チョコメロの自己紹介
とある森の一角に、木でできた小屋がありました。
そっと中をのぞいてみると、シーツにくるまって眠る、ボールのようなナニカが見えます。
この生き物の名は――チョコメロ。
チョコメロは、まんまるな体から不思議に伸びる手足を持つ、不思議な存在なのです。
チョコメロは目を覚ますと、まずシーツをきちんと片付けました。
それから小屋の窓を開け、差し込む朝日をのんびりと眺めます。
どうやら今日も、とてもいい天気のようです。
まんまるな体を見てみると、上のほうには不思議な模様があり、
さらに全体には小さな黒い粒がきらきらと輝いています。
チョコメロは、その黒い粒があまり好きではありません。
水面に映る自分の姿を見るたびに、つい目をしかめてしまうのです。
少しだけなら気にならない粒も、全身にまだらに散らばっているのがどうにも落ち着かないのでした。
そんな表情のまま、チョコメロはストレッチを始めます。
両手を高く伸ばして背伸びをし、足をぐっとのばしてジャンプ。
入念に体をほぐしていきます。というのも、今日は依頼された大事な仕事が待っているからです。
ストレッチが終わると、次は朝食の時間。
棚から材料をひとつひとつ取り出して並べていきます。
チョコメロは、美味しいものを食べるのが大好き。
こだわり抜いた食材をそろえると、さっきまで曇っていた表情もすっかり柔らかくなりました。
美味しい食べ物の前では、悩みなんてどこかへ消えてしまうのです。
食べ終えると、片付けを済ませ、いよいよ出発の準備です。
依頼に必要なアイテムをひとつひとつ取り出し、玄関の外へと並べていきます。
用意していたメモを見ながら、確認を怠りません。
再度点検を繰り返す――それこそが、チョコメロという生き物の習性そのものなのです。
すべての準備を終えたら、あとは迎えを待つだけ。
玄関の前に腰かけて、丸まった姿勢で待ちます。
やがて、目を閉じると意識がぼんやりとしてきました。
頭の中に浮かんでくるのは、懐かしい景色。
「チョコメロ」――自分の名前を呼ぶ声。
「チョコメロ」――頭をなでてくれる手。
その背中を追いかけて遊んだこと、美味しいご飯を作ってもらったこと。
しかし同時に、その場所から遠ざかっていく記憶もよみがえり、
懐かしさと寂しさが入りまじって、チョコメロの目頭をじんわり濡らしました。
「ようチョコメロ。今日もいい天気だな、玄関前で待っているなんて律儀だな~、あんどうしたんだ
朝から日向ぼっこして寝ちまったか⋯可愛い寝顔しやがって、もう少し寝かせてやるか」
とある森の一角、そこには不思議な生き物が暮らしています その名前はチョコメロといいます。