神様ありがとうございます
夜が明けたばかりの早朝、神様は身の回りの世話を任せている天使に揺り起こされた。
「神様、神様、起きてください、サタンのクソ野郎からホットラインが来ています」
「何? サタンから?」
天使から受話器を受け取り電話に出る。
「ハイ」
途端に罵詈雑言を浴びせられた。
「此のクソ爺! 人類を滅亡させてどうする気だ? また最初から光あれーが言いたいのか? 此方はその所為で大損害だぞ! 損害賠償を求めるからな、覚悟しておけよ」
え、どういう事だ?
「まて、まて、待て! 人類が滅亡だと? どういう事だ? 儂は知らんぞ」
「テメエがやらなかったら誰がやったって言うんだよ!」
状況が飲み込めないでいる儂のところに、人類監視局の上級天使が駆け込んで来た。
「大変です!」
「どうした?」
「人類操作コンピュータに重大なバグが発生し、人類滅亡願望がある奴の意識と核ミサイル発射ボタンを持ち歩いている独裁者の意識が入れ替わり、人類滅亡願望者がそれに気がついた途端に核ミサイルのボタンを躊躇する事なく押したんです」
「な、何だとぉー!
そ、それで、限定核戦争に留められなかったのか?」
「最初は核ミサイルを撃ち込まれた大国は、核ミサイルを発射した独裁国だけに報復核ミサイルを発射したのですが、核ミサイルの進路上にあった最初に核ミサイルを撃ち込まれた大国とそれほど仲の良くなかった2つの大国が報復核ミサイルに過剰に反応し、核ミサイルの発射ボタンを押した為に全面核戦争に移行し、地球上は現在火の海になってます」
「なんて事だ……」
「それで……」
「なんだ? まだ続きがあるのか?」
「独裁者と意識が入れ替わった人類滅亡願望者がボタンを押した際、『神様ありがとうございます』と呟いたのですが、疑う訳じゃ無いのですが神様関与してませんよね?」
「当たり前だぁー!」
一連のやり取りを受話器越しに聞いていたサタンの罵詈雑言を聞きながら、神様はまた初めからやり直しかと肩を落とすのであった。




