第134話 ぼくのご主人、ぜったい最強なんだワン!》──ルゥ視点
ぼくのご主人、ぜったい最強なんだワン!》──ルゥ視点
うぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉんっ!!!
ご主人、勝ったワン!!!
すっごかった!すっっっごかったワン!!!
決勝戦の最後の最後。
アレクのすっごい雷の拳が、空を割ったかと思ったら、ご主人の剣が光って、ばしゅん!って!
「絶閃・零ノ型・空閃」だワン!!
ご主人がよく夜の修行で使ってたやつ!
でも今のは、今まで見た中で一番すごかったワン!
キラキラして、ピカってなって、もうなんか……かっこよすぎて、ぼく、尻尾ちぎれそうだったワン!!
アレクも、すごかったワン。
あんなでっかくて、雷ゴロゴロで、吠えるたびに耳がきーんってなったし。
正直、最初はちょっとだけ怖かったワン。
でも、うちのご主人、ぜったい負けないって、信じてた!
だって……ご主人は、ぼくのヒーローなんだワン!
◇
思い返せば、ぼくがご主人と出会ったのは、ちょっと前。
ぼく、もともとはただのフェンリルの子犬だったワン。
寒くて、ひとりぼっちで、食べ物もなくて、ガルルって唸って誰も近寄らなかったぼくを、ご主人はぎゅって抱きしめてくれた。
「おいで。大丈夫だ、もうひとりじゃない」
あの声、今でも忘れられないワン。
あれから、ぼくはご主人の隣にいることが日常になった。
一緒にご飯食べて、一緒に旅して、一緒に戦って、一緒に笑って。
……だから、ご主人がこの大会に出るって決めたとき、ぼく、うれしいのと、ちょっとだけ心配だったワン。
だって、強いやついっぱい来るって聞いたから。
でも、ぼくは知ってた。
ご主人が一番強くて、一番優しくて、一番カッコイイってこと。
◇
戦いのとき、ぼくは闘技場の近くから見てたワン。
セリアお姉ちゃんとリーリアンお姉ちゃんの近くだワン。
「カール、がんばって……!」
「無茶はしないでよ……!」
お姉ちゃんたちの声も、ぼくと同じ気持ちだったワン。
みんな、ご主人のことが大好きで、大事で、大切なんだワン。
でも、ご主人の戦いは、そんな気持ちを全部包みこんでくれるくらい、すごかったワン。
最初は互角だった。
アレクの雷拳と、ご主人の剣。
ぶつかって、はじけて、地面が割れて、空気がビリビリして。
でも、だんだんご主人が押されて……!
「あぶないワン!やめるワン!」って、ぼく、つい大声出しちゃったワン!
でも、セリアお姉ちゃんが言った。
「大丈夫。カールは負けないわ」
それを聞いて、ぼく、信じるって決めたワン。
それに、ご主人……全然、諦めてなかった。
体がボロボロになっても、目がまっすぐだった。
剣を握る手が震えてても、気持ちはぜったい折れてなかった。
……そんなの、反則だワン。
かっこよすぎるワン……。
◇
そして、ついに、最後の一撃。
ご主人の足元に魔法陣が走って、剣が空に吸い込まれるみたいに振り上げられて——
「絶閃・零ノ型・空閃!!」
ぼく、しっぽピーンって立って、思わず吠えたワン!!
一瞬で、アレクの雷が裂かれて。
一瞬で、勝負が決まった。
そのときの静けさ。
世界が止まったみたいだったワン。
空気が澄んで、風が止まって、音もなくなって。
ただそこに、ご主人が立ってた。
勝者として。
剣士として。
そして……ぼくたちのヒーローとして!
◇
ぼく、走ったワン。
一番に、ご主人のとこへ!
「ご主人ーーっ!!勝ったワァァァァァァン!!!」
思いっきり飛びついたワン!!
ご主人、ちょっとふらってしてたけど、ぼくの頭をちゃんとなでてくれた。
「……ルゥ、ただいま」
その言葉聞いたとき、涙出たワン。耳までびしょびしょになったワン。
「おかえり、ご主人!」
世界一あったかくて、世界一ほっとする言葉だったワン。
◇
そのあと、みんなが集まってきた。
リーリアンお姉ちゃんがちょっと泣きそうな顔で「ほんとに、すごいよ……」って言って、
セリアお姉ちゃんは「バカ……でも、無事でよかった……」って肩に顔うずめてて。
その姿見て、ぼく、またうるうるしちゃったワン。
でもね、そのとき気づいたワン。
ああ、ぼくたち、家族なんだって。
ただの仲間じゃない。
一緒に戦って、一緒に信じて、一緒に泣いて笑って。
ご主人を真ん中に、ぼくたちはみんな、ひとつなんだワン。
◇
戦いは終わったワン。
でも、これからもっといろんなことが起きるかもしれない。
魔王軍のこと、世界のこと、人間と魔族のこと——
でも、ぼく、怖くないワン。
だって、ご主人がいるから!
ご主人は、どんなに暗い道でも、剣で道を切り開いてくれる。
迷っても、立ち止まっても、ぜったいに前を向いてくれる。
だから、ぼくも走るワン!
ご主人の隣を、これからもずっと!
そして——いつかミゥにもカッコイイとこ見せてやるんだワン!
フェンリルの誇りにかけて、ぼくは、ぼくだけの道を行く!
その先に、ご主人と一緒にいる未来があるなら、それがいちばん幸せだワン!
◇
最後に、ひとことだけ。
ご主人、だぁぁぁぁぁぁいすきだワァァァァァァァァン!!!
ほんとに、ほんとに、おめでとうだワン!!




