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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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84マリアナ沖海戦(マリアナの七面鳥撃ち)

舞台は再び、原子力戦艦大和のCIC。最先端の大型ディスプレイが淡い燐光を放つ中、艦長席に座る少女――未来みくるは、膝の上で指を組み、楽しげに言った。


「まずは敵航空機を完全にボコボコにして、航空派の若造の鼻をあかしてやれ・・・っていうのがおじいちゃん達からの密命なの」


「どういうことだ?」


山口多聞が、焦れったそうに詰め寄る。


「さっき、主砲の射程は1000kmあると言ったではないか。ならば今すぐ撃ち始めれば、敵は発艦すらできずに海の藻屑だぞ」


「あはは、正論ですね。でも、この船を我儘全開で建造させたおじいちゃんたちに、私も我儘全開で艦長として着任させてもらう代わりの条件がこれなんです。・・・本来内定してた沖田さん、ごめんなさい」


「・・・まさか、わざと航空攻撃を受けるつもりか?」


絶句する山口に対し、未来はいたずらっぽく、にっこりと微笑んだ。


「お母様が造り上げたイージスシステムを信じてください。あの人、性格はポンコツだけど、技術者としての腕だけは本物ですから。・・・他に信用できるところ、あんまりないんですけどね」


その時、オペレーターの鋭い声が艦橋に響く。


「敵水上機、西方10kmに接近!」


「あら。どうやら無事、私たちを発見してくれたみたいね」


未来は再び、花が咲くような笑顔を見せた。


(そこはニッコリする場面じゃないだろう・・・!)


山口と加来の心の中で、完璧にシンクロした突っ込みが入った。


探知コンタクト! 方位12、距離70! 高度、速度から米機動部隊攻撃隊と推定!」


「はーい、それじゃあ対空戦闘開始してくださーい♪」


場違いなほど愛らしい号令。しかし、その後に続くやり取りは、山口たちの理解を遥かに超えた未来の戦場だった。


「IFF識別・・・応答なし。敵機と判定! 目標、ノード201から204に登録!」


「ターゲット201、最も危険と判定。迎撃優先度第1位!」


「ターゲット201に対し、一式対空誘導弾12発を割り当て(アサイン)!」


大和の後部のVLS(垂直発射システム)から、白い煙を引いてそれが噴き出した。360度を見渡すCICの大型モニターを見つめる山口たちは、表示された輝点が一つ消えるたびに、数十キロ先の空で敵機がバラバラになっている事実に、背筋に寒いものが走るのを感じた。


「・・・誘導弾、発射! 命中まで20秒、15・・・」


撃破確認キル・コンファーム! ターゲット201消失!」


「続いてターゲット202!」


次々と消えていく米軍の誇る精鋭たち。


「・・・こんな物が敵にあれば、航空攻撃など死刑宣告に等しい」


「わが二航戦に、せめてこの一隻があれば・・・」


山口と加来の独白を聞き、未来は少しだけ申し訳なさそうに肩をすくめた。


「それはごめんなさい。山本長官に意見具申はしてたんだけど、許可に時間がかかっちゃって。ここに着いたのが昨日の夜だったんです。・・・ごめんね、山口のおじ様。加来のおじ様」


おじ様と呼ばれ、二人は思わず顔を見合わせ、むず痒い沈黙に陥った。まるで孫娘に甘えられているようで、つい何でも許してしまいそうになる。事実、未来はこの圧倒的な甘えん坊と美貌、そして天性のあざとさで大艦巨砲主義のおじいちゃんたちを籠絡し、この若さで大和艦長の座を勝ち取ったのだ。


「あとは秋月級に任せましょう。僚艦防衛システムの実働テストもしておかないとね」


未来がコンソールに指を滑らせる。


「第25駆逐隊、秋月へ。旗艦防衛の任を委任する。以上」


すぐさま、秋月艦長からの力強い返答が響いた。


『了解! 我が艦の防空能力、とくとご覧に入れましょう!』


大和一隻で約40機を瞬殺したが、空にはまだ敵機が残っている。大和の周囲を固める秋月、照月といった駆逐艦のVLSから、大和以上の速度で、さらに無数の光の矢が放たれた。


モニターから、すべての輝点が消えるまで、三分もかからなかった。


「・・・敵、全機スプラッシュ(全機撃墜)」


オペレーターの声だけが、静かになった艦橋に響く。世界の主役に躍り出たばかりの航空主兵論が、音もなく崩れ去った瞬間だった。


「ご苦労様。無人偵察機を出して、墜落現場の周辺に救命装備を投下してあげて」


「了解しました、艦長」


未来みくるは慈悲深い聖女のような微笑みを浮かべ、それから、ふっと瞳の奥を冷たく鋭い色に変えた。


「平和を乱す者たちへ・・・少し教育が必要なようですね! 古代君、主砲全門開け!」


(・・・平和を乱しているのは、果たしてどちらなのだろうか?)


山口と加来の心は、本日何度目か数えきれないシンクロを果たし、盛大な突っ込みを心の中で入れた。だが、少女の教育はもう止まらない。


「主砲発射管、一番から八番、開放。データリンク接続」


「一番から四番、46センチ高速滑空誘導弾、装填!」


「装填完了。弾着予想時刻、計算終了」


未来は艦長席で凛と前を見据え、その右手を力強く振り下ろした。


「――主砲、発射ッ!!」


その瞬間、原子力戦艦大和の巨体がわずかに震動した。世界最大の46センチ主砲。その砲身から放たれたのは、従来の常識を超越した誘導砲弾だった。


「一番から四番、発射! 加速を開始します!」


轟音と共に吐き出された誘導弾は、初速からして異常だった。主砲の爆風で海面を円形に押し広げたかと思うと、一瞬で大気を切り裂き、成層圏へと駆け上がっていく。


その落下速度、極超音速。 500キロメートルという、かつては艦隊が丸一日かけて移動するはずの距離を、それはわずか数分で踏破する。


「目標、空母エセックス。・・・最終誘導開始」


山口と加来は、巨大なメインディスプレイを凝視していた。そこには、自分たちが命を賭けて戦っていた敵空母が、ただの輝点として表示されている。 そして――。


ピ、と小さな電子音と共に、その輝点が一つ、呆気なくかき消えた。


「目標の消失を確認。空母エセックス、撃沈です」


たった一射。水平線の遥か彼方から飛んできた砲弾によって、最新鋭空母が葬られたのだ。モニターの中だけで完結する、血の通わない破壊。それが一隻の大型空母と数千人の命の終焉を意味すると知り、山口と加来の背中に、拭い去れない戦慄が走った。


「おじ様たち、どうしたの? 怖い顔して」


未来は首をかしげて、悪びれもせず笑う。それは、旧時代の勇気や戦略を根底から無効化してしまった、美しき死神の笑顔だった。

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