紅蓮に轟く大きな桜
――赤い光に包まれ、気づけば俺は空にいた。
轟く風が頬を叩き、息を吸うだけで胸が熱くなる。
目を見開いたまま、足元へ視線を落とす。
そこに広がっていたのは――紅く燃える龍の頭だった。
「……は、はは……!」
笑いが零れる。止めようとしたって止まらない。
怖さなんて微塵もない。あるのは圧倒的な高揚感と――震えるほどの喜びだ。
「っはは! やっぱりすげぇな、大地は!」
叫んでいた。胸の奥から尊敬が溢れ出す。
あいつが呼び覚まさなきゃ、俺はこんな景色に立つこともできなかった。
リーダーだなんだと威張っていた俺に、道を拓いてくれたのは――あの男だ。
誇らしくて、ありがたくて、どうしようもなく笑えてくる。
「大地……お前のおかげだ。俺は今、ここにいる」
そう呟いた瞬間、龍の瞳が輝き、俺の心を見透かすように低く咆哮した。
紅い花びらが空に舞う。神々しいほどの光景に胸が締め付けられる。
「……決めたぞ。お前の名は――桜火だ!」
俺の宣言に呼応するかのように、龍は高らかに鳴いた。
その声は「相棒」として共に戦う覚悟そのものだった。
⸻
「それじゃあ、行くぞ桜火!烈火一閃――変身!!」
叫ぶと同時に変身する。
炎のような赤の光に包まれ、心臓が爆ぜるような力が体を駆け巡る。
桜火は嬉しそうに一声吠えると、空を切り裂いてワープした。
⸻
視界が一瞬にして変わる。
目の前に広がっていたのは――山中を蹂躙する巨大怪人の姿。
足元には仲間たちが構えていた。
だがその顔にはさっきまでの焦りも迷いもない。
俺と桜火が現れた瞬間、黄が叫ぶ。
「みんな、行くよ!!」
「解析開始。最適化――変身モード、起動。」
「正義は撃ち抜く――サンシャイン・チェンジ!」
「笑いも涙もひっくるめて――変身ドーン!」
「老骨に鞭打ち――変身じゃあ!」
その声を合図に、青・黄・緑・黒が同時に変身する。
それぞれの変身の輝きに、赤い花びらが混じって見えた。
――なるほどな。大地の力が、みんなを繋げてるってわけか。
胸の奥で確信する。
⸻
大怪人と向き合う。
デカい。禍々しい。だが――負ける気はしない。
「今度は桜火がいる。俺たちは負けねぇ!」
拳を握り締め、声を張り上げる。
「行っくぜぇぇぇぇ!!!」
俺の叫びに応えるように、桜火が咆哮し、弧を描いて上空を旋回し、そのまま大怪人に突撃する。
⸻
大怪人の拳が迫る。
殴り潰そうとする巨大な腕――その瞬間。
「させない! フロスト・ピアース!!!」
青の叫びと共に、下から青白い閃光が突き上がる。
ドゴォッと凄まじい音と衝撃、大怪人の腕が弾き飛ばされた。
「おお……!」
一瞬驚いたが、すぐに笑みがこぼれる。
下では青自身も驚愕している。
黄が「うっそでしょ……?」と呟き、緑が「力が増してる……」と目を見開く。
――大地の力は、みんなの必殺技まで底上げしてるのか?
ますます胸が熱くなる。
⸻
大怪人が今度は足元の仲間たちを踏み潰そうと足を振り上げる。
「させるかぁ!!」
「笑撃ぃインパクト!!」
「玄武突ィィィ!!」
緑と黒が地面に張り付いた足を同時に必殺技を放つ。
ズシンッという衝撃と共に怪人の足がぐらつき、巨体がバランスを崩す。
「今よ!!フルバーストォ・ジャスティス!!」
黄が叫び、顔面目掛けて光の一撃を叩き込む。
「ガァォァァァ!?!」
大怪人が呻き声をあげ、膝をついた。
「行くぞ桜火!!!」
俺が叫び、拳を突き出す。
だがその瞬間――頭に澄んだ少女の声が響いた。
『……ごうおうだいぐれん……』
「…?ごうおうだいぐれん? なんだそりゃ……」
目の前に赤く燃える文字が浮かび上がる。
――轟桜大紅蓮。
それが桜火の必殺技だと直感した。
ニヤリと笑い、胸の奥から力を解き放つ。
「よぉし! 行っくぜぇぇぇ!! 轟桜大紅蓮ッ!!!」
ぶわっと赤い光の花びらが空に舞う。
桜火の全身が紅蓮に燃え上がる。
だが不思議と熱さは感じない。むしろ力が溢れ出す感覚だけがあった。
「うおおおおおぉぉ!!!」
紅い炎の龍が吠え、一直線に大怪人へ突っ込む。
轟音と閃光、桜火が巨大な炎の塊となって怪人を貫いた。
「グゴガァァァァァ!?!」
大怪人が断末魔の叫びをあげ、そのまま虚空へと消え失せる。
⸻
辺りが静まり返る。
変身が解け、誰もがその場に立ち尽くしていた。
全力を出し尽くした気分だ、もう力が入らない。
周囲を見回しようやく大怪人を倒したことを理解した。その瞬間脱力していた身体のそこから衝動が込み上げてきた。
「……いよっしゃああああ!!!!」
俺は叫びながら勝鬨を上げた。
俺たちは――勝ったんだ。
下を見ると、青と黄が思わず抱き合い、緑が涙を拭いながら笑っている。
黒は地面に座り込んで、もう一歩も動けないといった様子だ。
その全部が愛おしい。
仲間たちの表情が、戦い抜いた証なんだ。
こうして――俺たちの初めての大怪人戦は幕を閉じた。
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