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装甲お嬢様

「…………」 暗殺用、完全思考同期型装甲巨兵(ドレス)、”ハッシシ”蠢動。

ダークソウル3の踊り子のボスのイメージ。

 それは、異様な機体だった。


 全長七メートル弱。

 ゆいこまれた黒髪。

 目を閉じた美女の口に薄衣を纏う。

 ひょろ長い四肢に細い胴体。

 腕と足共に蛇腹状になっており、伸縮自在である。

 手には鋭い5本の爪。

 薄い布の服以外なにもまとっていない。


 暗殺用 完全思考同期型装甲巨兵(ドレス)、“ハッシシ”である。


 ”ハッシシ“が月明かりに照らされて、音もなく荒れた古城の壁にへばりつく。

 

 シュウウウ


 ナノマシンを足と腕の関節から散布。

 光学迷彩で姿を消した。



「今回の仕事は楽勝だなあ」

 古城の中では、柄の悪い男たちが焚き火を中心に酒を飲んでいる。

 焚き火の火が、膝をついた5機の半思考同期型装甲巨兵(ジャケット)の巨大な影を作った。


「しかし、団長、いいんですかい」

「ハイファットの公爵令嬢なんてさらってきて」

 古城の地下に閉じ込めてある。


「いいんだよっ、大きな声で言えねえが、依頼主は教会だぜ」


「ファーストビル教の?」


「そうだ、近々王都で何かするらしいぜ」

「王都周辺の装甲移動教会に、動きがあるらしい」


「きな臭いですねえ〜」


「ま、油断するなよ」

 団長は、見張りに立っている装甲巨兵を見た。

 城壁の高さは、10メートルくらいか

 普通の巨兵なら飛び越えるのは無理だ。


 ギュギュン


 見張りの巨兵の駆動音がした。


「ふむ?」

 団長が地下の入り口を振り返る。


「!? 敵襲だっ」

 黒い人影が、地下の入り口の見張りを音もなく倒していた。

 団長が、自分の巨兵に飛び乗る。

 部下の巨兵と巨兵の間から、爪の生えた巨大な手が飛んできた。

 焚き火と共に、部下の姿が消える。


「そこかっ」

 団長が自分の巨兵を緊急起動。

 手に持った斧で伸びている腕を断ち切る。

 振り返ると、城壁の上に細身の巨兵がしゃがんで座っている。


「光学迷彩っ、王国の暗部かっ」

 闇の中へ姿を消した。

「乗れたのは何機だっ」


「二機ですっ」


「くそう」

 しゃべっていた腹心は、やられたようだ。


「城から出るぞ」


 ギギギ

 ズズーン


 見張りに立っていた巨兵が後ろに倒れる。


「くそっ」

 コックピットが、えぐられていた。


「うわあああ、なんなんだよ、なんなんだよお」

 部下の一機が走り出した。


「一人で行くなああ」


 闇の中から爪が飛んできて、巨兵の両足を吹き飛ばした。 

 前に転倒したところに、背中から爪が立つ。

 闇に手が消える。


「団長」

 部下の巨兵が、剣と盾を構えながら、背中合わせになる。


 レバーを操作して、自分の巨兵に斧と盾を構えさせた。


「どこだ」

 モニターを思考同期でゆっくり動かす。

 巨兵の頭がゆっくりと動く。


 ズルウウリ


 全長7メートルの死の女神が、闇の中から現れる。

 細身の身体全体で、円を描く様に爪を飛ばした。


「だ、だんちょお、かこ、かこまれて」


「は、反則だぜ」


 ゲフッ

 団長が血を吐いた。


 五機、計九本の爪に、二機の巨兵はバラバラにされた。


 六機の巨兵を保有した強力な傭兵旅団”サウスポート“は、一夜にして壊滅したのである。




装甲お嬢様シリーズ第九段。

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