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婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第2章 カール=キリト 魔王国編

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第45話 妖精の村でのひととき

『白銀の聖女、祈りとともに』

 静寂が森に戻り、セリアの身体を包んでいた光が徐々に消えていった。彼女の装束は、銀白の魔力を帯びた聖衣へと変わり、胸元には淡く輝く三つ目の鍵――守護の結晶が輝いている。


「セリア……その姿、まるで本当に聖女みたいだ」


 リーリアンがぽつりと呟き、目を細める。冗談のような口調だったが、その言葉に込められた感情は真剣だった。


 カールもまた、息を呑んでセリアの変化を見つめていた。彼女の魔力が、以前とはまるで違っているのを感じていた。かつての氷の刃は姿を潜め、代わりに、あたたかく包み込むような力――それが、彼女を中心に柔らかく広がっていた。


「私は、選んだの。誰かを傷つける力じゃなくて、誰かを守る力を」


 セリアはそう告げて、両手を胸元に重ねた。


「これが、私の新しい魔法。“白銀の守護術プロテクティア”」


 その瞬間、彼女の足元に魔法陣が浮かび上がった。淡い光で構成された六芒星、その周囲を花の紋様が取り囲み、空間全体に温かい波動が広がっていく。


「癒しと防壁を合わせた術式です。仲間の傷を癒し、同時に彼らを守る結界を展開できる。今の私には、攻撃の魔法はもう使えない。でも……これで、あなたたちの背中を支えられる」


 リーリアンが息をのんだ。


「すごい……同時発動の魔法。それも、これほど大規模な……。セリア、あなた……本当に“聖女”になったのね」


 その言葉に、セリアは小さく笑った。


「聖女だなんて、そんな大げさなものじゃないわ。ただ……カールを、みんなを、失いたくないだけ」


 ふと、ルゥがセリアの足元に寄ってきて、尻尾を振りながら言った。


「セリア、今の君はすっごくあったかい。まるで……春のお日さまみたいだワン」


「ありがとう、ルゥ」


 妖精女王セレーナスは微笑みながら一歩前へ進んだ。


「選びし者よ。あなたの選択は、この森に、新たな風を吹き込んだ。かつて“氷の魔女”と呼ばれたあなたは、今や“白銀の聖女”として、民に祈りと希望を与える存在となるでしょう」


「……その名を、恥じないようにします」


 セリアは静かに頭を下げた。


 


 それから一行は、妖精の村でひとときを過ごすことになった。


 セレーナスのはからいで、彼らは村の精霊と語らい、癒しの泉で傷を癒し、次なる冒険への準備を整えていく。


 その夜、静かな湖のほとりで、カールとセリアは二人きりで座っていた。


 空には、無数の星が瞬いている。


「……本当に、変わったな」


 カールがぽつりと呟く。


「氷の魔法を捨てるなんて、誰よりも冷静だったセリアが、こんな選択をするなんて、正直、思ってなかったよ」


「私も、少し怖かったの。でも……ね、私、ようやく自分の魔法の“意味”を見つけた気がするの。私の力は、誰かを傷つけるためじゃない。誰かの命を、未来を、想いを守るためにあるんだって」


 セリアは湖面を見つめながら、手のひらを開いた。


 そこには、小さな守護の光が浮かんでいた。


「あなたがいたから、気づけた。ずっと、あなたの背中ばかり見てた。だから今度は、私があなたの背中を支える番。……いいでしょう?」


 その言葉に、カールは静かに頷いた。


「……ああ。セリア、お前が隣にいてくれるなら、俺はもう、何も怖くない」


 言葉よりも先に、二人の手が自然に重なっていた。


 


 夜は更け、妖精たちの祝福が空に舞う。


 その中心に立つ、白銀の聖女――セリアは、新たな力とともに、仲間と共に進む覚悟を新たにしていた。


 


 そして、導きの石が最後の光を放ち始める。


 次なる目的地は、三つの鍵の力を合わせて開く、「始まりの地」――かつて封印された古の神殿。


 全ての謎が明かされる地へと、一行は旅を再開する。


 だがその時、まだ誰も知らなかった。


 白銀の聖女の力は、これから訪れる“絶望”において、たった一筋の希望となるのだということを――。

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