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両家初顔合わせ・1

 親子四人初顔合わせであっても「初めまして」は必要ない。


 ルナとグレイ家の後嗣ポールは「十五年度に一度の修道院の奇蹟」で見習いシスター代理と警備担当者として出会い友人となった。


 リリーはポールの子供の頃に会っているし、ルナが実母に会いに行く前、ウーズナム卿に協力を求めた際も会っている。


 ポールとジャスパーには父子という意味での血の繋がりはなく、自分とルナにももちろんない。その四人が家族となるのだから特殊な親子関係だと、リリーは改めて晩餐の卓につくそれぞれの顔を眺めた。



「ポールさん」と呼びかけるルナに「お兄さんかポールにしませんか」とポールが提案する。


「まさか、こんなに大きくなってからお兄様ができるなんて」


 まあ出来るのは普通弟妹だものね。と考えるリリーをよそに。


「嫌? お姉様がよかったでしょうか」


 優しげに微笑むポールが女装しかねないとでも思ったのか、ルナが大急ぎで首を横にふる。


「いえ! お兄様が出来て嬉しいと言いたかったのです」


 お兄様と強調するところが可愛くて、リリーが「私のことはお母様じゃなくてママでいいのよ、昔みたいに」と言えば。

すかさずジャスパーまでもが「私のことはお父様ではなく、パパでかまいません」と便乗する。


「女の子相手だと、こんなに違うものですか」


 父親にも丁寧な言葉で話すポールが軽く引き気味なのを、母子が笑う。和やかな雰囲気のうちに会食は済んだ。





「子供達は子供達の時間を」

ジャスパーの一言でエリックが動く。


「街で人気が出つつある菓子はいかがですか」

小間へご用意致しましょうと誘う。


「なに?」

反応したのは、ルナではなくリリーだ。


「バタークッキーの間に糸を引くようなキャラメルを挟んでチョコレートで包んだものです」

「それ、私も食べたい」


 男性はこの後通常は食後酒で、女性と言えどもリリーなら飲むとジャスパーが配慮したのだろうが、俄然そのお菓子に興味をひかれる。


「皆様のぶん、数はございます」

言い方がおじ様に似ているのはさすが親子。


「欲しければ私の分も差し上げます」

「絶対よ、ジャスパー」


 やり取りを興味深そうに見ていたポールが率直な感想を述べる。


「ルナよりお母様が、お菓子好き?」

「ロバートおじ様がいらっしゃる前は、たまにお母様だけ『今日の夕食はお菓子』の日がありました」


ジャスパーの無言が心に刺さる。

「ルナちゃん、余計な事を言ってはなりません」


これ以上は駄目と目で制すると、ルナが申しわけなさそうに笑う。


「いいじゃないの、お酒で済ませるより健全でしょう」


肯定する返事はどこからも返らなかった。


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