声で同調する。あまりの変貌ぶりに困惑した伊藤は、山口に代わって「全艦、攻撃隊編成せよ!」と指示を飛ばした。 ふと見れば、帝国海軍を代表する二人の将が、床の一点を見つめてブツブツと何か独り言を呟いている。


「・・・一体、何があったんだ?」


伊藤の疑問を置き去りにしたまま、第13独立遊撃艦隊――朝比奈未来率いる艦隊が、戦域へと進入し始めていた。




「敵機動部隊、本艦の射程圏内に入りました」


報告するオペレーターの声が、最新鋭の電子機器が並ぶCIC(戦闘指揮所)に響く、その中心で、可憐な女性――第13独立遊撃艦隊の若き指揮官、朝比奈 未来みくるが愛らしく微笑んだ。


「ありがとう。それで、山口のおじ様からはお返事いただけたかしら?」


「・・・第三航空艦隊、依然として沈黙。返信、ありません」


「あら嫌だわ。おじ様ったら、まだ拗ねていらっしゃるのね」


CICに、なんとも言えない微妙な沈黙が流れる。たまりかねたように、戦闘班長の古代が身を乗り出した。


「か、艦長! ここは自重していただけませんか? 我が航空艦隊の戦力はすでに圧倒的です。本艦の高価な装備を持ち出すまでもなく、放っておいても航空隊が敵を殲滅します。航空派の方々に喧嘩を売るつもりですか!」


「そうですよ」


「 巻き込まないでください、艦長!」


周囲の士官たちからも悲鳴のような制止の声が上がる。だが、未来はどこ吹く風で、ふわりと髪をかき上げた。


「うーん、でもねぇ。私の上司って、みんなおじいちゃんでしょ? それに私ももういい歳なの。来年には寿退社したいのよね。だから今さら航空派のおじ様たちを敵に回したところで、痛くも痒くもないかなーって。えへへ」


「・・・艦長」


「あら、古代君。あなただって、あの山本長官が悔しがって吠え面をかくところ、見てみたいと思わない?」


「不遜にも程があります! 私は巻き込まないでください!」


「もう、古代君もつまらない人ねぇ」


「私はこれでも新婚なのですよ! 家庭があるんです!」


未来は一瞬、遠い目をして呟いた。


「そうね・・・。私と違って、将来に希望があるものね。雪さんと・・・だったら、なおさら盛大にやりましょうか!」


なぜ、そこで逆に舵を切るのか――。CICの全員が心の中で絶叫した。


「主砲、全砲門開け。無人偵察機とのデータリンク開始。戦艦長門、伊勢、日向とのCIC接続! 射撃用意ッ!」


未来の瞳から甘さが消え、獲物を狙う猛禽の鋭さが宿る。


「全砲門、開放! 射撃準備!」


「一番から二番、高速滑空弾装填ッ!」


「長門、伊勢、日向、全艦高速滑空弾、装填完了しました!」


コンマ数秒単位で、巨大な戦艦たちの戦術コンピュータがネットワークで繋がり、戦場を支配し始める。


「各艦、ターゲット101から104をそれぞれアサイン(割り当て)。座標データ送信! 攻撃を許可する」


「目標データ、リンク送信完了。射撃諸元、確定!」


「各艦より敵艦捕捉! 主砲、いつでも撃てます!」


「ターゲット確定――射撃開始!」


未来が鋭く右手を振り下ろした。


「大和、長門、伊勢、日向、全艦一斉射ッ!!」


その瞬間、海を割らんばかりの轟音が轟いた。 戦艦群の巨砲から放たれたのは、旧時代の放物線を描く砲弾ではない。成層圏まで一気に駆け上がり、極超音速の速度で敵艦を追尾する誘導――高速滑空弾。


静寂の珊瑚海に、アメリカ太平洋艦隊の終焉を告げる、あまりに一方的な鋼鉄のリバイアサンの咆哮が鳴り響いた。

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― 新着の感想 ―
 『高度1万メートルの成層圏』において作戦行動されているようなので、「パイロット服」開発譚も読みたいです。  お願いします  戦闘班 古代班長の配偶者さんは、やつぱり 『雪』さんでしたか〜! (拍手…
山口さん、そのキルレシオは頑張りすぎだ 性能差があっても、頭おかしい
未来って鷹尾なのかその娘なのかどっちなんだろう 別人?
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