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婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第2章 カール=キリト 魔王国編

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第22話 エンシェントドラゴンとの戦い

 「――ならば見せよ。人の子よ」


 ウロボロスの瞳が、金色に輝いた瞬間、谷全体に凄まじい衝撃波が走った。


 「くっ――!!」


 カールは剣を抜き、咄嗟にその波を断ち切る。


 「全員、散開! 攻撃が来る!」


 「了解っ!」


 セリアが風の魔法で霧をはらい、リーリアンはピンクの魔力をまとって跳躍する。


 ウロボロスの巨体が空に浮かぶ。羽ばたき一つで、岩壁が吹き飛んだ。


 「これが……伝説の竜の力……!」


 セリアが氷の盾を展開しながら叫んだ。


 「半端な魔法じゃ通じないわ!」


 「でもやるしかないよねっ!」


 リーリアンが叫ぶと同時に、四方から魔弾が放たれた。火と氷、雷と風――しかし、そのすべてを、竜の鱗がはじき返す。


 「固すぎ……!」


 「これは“神の鎧”よ。千年の時を越えて、精霊たちが編み上げた絶対の防御……!」


 セリアの声に、カールが剣を構える。


 「じゃあ……突破するしかない!」


 彼の手にある《ドラゴンキラー》が、血のように赤く輝いた。


 「うおおおおおおっ!!」


 跳躍。竜の首元へと一直線に突き進む。


 ウロボロスが咆哮する。それは雷となり、大地を焼いた。


 「カール、危ない!!」


 ルゥが叫び、霧の中から体当たりするように飛び出す。彼の背に、ほんの一瞬、青白い光の羽が見えた。


 「今だよ、カール!!」


 ルゥの叫びとともに、カールは竜の左目を狙い、剣を突き立てた。


 「これが……俺たちの、意思だあああああっ!!」


 赤い刃が、神の鱗を砕いた。


 ウロボロスの体がぐらつき、低く唸った。


 「……なるほど。人の子よ。貴様の力、確かに見せてもらった」


 巨竜が、ゆっくりと地に降り立つ。


 「戦えば貴様らは死ぬ。だが――貴様は戦うことを選ばず、言葉を選んだ」


 「俺は……無駄な血を流すより、意味のある未来を選びたいだけだ」


 カールは剣を収めた。


 「人と竜が争っても、もう何も生まれないだろ? それより、共に世界を守る方法を探したいんだ」


 ウロボロスは、しばし黙した。


 谷に、沈黙が降りる。


 やがて――


 「……貴様が初めてではない。かつてもいた。そう語った者が。しかし、彼らは皆、時とともに“信じること”をやめた」


 「俺は違う。信じるよ。仲間も、自分も。そして、あんたも」


 「…………」


 竜の瞳が、深く、ゆっくりと閉じられた。


 そして、彼は言った。


 「名を告げよ、人の子よ。我が力を授けるに値する者の名を」


 「カール=キリト。剣聖で、旅人で、ただの一人の人間だ」


 「……よかろう。では、誓え。我が名、我が魂、我が力を汝に授ける。汝はそれを正義のために使うことを誓うか?」


 カールは、ぐっと拳を握った。


 「誓う。世界を守るために、絶対に裏切らない」


 「ならば――我が名を冠せよ。今より汝は、ウロボロスの盟友、そして『竜契の者』なり!」


 轟音とともに、竜の巨大な翼が広がる。


 空が揺れ、光が降り注ぐ。


 次の瞬間、カールの背に、赤黒い紋章が浮かび上がった。


 「これは……!」


 「契約の証よ。カール、すごい……!」


 「あなた、本当に竜と……!」


 セリアとリーリアンが同時に声をあげた。


 ウロボロスが天を仰ぐ。


 「さあ、進め。我が力を得た者よ。お前たちの道は、ここから始まる。……世界の命運を、託すに足る者よ」


 「ありがとう、ウロボロス」


 カールが微笑んだ。


 ルゥが、ちょこんと彼の足元に座る。


 そして三人と一匹は、竜の見送る中、ゆっくりと谷をあとにした。


 新たな力を携えて――次なる運命に立ち向かうために。

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