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おじ様、彼がセドリック・1

おじ様ロバートに初めて会ったルナはポカンとしていた。


「私が子供の頃からお世話になったおじ様なの。これから教会のお仕事を一緒にしてくださるわ」

「ロバート・ケインズと申します。宜しくご指導のほどお願い申し上げます」


 田舎娘のルナ相手にもご令嬢にするのと変わらない態度は、さすがおじ様。ルナはこの挨拶にも驚いている。

 リリーの読みとしては、ジャスパーがおじ様を貸してくれた理由はコルバン家対策だ。


 コルバン家にはバルドー執事長がいる。アラン・コルバンひとりを相手取るならどうという事もないが、執事長込みとなると庶民のリリーではどうしたって不足が目立つ。そのあたりの補強をしてくれようとの配慮に違いない。読みは外していないと自負するリリーだ。


「こちらこそよろしくお願いします、ケインズさん」

「はい、ルナさん」


 ルナには「おじ様」と呼ばせようと思っていたのに、おじ様はルナを「お嬢さん」と呼ばない。共に働く仲間として「ケインズさん、ルナさん」でいいのだろう。


「ルナ、どなたかお待たせしているのではありませんか」


 おじ様といるとつい素に戻ってしまいがち。よろしくない、と院長らしい雰囲気に切り替えて尋ねる。

 老けたお化粧もおじ様はすぐに理解を示し「さすがはお嬢さん、よいご判断です」と手放しで誉めてくれ、くすぐったかった。


「はい、シスター。セドリック様がご挨拶をと」


 今はどちらにと問えば、礼拝所にいると言う。すぐに向かった。








 セドリック・レアードは、この地を治める伯爵レアード家の跡取り息子。

ルナが子供の頃、ヘザー嬢の遊び相手として領主館で過ごした夏に会ったのが最初だ。


 再会はルナ十二歳。そこで亡霊騎士と遭遇した。公国に亡霊はつきものでも、その騎士は王国人。


 人の土地にまで遠征するのは止めて欲しいとリリーが思っても、姿を見ることができるのはセドリックと「亡霊騎士の探し求めるお姫様」の生まれ変わりであるルナだけだから、現世の保護者であるリリーといえども、直に文句を言うことはできない。


 さらに、セドリック・レアードがかつて隣国で稀代の呪術師とされたレアール伯の生まれ変わりかもしれず、アラン・コルバンもまた亡霊騎士の生まれ変わりと自他ともに認めていると聞けば、面倒事の香りしかしない。


 揃って「前世の記憶」とやらがなかったのが何よりだ。

ミモザの城と呼ばれる王家所有の城が古い記憶を呼び覚ますらしいが、今度余計な真似をしたら、火炙りにするか異能で核心部を封じてやろうと、リリーはかなり本気で思っている。勝手をしすぎる城には、思い知らせる必要がある。


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― 新着の感想 ―
[一言] 勇ましいリリ-も好ましいです。節度を何処までも守っているジャスパーに貴族の育ちの良さを感じますが、信用されてるリリ-をここまで来て、離したくないからでしょう。いじましいです。色々お話の隙間が…
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