虹色の蝸牛さん
片山家は、ママとパパ、お姉ちゃんののまいちゃん、そして弟のつむり君の四人家族です。
そんな片山家は梅雨の時期に家族でピクニックに行く事にしたみたいです。何とか天候にも恵まれ、楽しいピクニックが始まりました。朝露の冠を被った紫陽花達もにっこり笑っています。
「ねぇねぇママ!おにぎりおいしい?まいが作ったおにぎりだよ!たべてみて!」
「ほんとだ美味しそうね!それじゃあ1ついただ━━━━」
「オギャァァァァァァ。。」
「あらあら、つむり君もお腹が空いたのかな。ミルクの時間ですよ〜。」
「もー。またつむりがじゃました!まいがママにインタビューごっこしてたのに!」
「まいちゃんだってほんのちょっと前まではつむりと一緒だったんだぞー。まいちゃんはお姉ちゃんだから我慢も出来なくちゃなー。」
「パパまでそんなこと言わないでよ!」
「パパもママもまいよりつむりが1ばんなんだ!もうしらない!」
と半べそをかきながら言い放ち、まいちゃんは綺麗な紫陽花の中へ走り出していきました。
『なんでつむりばっかり……』
そんな事を考えながら、不貞腐れていると
「まいちゃん!僕を見つけて!」
そんな小さな金切り声が聞こえてきました。
声のする方を向くと、そこには虹色の蝸牛が紫陽花の葉っぱの上に乗っかっていました。
「でんでん虫がしゃべった!!」
「僕を見つけてくれてありがとうまいちゃん!僕はまいちゃんの願い事を叶えるサポートをするよ。」
「…どうゆうことなの?」
「まいちゃんはママとパパの1番になりたいんだよね。僕ならその願い事叶えられるよ。」
「でんでん虫さんはまいの心が分かるの!すごいや!まいのおねがいかなえて!」
「分かった。契約完了。そしたら、早速。まいちゃん。僕を食べて。」
「……え?でんでん虫さんって食べられるの?」
「んー。そうだなまいちゃん。例えばね、フランスではエスカルゴってゆってね、蝸牛を食べるのは全然普通のことだったりするんだよ。」
「だから、ほら、、食べて。そしたらまいちゃんのおねがい叶えてあげる!」
「……ゴクリ。分かった。いただきます。」
まいちゃんは虹色の蝸牛を手のひらに乗せて、まるで禁断の果実を1口かじるように、虹色の蝸牛を1口かじってみました。
『あ、美味しい。』
すると突然、後ろからパパの手が飛んできて、まいちゃんの手のひらの上の蝸牛を道路の方まで吹き飛ばしました。
「こら!!まい!!今すぐ、食べた蝸牛を吐き出しなさい!!!蝸牛には毒があるんだぞ!!」
パパが吹き飛ばした、虹色の蝸牛は遠くでぺしゃんこに潰れていました。アスファルトに打ち付けられて、殻が砕け、胴がちぎれ、それはなんとも惨かったみたいです。
楽しかったピクニックは中止です。パパは直ぐにまいちゃんを病院に連れていきました。お医者さんは薬を出しておくので、自宅で安静にしてください。と言いました。
まいちゃんの命に別状はなかったですが、まいちゃんは数日間高熱にうなされました。
━━━━━━━後日━━━━━━━
チュウチュウ…チュウチュウ…
そんな薄気味悪い音がパパの耳を障ったので、パパは寝付けなかった。
『うちの家は、新居だからネズミなんて居ないはずなんだよな。』
男は音の出処を探ることにした。どうやら上の階から不気味な音が聞こえてくる。上の階には、娘の子供部屋と妻の寝室があり、階段をヒタヒタと登っていくと、だんだんだんだん音が大きくなってきた。
チ゛ュウ━━━━チ゛ュウ━━━━
壊れた排水溝のような、何かが詰まっている吸引音。その音は妻の寝室から聞こえている。恐る恐る扉を開くと、そこには川の字で寝ている3人の家族の姿があった。いつもは自室で寝ている娘の姿もそこにはあった。
まだまだ母親に甘え足りない時期な娘には弟ができてから少し寂しい想いをさせていたのかもしれないな。男は小さく反省した後、愛する家族の寝顔を見ようと近づいた。
「ギャーーーーっ!!!」
パパは変わり果てたまいちゃんの姿を見て、声にならない悲鳴をあげた。
ぎょろぎょろと飛び出た眼球に赤と黒と緑の気持ちの悪い斑点がチカチカと点滅し、針のように尖った口で弟の目ん玉に刺さったストローをでチュウチュウと吸っていました。その姿は脳裏にこびりついて離れなかった潰れた虹色の蝸牛のようでした。
「ママ……ママ……」
男は、半べそをかきながら妻の方へ這いずっていきました。
「ママ!目を覚ませ!!」
そう叫びながら、妻の体を揺らすと、ずるりっと自分の頭が取れました。男の頭は壁に強くぶつかりグシャリと音を立て砕け散りました。
その瞬間、男は気を失いハッと気がつくと、自室の白い天井が目に飛び込みました。
『なんだ、夢か。』
どこからが夢だったんでしょうね。
チュウチュウ。
まいちゃん→マイマイ
つむり君→かたつむり
名前はカタツムリに関係してます。
虹色の蝸牛→ロイコクロリディウムに寄生された蝸牛
の事です。このカタツムリを子供の目線から見た時は綺麗に見えるんじゃないかなと思い虹色にしました。
ロイコクロリディウムに寄生されると普段は目立ちたくないカタツムリが目立ちたがり屋になるそうです。鳥に食べられてロイコは勢力を伸ばすって聞いたことがあります。この目立ちたがり屋のロイコの性質と、弟と自分を比較し、親にもっと自分を見てほしいと思っている少女を対応させた形です。
ホラーが描きたかっです