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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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66第二次世界大戦勃発

一九三九年九月、ついに運命の歯車が回り出した。ドイツ軍によるポーランド侵攻。人類史上最大の悲劇、第二次世界大戦の火蓋が切って落とされた。


英仏は即座に宣戦布告を行ったが、独仏国境アルザス=ロレーヌ地方には、不気味な静寂が漂っていた。フランス人が奇妙な戦争と呼んだその期間・・・。それは平和などではなく、冬の悪天候によって空軍が動けないだけの、嵐の前の静けさに過ぎなかった。


そして一九四〇年、春。牙を剥いたドイツ軍はオランダ、ベルギー、ルクセンブルクの三国を蹂躙し、それを陽動とした。


春の五月、アルデンヌの森をドイツ機甲部隊は侵攻した。世に言うドイツ電撃作戦。マジノ要塞を過信したフランス軍は、その背後を突かれ、わずか一ヶ月でパリを包囲された。フランスは、あまりにあっけなく膝を屈した。


ダンケルクで、撤退する英仏軍が九死に一生を得たというニュースを報じる新聞。それを握りしめる私の手は、微かに震えていた。


ドイツの侵攻速度は史実通り。ですが、問題はそこではない。


「・・・ヒトラーとスターリンにいっぱいくわされたわ」


「どういう意味ですか? お嬢様」


傍らに控える茜に、私は険しい表情を向けた。


「フランスが降伏したのを見て、ソ連が動いたのよ。独ソ不可侵条約を格上げして・・・独ソ同盟を結んだ。それにイタリアもおそらく。これで完全に独ソ伊同盟の完成よ。最悪のシナリオだわ」


「そうですか? むしろ必然ではありませんか?」


茜は事も無げに、ティーカップを並べながら続けた。


「ソ連にしてみれば、西のドイツから攻められる懸念を消し、東ロシアとの境界線・・・エカテリンブルクとオムスクの間での戦いに専念できるのです。実利を考えれば当然の選択でしょう。・・・そもそも、自由貿易圏からソ連を排除したのは、鷹尾お嬢様ご自身ではありませんか?」


「・・・私が、悪いっていうの?」


「悪いとは言っておりません。A級戦犯だと申しております」


「余計ひどい言い様じゃないの・・・っ!」


思わず声を荒らげたが、茜の指摘は・・・あまりに鋭く、私の胸にぐさりと刺さった。国内が上手くいきすぎて、油断していた。アメリカでもルーズベルトが二期目の再選を逃した。


史実では世界の工場として台頭したアメリカ。けれどこの世界線では、日本との凄まじい貿易摩擦により、北部の工業地帯が労働賃金の抑制に喘いでいた。農業地帯は救ったものの、肝心の工業が息を吹き返せず、経済の完全復活を果たせずルーズベルトは大統領の座から滑り落ちた。アメリカという巨大な民主主義の兵器廠は私が変質させた。


「・・・茜。私は一体、どうすればいいの?」


「お嬢様の責任です。早急に対策を講じて、責務を果たしてください。それが平和の守護者を自称するお嬢様の役目でしょう?」


あれ? なんで私、今、メイドに命令されているのかしら? ご主人様は私のはずよね? ・・・とはいうものの、今の私は、茜の正論に立ち向かう言葉を持っていなかった。


「・・・そうね。すぐに行動に移すわ。茜、鳩山首相の元へ向かうわよ。準備して!」


「既に先方から、極秘会談の打診が来ております」


「・・・っ! それを早く言ってよ!」


「お嬢様がぼやぼやしているからいけないのです」


ちくしょう、全くその通りだわ! 私はムカつく気持ちを抑え、スバル製の最新型リムジンに飛び乗った。目指すは、首相官邸。


軍人による挙国一致内閣という史実の泥沼を回避し、議会制民主主義を堅持したこの日本。現在の舵取りを担うのは、政友会の若きリーダー、鳩山一郎首相。国民教育に情熱を注ぐ知性派の宰相は、官邸に招き入れた私に、レモンティーを差し出しながら、重々しく口を開いた。


「・・・東ロシアから、ソ連への総攻撃に関する通達が来た。鷹尾伯爵、わが国はどう動くべきだと思うかね?」


私は熱い紅茶の香りを一度だけ吸い込み、迷わず答えた。


「今の東ロシアは陸空ともに精強です。ソ連と互角に渡り合えるでしょう。・・・ですが、兵器供与を含めた関係強化は必須ですわ。特に、戦車の製造技術をかの国へ供与するご判断をお願いいたします」


「東ロシアにも強力な戦車はあるだろう? 何故そこまで危惧するのかね」


「ソ連の新型戦車T-34は、これまでの弱点をことごとく克服しています。実戦経験の乏しい東ロシアの主力戦車メンデレーエフMe1では、あまりに分が悪いのですわ」


鳩山首相は眉を寄せました。私が東ロシアのアナスタシア様と懇意にしていることは周知の事実。けれど、首相は安全保障上の懸念を崩さない。


「具体的にどのような技術だね? 度を越した協力はできぬぞ」


「・・・戦車は燃えやすい。ですから動力は軽油に。リベット留めの装甲は被弾時に破片が車内を跳ね、乗員を殺します。ですから溶接に。塗装は不燃性に。そして何より、傾斜装甲という概念を伝えるべきですわ」


「聞いていると軍事機密のオンパレードだが、技術そのものは知恵と工夫の域だな」


「ええ。一番重要なのは、わが国がドイツからライセンスを得たディーゼル技術でしょう」


史実と異なり、ドイツから船舶、自動車用ディーゼル技術を吸収したこの日本は、今や世界屈指のディーゼル大国。中型の一万トン級船舶すらディーゼルで動かすわが国の技術は、東ロシアを救う事になるはず。


「・・・それと」


私が言葉を継ぐ前に、鳩山首相が視線で先を促しました。


「英国、ですね?」


「ああ。物資の買い付けは増大しているが、このままでは英国はドイツに屈してしまうのではないかと不安視する声が大きい」


「英国には、武器や軍需品を貸与するのです。・・・戦時貸与法とでも名付けて国会を通してください。彼らは島国です。資金が底を突く前に、息を繋がせねばなりません」


「で? 何を貸せばいいのかね」


「松級駆逐艦と大隅級強襲揚陸艦、そして九七式戦闘機。駆逐艦と揚陸艦はそれぞれ六十四隻、戦闘機は百機もあれば十分でしょう。・・・当面、独空軍ルフトヴァッフェと潜水艦との戦いになりますから」


首相は驚愕に目を見開いた。


「・・・あまりに巨額ではないかね? いくらなんでも過大だ」


「欧州に恩を売る代金としてはお安いものですわ。それとも、ナチスとソ連の連合軍がシベリアを越え、満州に攻め込んでくる未来がよろしいかしら? 英国人に頑張っていただく方が、はるかに経済的ですわ」


「・・・なるほど。そこまで見越しているか」


史実ではアメリカが担うはずだった英国救済。それを今、史実の五倍という驚異的なGDPを誇るわが国が引き受けようとしている。


・・・しかし、最大の懸念は太平洋の向こう側。


「それにしても・・・アンドリュー・フォーク。誰ですの、一体?」


第三十三代アメリカ大統領。ルーズベルトを叩き落としてホワイトハウスに居座ったのは、共和党の謎の新人議員。彼はルーズベルトとは比較にならないほどの完全な極右。モンロー主義を掲げ、欧州の火事場泥棒的に貿易利益を貪る男。先日英国への関税引き下げを発表したが、日本への関税は200%に上げるという、救いようのない排外主義者。


「アメリカが動かない以上、私がやるしかありませんわね」


私は優雅にレモンティーを飲み干した。歴史の舞台裏で、私が書き換えた台本が、ついに世界を動かし始めようとしていた。

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― 新着の感想 ―
やあ、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するのが得意(できるとは言っていない)そうな大統領だなあ
准将!どこに転生しとんねん!
アンドリュー・フォーク …どこかで聞いたと思ったら、そっちかww
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