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侯爵夫人の悪女っぷりをご覧あれ

「ウチにかまわないで。おじ様はもう妃殿下のいいようには使えないと思って、って。うちの美人の娘に結婚相手を押し付けるな。もし手出しをしたなら私が全力でお相手する、とはっきりお伝えしたの。後から『聞いてない』と言われるといけないから、強く印象に残るようにと思って」


「……」


 その目は「まだ他にもあるでしょう?」と言っているのか、ずいぶん信用がない。リリーはわざとらしく肩をすくめた。


「これでも我慢したんです。『ウチは私兵を抱えているけど、妃殿下は持ちませんよね。国軍は公国民のための軍でありセレスト家の一存では動かせない、規模は全く敵わなくても機動力はウチが勝る。軍部にはジャスパーの部下がたくさん。行けと言われて、はいそうですかと攻めてくる考えなしは、そういない。ウチを甘くみると後悔するわよ、公国を乗っ取るのは無理でも、人々を疲弊させてセレスト家を憎むように仕向けるくらいわけはない』とは言わなかったもの」



 言葉を失くすジャスパーは珍しい。さっきまでの睨む眼差しは消え、すごい勢いで頭を働かせている……ような気がする。


「大丈夫よ、言ってないから」

 ここは整理がつくまで待ってあげよう。リリーは思いやりをみせた。



「この後は、どうしますか」


 いきなりいつもの表情に戻ったジャスパーは今の話を聞かなかったことにするつもりなのだ、とリリーは解釈した。することは決まっている。


「体力のあるところは伝わったと思うから、あとは――」









 淑女の嗜みのひとつとされるダンス。一曲目はルナの見本になるように、教本通りのステップを組み合わせてもらった。大事なところはしっかり教えたい、さり気なくスカートを持ち上げて足捌きを見せる。


 ジャスパーが眉をひそめるのは、はしたないと感じているせい。でも踊っていない方々――のうちの主に紳士――は楽しそうにしてくださるから、これくらいいいじゃないのと思う。


 二曲目はジャスパーと初めて課外授業で踊った振り付けにした。これでいくのだと察したジャスパーが先まわりしてくる。 


「危険な技は止めてください」

「危険って?」


白々しくも思い当たらないふりをする。


「上に飛ばしませんし、最後床に落ちるのは禁止です」

「禁止って、先生みたい」


心外だと頬をぴくりとさせるのが可笑しい。



 ジャスパーと手を重ねながらも、耳に坊ちゃまの指の感触を懐かしがる自分がいる。「これは絶対に知られてはならない」と思っていることも伝わらないように気を配る。


 彼と生きていくと決めた。その気持ちには少しの揺らぎもない、ないから。


「心配しないで、ジャスパー」

「絶対に手は離しません」


 真顔で言うジャスパーは、どうあっても投げ上げてはくれないらしかった。



ジャスパーとの初めてのダンスは、「花売り娘は底辺から頂点を目指します!」の221話からの「ダンス*ジャスパー」にあります。

よろしければ、そちらもどうぞ。


ブクマ・いいね・評価等々ありがとうございます。

この後も引き続きお楽しみ頂けますように。



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― 新着の感想 ―
散々虐めた挙句の、“我慢して言わなかったアレコレ“にぶっ飛びました。 『具体的なこちらの方があの方には分かりやすかったのに•••我慢したア•タ•シ偉いでしょ。』『褒めて褒めて•••』 って聞こえまし…
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