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婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第一章 剣聖、黒衣の騎士 カール=キリト誕生編

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第35話 天才魔術師の指名

【天才魔術師の指名】



王都に戻ったばかりのカールとセリアに、冒険者ギルドから呼び出しが届いたのは、休息もままならぬ翌朝のことだった。ギルド本部の奥、重厚な扉の先にあるギルドマスター室。そこに通された二人を出迎えたのは、書類の山に埋もれるように座る中年の男――ギルドマスター、バルド=グランダスだった。


「やれやれ、顔見せて早々に仕事を振るのは気が引けるが……お前さんには特別だからな」


そう言って、バルドは苦笑を浮かべながら一枚の依頼書をテーブルに置いた。


「カール、お前に指名依頼が来ている」

「指名……?」


カールは書類を手に取り、目を通す。任務の名目は“王立魔術学院の秘匿調査に伴う護衛”。王都でも上位の権威を誇る学院からの依頼であり、その重要性は高い。加えて、提示された報酬は目を見張るほど破格だった。


だが、それ以上に目を引いたのは、依頼主の名――

リアナ=クラウゼ。


「カールも、出世したな」


と、バルドは煙草に火を点けながら、半ば呆れたように言う。


「まさか王国が誇る天才魔術師、リアナ=クラウゼから、指名が入るとはな」

「……誰だ?」


と、カールが首を傾げた。

それにセリアが小さく息を呑む。


「リアナ=クラウゼ……“碧眼の魔導姫”と呼ばれる少女よ。十五歳にして魔術学院の最上位課程を修め、いまや宮廷魔導士への道も確実とされている……王国中の貴族たちが注目する、才媛」

「ふむ……知らん」

「お前が興味ないのは知ってる。だがまあ、あのリアナ様が、名指しで“黒衣の剣聖”に護衛を求めてるってんだから、話題にはなるさ。下手すりゃ王宮からも目をつけられるかもしれんぞ?」


バルドは皮肉めいた笑みを浮かべたが、カールは依頼書をそっと置き、ただ一言だけ呟いた。


「……俺の剣が必要なら、行く。それだけだ」


その言葉に、セリアの胸が静かに高鳴る。

だがそのとき、部屋の扉が軽やかにノックされた。


「お入り」


とバルドが言うと、扉が音もなく開く。そこに立っていたのは、まばゆいばかりの存在感を放つ少女だった。


金糸のような美しい髪が、朝の光を反射してきらめく。

澄んだ碧眼は知性と冷静さをたたえ、気品ある佇まいは、まるで絵画から抜け出した女神のようだった。


「お騒がせしました。リアナ=クラウゼ、参りました」


静かな声で、リアナは礼を取った。


「あなたが、“黒衣の剣聖”……カール=キリトね」


少女はまっすぐにカールのもとへ歩み寄り、柔らかな笑みを浮かべた。


「噂よりずっと素敵な方で安心しました。私の護衛を、お願いできますか?」


まっすぐに伸ばされた手。それを受けるかのように、カールは無言で彼女を見返す。その隣で、セリアがわずかに眉をひそめた。


「この依頼、あなたの名で出されていたが、どうして俺を?」

「簡単よ。あなたの戦いを見てみたいと思ったから。護衛といっても、これは“共に歩む”ということ。私はただ守られるだけの人間じゃないわ」


言葉の端々に、自信と誇りがにじむ。それは傲慢とは違う、“積み重ねた才覚”を知る者だけが持つ堂々たる在り方だった。


「私の魔術は、知識と論理、そして魂から紡ぐ祈り。その魔術と、あなたの剣が交われば……私たちはどんな困難でも乗り越えられると信じているわ」

「……自信家だな」

「ええ。そうでなければ、王国最年少の魔導士なんて呼ばれていないわ」


その言葉に、セリアが思わず口を開く。


「でも、護衛任務にしては随分と“個人的”な言い回しね」


リアナはその声に振り向き、微笑を浮かべた。


「あなたが、セリア=ノルド。氷の魔女と呼ばれる……剣と魔術を併せ持つ、希有な冒険者」

「……光栄ね」


言葉は丁寧だったが、そこに走ったわずかな火花を、カールは見逃さなかった。


(……面倒なことになりそうだな)


だが彼は、剣を振るう者として――そして男として、その責任から目をそらすつもりはなかった。


「依頼は受ける。ただし、俺は護衛であって、従者ではない」

「もちろん。私は、あなたを“対等な仲間”として迎えるつもりよ」


リアナの瞳が真っすぐに、まるで魔法陣の中心のように、カールを見つめていた。

その視線に、セリアがわずかに身じろぎする。


そして、この瞬間から――


三人の旅が始まる。

剣と魔術、そして“想い”が交錯する、波乱の幕開けだった。

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