3日露戦争への影響
涼宮一族は末席に名を連ねる華族だ。その財力は小さな財閥位。銀行に造船、薬品、不動産、病院などを経営する。
その涼宮財閥の頭領がお父様、涼宮圭一郎。私の他に陸軍将校の歳の離れた蒼一郎お兄様がいるが、これが滅法イケメンで眼福である。
他に最近私付となった執事の長門善十郎、涼宮銀行の頭取をしている雷蔵叔父様。
そして分家の朝比奈謙三叔父様は涼宮病院の院長、それにご子息の一樹、つまり従兄様。
今日の親族への私のお披露目で、この従兄の一樹兄様を初めて見て吹きそうになった。
何しろ、アグレッシブに長い前髪は白でやはり長い襟足は黒である。その上・・・顔に大きな傷跡が・・・そう、ようするにブラックジャックによろしくなのである。
・・・拘りにならないようにしよう、それが私の第一印象だった。もちろん、これがフラグになってしまったのは、後日遺憾に思うに至った。
親戚に紹介されて疲れたが、はぁとため息を吐く。何しろ今の私の状態はかなり詳細に分かって来たが、所詮四歳児である。歴史に干渉する程の力が無い。
「どうしたんだい? 鷹尾?」
思わずため息をついた処を見逃さなかった蒼一郎兄様、流石イケメンは気配りも抜かりが無い。
「お久しぶりです。蒼一郎兄様」
「久しぶりって、二週間位だろ?」
「・・・はい」
私が拗ねてしまうのは、このイケメン兄様が妻帯者で、実の兄である事だ。何故周囲にこんなイケメンがいて、実の兄の上、妻帯者なんだ?
自分で言うのもなんだが、今の私はかなりの美幼女だ。将来を約束された美女間違なしの超優良株なのだ。ほんの少し待ってもらえば、お兄様も真実の愛に・・・いや、それ以前に実の兄では如何ともしがたい。せめて先程のブラックジャックとBLの世界を妄想しておこう。ツートン髪、顔面傷はドン引だが、意外と素の顔はイケてる。
・・・話を戻そう。
「何か困った事があったのかい?」
「いえ、別に・・・ただ、現代陸軍戦術に疑問を思いまして」
「え? 陸軍戦術?」
つい、思わず口から出まかせ的に言ってしまった。実際に疑問に思っていた点だが、この時代は塹壕を掘り、散開戦を行うとこまではお父様の書斎の本を読んで分かったのだが、迫撃砲が未だない。それに小銃もボルトアクションの5連発。火力不足にも程がある。
「小銃が携帯段数僅か5発のボルトアクション式では面制圧能力が不足しておりますわ。それに、塹壕戦に何故迫撃砲を加えないのでしょうか?」
「迫撃砲?」
「歩兵が携帯可能な砲身が短く、弾道が高い弾道を描く、敵の塹壕を攻撃する為の武器ですわ」
思わずしまった、と、後悔する。どうせなら、お兄様にはいつまでも可愛い妹と思って欲しかったけど、これではやべぇ妹認定案件である。
「・・・曲射砲のことか」
お兄様が真剣な顔で考えてしまったので、慌てて取り繕う。
「ご、ごめんなさい。軍人のお兄様の前で私ったら、何を知ったかぶりを、忘れて下さいまし」
「いや、とても興味深い話だったよ。でも、他の人にあまりそんなことを言っちゃだめだよ」
そう言って、鼻の先にちょこんと人差し指を置いて、押す。
「もう、お兄様ったら」
「鷹尾が可愛いからいけないだよ」
「・・・」
思わず顔が真っ赤になりそうである。このイケメンは妹まで虜にする気か?
「どうした? 疲れたかい?」
にっこり笑顔のイケメン様は余裕の笑みで自分の妹を誑し込んだことに自覚がない。
「流石に疲れました。ソファーでお休みします」
「そうしなさい。そうだ、甘いサイダーを頼んでおこう」
そう言って、お兄様はメイドにサイダーを頼みに行ってしまった。
ちょっと名残惜しいが、あの心臓に悪いイケメンはあまり長時間接触するとおかしくなりそうなので、ほっとした。
ソファーでサイダーを飲んでいる間、大人達は様々な問題を話し合う。例のツートンカラーの従兄は空気読めないヤツの様だ。
何しろ、相手の話なんて聞かないで、自分の言いたい事ばかり相手に捲し立てる。
絶対、友達いないヤツだ・・・私も前世でオタク友達以外にいなかったけど。
悲しいかな、四歳の幼女の身体は睡眠を欲していた。うつら、うつらと睡魔に襲われる中、最後に聞こえたのが「学会に復讐してやるッ!」と、騒いだ一樹従兄様の一声である。
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