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永遠に心を奪う輝き・3

商人は感じの良い笑みを浮かべた。


「ごもっともでございます、奥様」

「ありがとう。でも、まだ奥様ではないの」


 冷めかけのお茶をどうぞと勧める。おじ様は教会でお仕事、エリックは自分の仕事をしているから、温かいものを飲むなら応接メイドを呼ばなければならない。わざわざ呼び鈴を引くくらいなら、冷めたお茶でいい。



 石をテーブルの端に寄せて、碗皿を前にする。こんな時に他のご婦人方はどんな会話をするのか、見当がつかない。


すると、商人が不思議なことを言い出した。


「まだ正式な侯爵夫人でないと仰せなら……お届けが間に合ったと考えて宜しいでしょうか」


 ほとんど手つかずのお茶を脇に避けると、どこか緊張した面持ちで商人が白手袋をした。

何か始まるのかと、リリーも同じように碗皿を手元から遠ざける。



 リリーの前に恭しい手つきで置かれたのは、小さな木箱だった。


「どうぞ、まずはご覧ください」

 

 きっちりと合う蓋をはずすと、中には布張りの小箱があった。箱が二重の時点で最上級品と分かる。どう出せばいいのか、指の入る隙間がないほど大きさはぴったり。


 仕方なく手のひらに逆さまにして、えいえいと振る。ようやく布張りの小箱が出た。見て見ぬふりの商人にリリーも澄まし顔で、一呼吸置く。


 息を詰めながら、そっと箱を開けた。


「これは」

「ピンクダイヤモンド。亡きエドモンド殿下よりご用命を賜りましたお品でございます」


 白いクッションの上に鎮座していたのは、一粒の比類なく美しいピンクのダイヤモンドだった。



 圧倒的な存在感に魅入られたかのように、石から目を離すことができない。どれくらいたってか、はっと我にかえった。

呆けた顔あるいは値踏みするような欲深い顔つきになってはいなかったかと心配になる。


「ごめんなさい、見とれてしまって」


 恥ずかしいわと両手で頬を押さえるこの仕草がまた恥ずかしくない!? と慌てると、今度は手を置くのに相応しい位置が分からない。


「ありがとうございます。私が扱ったうちで極上の一石でございます」


 おたおたした一連のおかしな動きはなかったことにしてくれるらしい。謝意は心の内に留めて、リリーは居住まいを正した。


「ご説明くださいますか。聞き違いでなければ今『エドモンド殿下』と」

 


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