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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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7ポーツマス条約と日本工業規格JIS

1905年1月、ロシアで第一革命が勃発した。ロシアは日本との戦争継続可能な状態ではなく、日本もまた財政の限界点に達していた。互いの利害が一致し、アメリカの仲介による停戦条約が結ばれた。それがポーツマス条約。


議論は白熱したが、結局、強国のロシアに軍配が上がり、戦勝国の筈の日本は賠償金の獲得ならず、後の経済に深い影響を与えた。そればかりか、この屈辱的な条約が、増税に耐え忍んで来た国民の暴動にまで発展し、渋谷焼討事件などが発生した。


この条約によって日本は、樺太サハリンの全て、満洲南部の鉄道及び領地の租借権、大韓帝国に対する排他的指導権などを獲得した。


史実と異なる点は樺太全島の全てを奪取出来た点だが、これは陸軍の戦果が凄まじく、日本交渉団に有利に働き、ロシアも多少は折れた次第である。




「戦争に勝っても賠償金がもらえないんじゃ、戦った分、損よね」


「・・・お嬢様、お口チャック」


株式会社スバルが開業してから、私付の執事、善十郎が会社の副代表となって忙しいので、私付はメイドの茜となった。ただ・・・この子、まだ中学生位の歳なのに、目つきは悪いし、口が悪い。


「・・・口が悪いのはお嬢様の方です」


「なんでわかったのぉ?」


「やはり、そうお考えでしたか?」


「ううううううーーーン!?」


悔しいー。なんか調子狂う。


「それよりもお嬢様、社からの報告です。代表なのですから、きちんと責務を果たして下さい。書類一式を読んで決済するまでおやつはお預けです」


「・・・それは酷いよー」


「昨日もそう言って、責務を放棄してお休みになられたのはお嬢様では?」


「わかったよー」


仕方なく、渡された報告書に目を通すと信じられない事が書いてあった。


「なんじゃこりゃー!!!」


「お嬢様、ですからお口チャックです」


実際にお口を無理やり塞がれる。ちょっと、苦しいです、ギブギブ。


私が机をバタバタと叩いてギブの服従の姿勢を示すと、茜は戒めを解いてくれた。


ご主人様は私の方よね?


不満だが、何故茜はこんなに私に厳しいのか疑問が残る。


お父様もお兄様も私にメロメロだ。屋敷の雇人も同様。だって、私、凄く可愛い五歳児だもん。


茜も可愛いけど、私には五歳と言う武器がある。何故茜には私のあざとさが通用しないんだろ?


「何故、わたくしがお嬢様に甘くないのか不思議なのでしょう?」


「なんでわかったの?」


「やはりですか? わたくしは訓練を受けておりますので表情でどんなことを考えているかは・・・だいたい」


怖いよ、この人、忍者? いや、くノ一ですか?


「わたくしがお嬢様に意地悪をしたくなるのはお嬢様があまりにも可愛いのもありますが、この西洋メイド服が不満だからです」


「なんで? すごーく似合ってるよ」


「なんでスカートの丈がこんなに短いんですか? 膝下20cmもないではありませんか?」


「ああ、それ、あはっ♡」


それは私の趣味で着せているメイド服だった。この頃は未だ文明開化したばかかりで、和装の人が多かった。涼宮家の使用人も基本、和装で、例外は執事の善十郎位だった。そこに可愛い茜が新たな付き人になったのだ。可愛い女の子には可愛い服を着せてあげたくなるよね?


「あはっじゃない!」


ゴンっと、頭を軽くはたかれる。普通、お嬢様は頭をはたかれたりしないんじゃないかな?


「おかげで、庭掃除の度に近隣の人から変な目で見られます」


「それは茜の魅力が伝わっているんだよ」


「あんなの厭らしい目に決まってます!」


気がついちゃったか。十五歳ならまだわからなくて、むしろ喜んでくれると思ったけど、流石にこの美貌にミニスカートだと殿方の目も自然に・・・私のせいじゃないよね?


「茜が可愛い証拠なんだから、いいんじゃないかな?」


「お嬢様も尋常小学校に上がられたら、この様なお姿で如何ですか?」


ふにゃりと歪んだ笑みを浮かべる茜。


「いや、茜みたいに可愛い子が着るから可愛らしいんだよ、私じゃ「お嬢様の方がもっと可愛いですよね?」」


茜に頬っぺたをつねられながら無理やり鏡に向かわされる。確かに可愛く仕上がっている。この世界に転生した特典はこの美貌だろう。五歳にしてこの出来具合である。薄く綺麗に揃った繭に大きな目、肌は透けるように白く、口元は紅もさしていないのに紅い。


「ひゃめてよ、なかめ~」


頬っぺたを引っ張られているので、変な声になる。


「ちゃんと、お仕事されますか?」


「ひゃい」


新ためて報告書に目を通して頭が痛くなる。


「どうやら、根本的に物作りの基本を教えなきゃいけないわね」


茜は何故か後ろに一歩下がり礼をする。


「ねじの規格がミリとインチでバラバラ、板厚も適当で勘らない場合がある? その上、公差も適当で嵌合部はやすり掛け処か切削作業が必要? それを誇らしく現場の技術者が対応した様が詳細に書いてある?」


「何処がおかしいのでしょうか? 立派な職人の仕事の報告書とお見受けしますが?」


茜が不思議そうに尋ねるが、令和出身の私にとったら・・・。


「なんで図面通りに作れないのよぉ!」


これは規格統一や部品の共通化などの啓蒙をする必要がある。この現場の人達の努力は無駄である。図面通りに出来上がれば必要ない仕事だ。著しく生産性に劣る。彼らにはもっと崇高な使命がある筈だ。


私は渋沢先生に日本工業規格、Japanese Industrial Standardsを提唱しようと心から誓った。

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