表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第一章 剣聖、黒衣の騎士 カール=キリト誕生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/268

第34話 ルゥの日記:あの人の背中

◆ルゥの日記:あの人の背中◆



ボクは、ルゥ。フェンリル族の末裔で、まだまだ子ども。森の奥で一人で生きてたんだけど、ある日「カール」っていう人間に出会ったんだ。


最初は、怖かった。


黒いマントに鋭い目、まるで闇そのものみたいな雰囲気だったから。でも、不思議だった。殺気も、敵意も……ない。むしろ、静かで優しい空気が流れていた。


「お前……怪我してるのか?」


カールは、倒れていたボクを見て、そう言った。


普通なら、フェンリル族なんて見つけたら、真っ先に狩られる。母さんがそう言ってたから。だけど、カールは違った。そっと膝をついて、ボクに手を差し伸べた。


「動くな。薬草を使う。」


怖かったのに……その手は、温かかった。


それから、ボクは彼と一緒に旅をすることになった。いや、正確に言うと、勝手について行ったんだけどね。


彼は強かった。剣を抜いた瞬間、空気が変わる。魔獣だって、敵の騎士だって、みんな震える。でも、カールは決して無駄に剣を振らない。


それが、ボクにはすごく不思議だった。


「ねぇ、なんで戦うの? 強いなら、全部倒しちゃえばいいじゃん。」


そう聞いた時、カールは少しだけ遠くを見た。


「……それじゃ、“あいつら”と変わらないからな。」


“あいつら”。たぶん、カールが昔、信じて裏切られた人たちのことだ。


彼の目はときどき、すごく遠くて……悲しい色になる。


だけどね、ボクにはわかるんだ。


カールは、本当はとっても優しい。


傷ついた村人を見捨てないし、困ってる子どもにパンを分けてくれるし。セリアさんが疲れてると、何も言わずに焚き火を起こして、あったかいスープを作る。


「言葉にしない優しさ」って、たぶんカールのことだと思う。


でも、ボクにはその優しさが……ちょっとだけ、寂しく見える。


ある晩、みんなが寝静まったころ、ボクはこっそり起きて、カールのそばに行った。


彼は、剣を手入れしてた。月明かりに照らされた横顔は、いつもの無表情で、でもどこか……壊れそうだった。


「ねぇ、カール」


「……起きてたのか。どうした、ルゥ?」


「ボクさ、あんたのこと、だいすきだよ。」


その言葉に、カールは少しだけ驚いた顔をした。ほんの一瞬だけ。


「……そうか。」


それだけ言って、頭をポンポンってしてくれた。その手が、あったかくて、ボクはちょっと泣きそうになった。


ボクにとって、カールはただの“剣聖”じゃない。


父親でもなく、兄でもない。だけど、世界で一番信じられる背中。


その背中に、何があってもついていきたいって、心から思ってる。


いつかボクも、大きくなって、彼のように強くなりたい。


でも、ただ強いだけじゃなくて、人の痛みがわかる強さ――


それを教えてくれたのは、カールなんだ。


だから、誓うよ。


この命が尽きるその時まで、ボクはあの人の隣を走る。


氷の剣士セリアがいても、王国が敵に回っても、世界が滅びようとしても。


ボクの“牙”は、あの人のためにある。


ボクの“心”は、あの人の剣の隣にある。


それが、ボク――フェンリルの子・ルゥの誇りだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ