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涼宮鷹尾の歴史改変日誌~令和のアラサー女子、明治の時代に転生して無双する。電子の技術は最強です!~  作者: 島風


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20/50

20蒼一郎と一樹 春季攻勢(カイザーシュラハト)

「申し訳ございません。お兄様・・・」


「鷹尾が何で謝るのかな?」


1918年、私は18歳になった。しかし、私に心臓をえぐられる様な事件が発生した。


史実ではなかった第一次世界大戦、それも欧州戦線への参戦。既に1916年海軍のユトランド沖海戦、1917年の陸軍のロシア派兵、そして今回、再び欧州への派兵が決まった・・・お兄様が参謀長として。


「私がタンク・・・本格的な戦車を開発していれば」


「鷹尾。心配してくれるのは嬉しいけど、あまり自分を責めないで・・・鷹尾は神様じゃないんだ。今回の事は未来視出来なかったんだろ?」


「・・・はい。日本は欧州戦線には参戦しない筈でした」


「ならば仕方がないじゃないかな? 私は軍人なんだ。戦地に赴くのは当然なんだ。ここは私の武勲を期待して、快く送り出して欲しいな」


「でも、でも、もし中戦車があれば」


私は想定外の欧州戦線へ参戦に、中戦車を開発しなかった点を悔いた。


中国大陸を主戦場とする日本陸軍にインフラが整っていない地での運用が難しい大型の中戦車は必要ない。だから軽戦車しか開発しなかった。


ましてや、このタイミングだとドイツ軍の戦車が登場する可能性が高い。


昨年のロシア派兵の際、ブルシーロフ攻勢に参戦した日本陸軍は奮戦したものの四個師団約八万人の戦力の内、実に二万人もの戦死者を出した。


流石に一旦撤兵したものの、イギリスからの派兵要請は続き、ドイツの無制限潜水艦作戦に対する報復とアメリカ軍の参戦に伴う同盟国としての体裁を整える為に再び派兵となった。


次の戦地はフランス。イギリス軍と共にドイツ軍と対峙する。


「必ず生きて帰って下さいまし」


「ああ、もちろんだよ。可愛い鷹尾の顔が見れないとね」


そう言うと、踵を返すお兄様。だが、もう一度振り返り、私の後ろにいた一樹従兄様にいさまの方を向いた。


「一樹、鷹尾の事を頼むぞ」


「坊ちゃんに言われるまでもない・・・むしろ坊ちゃんに言われる方がおかしいだろ?」


「違いないな。お前は鷹尾に忠誠を誓っているのだったな。頼むぞ」


兄様達は何か含みのある話をしていた。どういう意味ですの?




涼宮蒼一郎視点


両親や家族への挨拶を済ませ、実家を後にするが、心が痛む。


鷹尾は美しく成長し、心根も優しい子に育った。だが、科学者だからだろうか? 目に見えない醜いモノが見えてないようだ。本来、涼宮家の次期当主は長男の私だった。


そこに異論がある筈がないと、私だけではなく誰もが思っていただろう。


そこに現れたのが鷹尾の存在。天才科学者にして株式会社スバルの代表・・・財閥の涼宮家にとって、鷹尾を他家に嫁に出す事など考えられなかった。


それ処か、次期当主という可能性も出て来た。私も結婚して妻子がいる。妻と子の事を思うと、黙って鷹尾に次期当主の座をくれてやる訳には行かなかった。


鷹尾は未来の感覚で十八で結婚なんて考えられないと言っていたが、十五、六で結婚するこの時代、鷹尾は行き遅れだ。


そうなった原因は私にある。鷹尾は一樹が自分に懸想するなど小児愛者だとか言っていたが、この時代で十四、五にもなればそう言った目で見られるのは自然な事だ。二人の仲は良好で、一樹は月に二、三度は実家の鷹尾に会いに来ている。当然二人には縁談が持ち上がった。一族内ならば鷹尾を他家へ渡す事もない。将来の跡目争いにも時間を設ける事が出来る。


二人の仲を邪魔したのは私だ。鷹尾には三菱財閥の御曹司との婚約を提案した。三菱財閥も鷹尾と大きくなった涼宮財閥との血縁作りには当然乗り気になるだろう。


私の意見はそれなりに涼宮家に影響がある。父上も悩んでおられるが、私の腹黒さも当然わかっているだろう。それは鷹尾には私の様な腹黒さがないと言う、鷹尾の弱点を示唆するものであり、父上もそれで悩んでいるだろう。


いっそ、鷹尾が男であれば、一族の有力な一員として私を支える存在となり得たが、鷹尾は女だった。


・・・こんな醜い私を慕ってくれる鷹尾に負い目はある。何も知らない鷹尾はいつも綺麗な目で私を見つめ、私を称賛する。私と一樹を比べ、私を褒め、一樹を貶す鷹尾。


・・・本当にお前の事を案じている味方は一樹の方だと言うのに。


一樹はおそらく鷹尾に恋しているのだろう。だが、そんなそぶりは見せない。あいつは涼宮家の一員として、父上の判断に任せ、ただ、鷹尾の為だけに生きている。


未だに鷹尾の頭脳をあてにした時にしか会いに行かない私・・・鷹尾の事を案じていつも傍にいようとする一樹・・・一樹が案じているのは私が鷹尾を害するのではないかという不安。


それは正鵠を射る考えだ。既に父上はそれを案じ、我が家に昔から仕える家系の茜を鷹尾に付けた。彼女は鷹尾の食事の毒見や警護などを担当している。あの女は忍者の末裔。数人がかりで銃を使っても倒す事など出来ない。


彼女がいなければ、とっくに暗殺していただろう。




私は気持ちを切り替えて、赴く戦地の事を考えた。


おそらく、ドイツ軍はフランスに対して攻勢に出て来る。その際、ロシア軍が編み出した突撃部隊を使った戦術を改良して使って来る。


日本でもブルシーロフ将軍の考案したこの革命的な戦術を更に改良し、浸透戦術へと昇華させた。更にこの作戦への対処方法縦深防御や機動防御、鷹尾の会社のおかげで高性能化した通信機のおかげで指揮系統の維持と冗長化も必ず役に立つ。


機動防御においても鷹尾の会社製の軽戦車とトラックが大いに役に立ってくれるだろう。


この戦いで大きな戦果を残す事が出来ればまた、昇進の話も出て来る。


・・・父上が私を後継者に選んでくれれば・・・あの二人は結ばれるのに。


鷹尾は恋を知らないらしい。一樹を見る目は信頼に満ちている。燃えるような愛情だけが恋じゃない。鷹尾の一樹への信頼はおそらく恋心そのものだろう。


一緒に居て安心できる存在。それに気が付いていないだけだ。


私は軍帽をかぶり直すと、陸軍省へと向かった。

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