表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローになれない一般人、主人公になる  作者: 来栖 天明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/29

第二十九話 過去の記憶と水晶の怪人

久々の怪人登場回です。


 店内は静まり返っている。

 緑が(みこと)にどんな神様なのかということを質問したのだが、その(みこと)が黙ってしまったのだ。


「わしはみんなからいらない存在になってしまった神様なんだ」


 (みこと)が重い口を開く。

 いらない存在?


「気づいたらね、ここに村があったんだ。それが最初の記憶。村の真ん中に僕はいた。みんな優しくてね、贅沢ではないけど、たくさんのお供え物を持ってきてくれてたんだ。わしにはできることなんてないんだけどね。それでも子供たちがわしの家の周りで楽しそうに遊んでくれたりすると、わしもそこに交じって悪戯(いたずら)したりして驚かせて遊んでいたんだ」


 おいおいそれは良いことなのか?


「そのうち段々と村が栄えて行って、道がキレイになって、鳥居が建てられて。村も大きくなって、家がたくさん増えて、人もものすごく増えたんだ。」


 俺はこの間見た鳥の神様の記憶を思い出す。これはその後の話なんだろうな。


「村はにぎやかになったけど、途中からね、誰も来なくなっちゃったんだ」


 新しい人が増えすぎて、神様を信仰(しんこう)する心が薄くなっていったのか。

 

「それからわしはまた誰かが遊びに来るのを家の前で待っていた。ずっとずっとずーっとね。だからなんの神様でもないんだよ」


 困ったような笑顔で緑に返事を返すと、(みこと)はケーキに手を付けた。

 初めての味に驚きながらも美味しいとわかる表情をこぼす(みこと)は少しつよ(つよ)がっている様にも見える。


「祀られているときに村の人に何か言われたことはないのか?何もないのに祀ることはそうそうないと思うんだが」


 そう、祀られるからには何かしらの理由があるはずだ。

 亀の時も、鳥の時も、ちゃんと祀られる理由があったのだから。

 

「んー、特に思い当たることはなかったかなぁ?そもそも悪戯(いたずら)するのに集中してて覚えてないや」


「ケーキ取り上げるぞ」


「ごめん!ごめんて!!」

 

 こんなんじゃちゃんとした話は聞けなさそうだな。小さな神様は悪戯(いたずら)好きと。

 そういえば黒はこの町に長く住んでいるはずだ、何か知らないだろうか?さっきからいろいろ話を聞いて思い出そうとしてるみたいだし。


「なぁ権三(ごんぞう)さん、今までの話を聞いてて何か分かることはあるかな?」


「いやぁ、わしにはなんとも。社があったことは知っておったがのぅ。それも小さい頃の話で今の状態になってしまってからは、もう取り壊されてしまったものだとばかり思っておったわ」


 確かにあんな状態じゃぁなぁ。


「あの!皆さんに提案(ていあん)なんスけど、俺達で(やしろ)綺麗(きれい)にしないっスか?」


 緑がいきなり叫んだ。なんか、力が入ってるな。


「本当か?本当に綺麗にしてくれるのか?」


 (みこと)が緑に駆け寄り、(そで)にしがみつく。

 緑は(みこと)に向かって力強く(うなず)いた。

 こりゃみんながやらないと言っても緑は一人でやるんだろうな。

 まぁ言わないけど。


「何を当たり前のこと言ってんだ悠斗?」


「へ?」


「ふぉっふぉ、やらない理由はなかろうて」


「こんなかわいい子供が悲しんでいるんです、綺麗にして祀らないと!」


 間違いなくこの場の誰よりも年上だけどなこの子。


「大地君、道具はあるかしら?」 


「倉庫にあったと思うが、足りなければホームセンターに行けばいいだろ?」


 全員がニカッと笑みを(みこと)に向ける。こいつらのこういうところが俺は好きだ。


 そんな話をしているうちに外は晴れてきた。これなら作業できそうだなと考えていると……


 ピシッ


 と何かが割れるような音と空気が(こお)り付くような感じがした。


 嫌な予感がしてみんなを見回すと、みんなの顔が緊張しているのがわかる。

 赤に目線を移すと俺に向かって静かに(うなず)いた。


 久々の怪人だ。


 慌ててみんなで店の外に出る。

 

 嫌な感じはしたが、まさかここに出るのかよ。

 怪人が出現したのは俺の店の真ん前。ここに出現したのは初めてだ。


(みこと)!危ないから店の中に隠れてろ!」


「わ、わかった!」


 さすがに神様と言っても無事な確証(かくしょう)はないし、あいつ自身も何の力もないって言ってたしな。


 今度の怪人は大きくはなかった。全身が水晶のような人間、そういうしかない見た目の怪人。

 

「お前の目的はなんだ?今までのやつらと同じで地獄を見せてやるって感じか?」


 赤が対話を試みる。いつもなら変身してすぐに攻撃していたが、それは相手が出現して早々(そうそう)破壊行動(はかいこうどう)をしていたからだ。

 しかしこいつは違う出現して今この瞬間も、攻撃してこようとはしてこないし黙ったままだ。


「私をあんな下等な奴らと一緒にしないでもらいたいな」


 !?


「まさかちゃんと答えてくれるとは思いもしなかったわ」


「あいつらはただ暴れたいだけなのよ。私はちゃんと目的があって来ているもの、妨害(ぼうがい)しなければ危害(きがい)は加えないわよ?」


 水晶人間が静かに、淡々(たんたん)と答える。


「それで?目的ってなんなんスかね?」


「そうじゃな、返答次第(へんとうしだい)では妨害(ぼうがい)しなくてはいけなくなるからのぅ」


簡単(かんたん)よ、力の原点を破壊(はかい)する。それがあの方に命令された私の目的。」


 力の原点?なんじゃそりゃ?


 そこまで言うと水晶人間は鳥居の方に向かって腕を伸ばす。

 肩のあたりが光り始めたかと思うとその光はゆっくりと手の先の方へ……


 !!


「まずい!止めろ!!」


 俺の叫びと共にヒーロー達が駆け出す。


烈火一閃(れっかいっせん)変身(へんしん)!」

解析開始(かいせきかいし)最適化(さいてきか)…… 変身(へんしん)モード、起動(きどう)!」

正義(せいぎ)()()く。サンシャイン·チェンジ!」

「笑いも涙もひっくるめてー変身(へんしん)ドーン!」

老骨(ろうこつ)(むち)()ち変身じゃあ!」


 各々(おのおの)瞬時(しゅんじ)変身(へんしん)すると、水晶人間の光る腕に必殺技を()()す。


烈火一刀両断れっかいっとうりょうだん!」

「フロスト·ビアース!」

「フルバースト·ジャスティス!」

笑撃(しょうげき)インバクト!」

玄武突(げんぶづき)!」

 

 ヒーローたちの必殺技で水晶人間が(けむり)に包まれる。

 しかしホッとしたのもつかの間、(けむり)の中にまだ消えない光があった。


 ダメだ、間に合わないか!


「やれやれ、はよ(はよ)うわしの名前を呼べ権三(ごんぞう)。もう決まっておるのじゃろぅ?」


 黒の腰に付いている根付(ねつけ)が光ったかと思うと、亀の神様の声が響いた。


「……(あらわ)れい()でよ!大岩玄武(たいがんげんぶ) !! 」


「正解じゃ!」


 嬉しそうな老女(ろうじょ)の声と共に根付(ねつけ)から黒い風が渦巻(うずま)き出る。

 黒の肩に小さい亀が現れた。え?小さいまま?


「頭に浮かんだ言葉を叫ぶのじゃ!あやつの攻撃(こうげき)なぞ防いで見せようぞ!」


絶岩玄武陣(ぜつがんげんぶじん)!!」


 ヒーローたちの前に大きな甲羅(こうら)模様(もよう)をした透明(とうめい)(たて)が現れた。

 水晶怪人の手から太めのレーザービームの様なものが放たれるが出現した(たて)にぶつかり霧散(むさん)する。


「チッ……邪魔(じゃま)するなと言っただろう。貴様(きさま)らを排除(はいじょ)しなければいけなくなってしまったではないか」


生憎(あいにく)(だま)ってみていられない性分(しょうぶん)でな」


 亀、もとい大岩玄武たいがんげんぶが返す。


「……力の原点の一つが解放されていたか。しかも盾とはな」


 また力の原点といったな。しかも亀の神様を見て解放されていたと。

 もしかして俺たちの探している()()が力の原点なのか?


「やめだ。盾が解放されているなら何をしても無駄だろう」


「ほう、随分(ずいぶん)殊勝(しゅしょう)じゃのぅ」


「だが、邪魔(じゃま)された腹いせはさせてもらおうか」


 水晶人間が指をパチンと鳴らすと、どでかい門が()()現れた。

 全員が見上げて思わず(うな)る。

 

 なんて置き土産(みやげ)だよ……。


「お前……!」

 

 再び視線(しせん)を落とすが、そこにはもう水晶人間の姿はなかった。

読んで頂きありがとうございます。

これからも頑張って更新していきたいので応援お願いします。

感想書いていただけたらやる気出ます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ