第三話 出会い編 深刻
やっと小説の書き方がわかった。まるやてんに空白を開けるのだ。今まで違和感がやばかった
あらすじ 人を化け物にするウイルス、イロードにより世界は大戦に発展した。
なすすべなく政府は市民を地下都市に避難させ、
核を投下、世界は放射能に包まれた。
それから10年後、地下都市、コンコルドで太陽の日光不足による病者の増加を何とかしたい政府、地下都市のゲートを開くために、政府は特殊部隊を結成するが、成果は得られなかった。
そんな時、地上の監視カメラで少女を捉えることになる。
この少女の出会いを始まりに人類の反撃が始まる。
~~第三話 深刻~~
地下都市 コンコルド 南区 政府 会議室
「 発電所の開拓は失敗した。この状況が続くと病者も年年増えていき、
最悪経済や人々の人格が破綻しますよジャックス大臣。」
「 ああそうだ。このままじゃせっかく立て直した社会に再び恐慌が訪れる。
イロード関係なしに、人の過ちによって。」
入口に観葉植物があり、中央に円形の机と数台の椅子が並んである素朴な会議室。
その会議室では重々しい空気が漂っていた。10人の年配の男。それぞれの役職の議員や財閥が集まり、これまでを振り返り、今後の地下都市の方向性について話していた。
「それを阻止するためにに私は国の大統領を辞任し、ここの南区の代表になり、
自分の持分を使って特殊部隊【ハンターズ】を結成した。結果は散々だがな。」
彼はジャックス・ホード、65歳、コンコルド南区の代表。
ぽっちゃりしており、年季の入ったスーツと白い髭と優しそうな青の瞳が特徴。
片腕の議員は強い口調で口を開く。
「確かにあなたのその行為自体は否定はしない、病者の増加の原因は長年ここの住民が日光を浴びてない。地下都市のゲートを開けるためにあなたはそう動いた。そこは賛同します。」
「うんむ・・」
ジャックスは唇をかみ締める
「しかしそれは失敗の繰り返し。というより始まってもいない。新型の兵器の開発に数多の財閥に手を借りて、多大な費用を使ったにもかかわらず、何度も失敗した。」
財閥の人間が腕時計をいじりながら言った。
「やっぱり、発電所の開拓は無理なのでしょうかね・・」
議員がそう言うとジャックスは立ち上がり、
「なに言っているのだ!確かに犠牲はでたし、多額の金も吹っ飛んだ。
だがこのままでは都市は崩壊するのだぞ。国民の命がかかっているのだ。
それに新型兵器の氷結弾だって一応イロディアンには有効だということが今回でも照明できたではないか。何も無駄ではない・・はずだ。」
そう強く前向きに訴えたが、議会のメンバーはため息をついたり、なまじ呆れてそうな表情をし、
負と失望に沈む空気がジャックスを囲んだ。ジャックスはその空気を払うかのように
顔をそらし、
「くっ!、次の対策をねるぞ。」
と猛威を振るった。
「何としてでも発電所の開拓をしなければ。
このままでは市民の心が・・・。内部では開けないのか。」
「何度も言いますが、内部で開けると市民に必要な電力までも消費するとのデータが。
国民にはこの情報を解禁はしていませんが。」
「当たり前だ!こんなこと晒しみろ、市民は恐怖により混乱しクーデターが起こる。
大戦の二の舞だ!!」
ジャックスは吐き捨てるように言った。
「しかしねえ、ジャックス大臣、発電所の開拓に力を入れるのもいいですけどねぇ、
我々の病院の方にも目を向けて欲しいものです。」
医師会の人が口を開く。
「なんだドリス医師。確かに者は増加しているが、
病院がひっ迫しているわけじゃないだろう。充分病院は機能しているはず。」
「いえ、そういうわけではありません。実はある病気が流行していましてね。」
ドリス医師は眉をひそめる。ジャックスは嫌な予感がし、息を漏らす。
みながなんだ、というようにドリスをじろりと見る。
「鬱病やガンじゃないのか? それとも治療の資金に悲鳴が上がっているのか? 」
「いえ、違いますね。」
医師会は背筋を伸ばし、メガネを上げた。
「まあ、ガンといえばそうなんですけど、そのガンの症状に違和感があるんですよ。」
「なんだ?」
「実は、患者の体に植物のようなものが生えていましてね。この写真を見てください。」
「えっ?」
医師会は構わずタブレットを開き、議員たちに見えるように置いた。
タブレットに載っている写真をみて、
「なんだ、これは!?」
と一同は困惑する。
そこには一人の寝たきりの状態の年配の患者の写真だった。しかし、それは明らかに普通ではなかった。
体の半分ほどが緑がっかており腕には黄色い汁が染み付いた包帯が巻かれている。心臓には応急処置の為に数本のチューブがつけられているが、
そこからチューブに絡みつくように体からつたらしきものが湧くように出ているのだ。
よく見ると足や腕の所にもつたらしきものが短く生えている。
ジャックスはそのおぞましい光景に悪寒で震え、絶句する。
「なんだこれは!?」
それぞれの地区の議員、財閥のボスも医師会に声を上げる。
ガヤガヤとみながこの写真をみて混乱する。
そんな中、ジャックスは皆を静止させる。
「みんな落ち着くのだ。声を荒げても仕方がない。」
「しかしジャックス大臣。これは問題ですよ。財閥の私も知らない。」
「ああ、そうだな。ドリス医師、この写真は本当かね?」
「作用です。この写真は我々の付属病院の患者の写真です。」
ドリス医師はメガネを上げ、簡素に零着に答えた。
「しかし、症状はこれだけではございません。他の病気の患者にも似たような症状が出ております。」
ドリスはタブレットを滑らすようにスクロールする。次は寝たきりの30代くらいの女性の患者が写っていた。表情は今でも死にそう
なくらい目の焦点が合ってない。
身体の三分の一ほどが橙色に染まっており、点滴を固定するためにつけている包帯には血が染み付いている。
目に見えておかしいのは腕の様子だ、前腕はまるで冷えた溶岩のように黒くごつごつとしている。黒くなった前腕には
小さくひびが入っておりその中からは、橙色の光が漏れていた。
その様子はまるで火山に流れる溶岩のようだ。
次の男性の患者は昆虫のような甲殻っぽいものがいたるところから出ていた。その様子は、人間を寄生しようと体を這う虫だ。
男性はベットに横たわりながら苦痛の表情浮かべる。
そんな写真を何枚も舐めるようにスクロールした。水色の体の患者、血栓が膨れ上がった患者。
「これが、今現在密かに増加している病気です。」
ドリスはタブレットをオフにした。みなは絶句し、会議室にはのしかかるような重さ雰囲気と
静寂に包まれる。
「マジかよ・・」
バーディーが静寂に耐えれなかったのか、声を漏らす。
「ああ・・」
ジャックスは頭を抱える。
「ドリス医師。この病気はなんだね? なんの類なんだ。」
「はい、先ほどもおっしゃいましたがこれはガンの類だと思います。理由は体をどんどん蝕む様子がガンのやり方と
非常に酷似しているからです。」
ジャックスはぎろりと顔をあげた。
「それで、いつ頃からこの病気が出たのかね。」
「ええ、ここの所最近ですね。3年前ほどでしょうか。
しかし、3年前まではガンの治療薬を使用すればこの症状は治まっていましたので、そこまでのものではないと軽視していました。」
メガネをあげるドリスを見て、バーディーは腕をくみ、口を開く。
「もう従来の治療薬ではダメなのか?。」
「ええ、効かなくなっていますね。我々も模索して懸命に治療はしていますが、有効な手段はまだ見つかりませんね。」
ドリスは息を漏らし白衣を肩をあげて着直す。
「原因もわからないのか?」
「作用です。」
ジャックスはさらに課題がまし、より苦い表情になった。
「・・コンコルドのゲートを今すぐ、は開けられないよな。前にこのコンコルドの構造を見たが、ゲートを開くにはここのコンコルドの膨大な電力を消費してしまう。」
「ええ、そうすれば街中の温度管理する電力を失い、冷たい氷河期が訪れ、国民は全員凍死します。地下は冷えますから。前に見せたシュミレーションでもうお分かりでしょう。」
「だな。」
ジャックスがかつての集会でみたシュミレーション映像。
コンコルドの全体を模した立体映像。ドーム状のコンコルドの映像には電力の数値と温度が載っていた。コンコルドの熱は正常な温度のオレンジで、その熱が地下都市を覆って国民の暮らしを守っている。
しかし、これに上の地上のゲートを開いた場合の電力と熱の変化というと、
電力は著しく急激にさがり、地下都市を囲んでいる色温度も一気にオレンジから濃い青色に変化した。
その映像を思い出したジャックスは頭を抱えた。
「まだ地上にも出れないよな?」
「ええ当然。ハンターズを結成させたあなたが一番よく知っているはずです。
まだイロディアンはうろついていますし、何より核爆発の影響で放射能が散らばっています。南区地上はまだ控えめですが、それでも一か月以上滞在は危険ですね。」
「イロディアンか・・全く。課題が山積みだな。」
ジャックスは椅子に背中を寄せ、上を向いた。
それから二時間ほど会議は続いた。ようやく話がまとまり、ジャックスは誰もいないこじんまりした休憩所で自動販売機に向かった。
くたびれた様子で小銭を入れ、お茶を取り出すと同時に心の声を漏らす。
「どうなるんだろうな我々の国は・・」
やるせない気持ちでソファに腰を降ろし、一息つく。
発電所の開拓に、イロディアン、謎の疫病、予算。色んな課題がジャックスの頭によぎる。発電所のために氷結弾を完成させた、多大
な費用を使った。でもそれだけでは無理だ。悔しく滲む思いが缶を潰す動作に出る、
ジャックスは少し潰した所で気付き、手をゆるます。
「何か、発電所を開拓出来る決定打があればな、希望を失っては駄目だ。」
そう自分に言い聞かせ、ジャックスは缶を開けた。
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荒廃 建物の屋上
不気味な鳴き声鋭く橙色に光る眼光、緑で巨体な肉体。怪物が私の前に立ちふさがり、
唸り声をあげている。
月が曇から覗き、ちらつく月光が怪物を鮮明に照らす。
こんな怪物相手に・・・不安がよぎる、恐怖で一歩さがる、でも構えは絶対に崩さない、絶対に。私は戦う・・
腕を五本の触手に変形させた
怪物が飛びかかった。巨体が迫る、横に突っ走って、かわした。体制を整え、距離をとり、素早く構え
触手一本にまとめて、鋭く怪物に向け、伸ばした。とんでもない速さで、怪物の肩に命中した。
「よし・・・」
怪物は明らかにひるんでいる。
ダメージを与えた。戦えてる、いける!
しかし、怪物は触手を力強く掴み、触手を引っこ抜いた、く・・手が引っ込まない。
腕が抑えられて変形出来ない。
雄たけびをあけび、触手ごと横に
投げた、そのまま私の体も引っ張られ、飛ばされた。背中に柵があたり、体に衝撃がはしり、倒れ込んだ
・・・視界が・・一瞬真っ白になったが、何とか戻った。体が痛い、それでも倒れた体を起き上がらせる。
よたつきながらムチだった左腕を戻し、首にぶら下げてたライトを右手に持つ
怪物がこちらに走ってきた。いけるか? 目前で、ライトをつけた。眩い閃光で怪物は目を抑え、ひるんだ。
「今だ!!」
チャンスは一回。
仰向けで構え
気力を振り絞り、左腕を怪物の首に向け、一点集中に変形させ、素早く伸ばした、首に命中し
血が舞い、怪物の顔が地面に落ちる。
やった、と思った束の間、怪物の体が歩き出した
ピタピタ・・・・・ピタ
「何で、首は切り落としたのに・・・・・」
首なしなまま、じわじわとこっちに迫る。息を殺し、私は立って後退り、構える。
何で、歩くの?その強靭な生命力に怯む。しかし、怪物は6歩ほど進んだ後、ばたりと倒れた。
少し進み起きないか確認する。触手で体をつついたが反応はない。私の体の力が一気に抜けた、端っこまで伸びた腕を戻す。
「ぷはぁ・・・はぁ・・はぁ・・・」
殺した息をいっぱい吸い込む。
「やった・・・」
地面に膝をつきつぶやいた。ライトを消す。
か・・勝てた。
隣の大きい建物を見る。のんびりしている場合じゃない。
一刻も早く、ここから離れないと・・・
息を整えて私は立ち上がり、建物の柵に向けて、上に構える。
その時、したから二つのガラスの割れた音がした、
ピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタピタ
右から怪物が登ってきた、左にも、左右からあいつが、
私は急いで、素早く伸ばした、柵に絡ませ、ジャンプした。
怪物が飛びかかったが、ギリギリかわせた、建物の壁に当たり、痺れるような衝撃がはしる。
「ッぐ!」
痛さをこらえ、上を見上げ、体制を直して触手を上に戻しつつ壁を登る。
後ろから2体の怪物がこっちにジャンプした。
壁を蹴り、横にかわす。怪物は壁に当たり、雄叫びをあげながら下に落ちた。
今のうちに・・建物の屋上に登り、走る、そしてまた別の建物に移り、走る、あの怪物が来ないうちに・・・
いけるところまで行こう。私、この少女・・プラント07が一体何なのか、見つけるんだ・・・・
・・・あれからどれくらい、走っただろう。はぁ・・・・はぁ・・・・ 息が乱れる。
何度も建物に左腕を絡めさせ、その度につかまり、走った。何度も屋上を、瓦の上を、この先になにがあるのかわからないのに・・
左腕を建物に絡める・・・なるべく高い所に・・・飛び移り、壁に当たるが、体をねじり、上手く受け流した。これもだいぶ、出来る
ようになった。
屋上まで登り、腕を元に戻す。あの怪物は追って来てる気配はない。
一応周りを確認し、膝をつき休んだ。息は乱れ、額から汗がぼたぼたと垂れる、風が吹き、熱した体が冷える・・
「私、何やってんだろう」
ふとそんなことを思った。あれからかなりの距離まで、つたっていったのに、人はいない。地下都市に続く山も暗くて見えなくなった。
この荒廃した世界で、たった一人、わけもわからず、走っている。そんな自分に虚しさを感じた。
自分の着てる服を見た。白いパーカーは血で汚れていた。左腕の裾は何度も変形したから、ボロ雑巾のようになっていた。
私は気に入らないので、引きちぎり、無理やり半袖にした。それでもボロボロだけど。
月明かりが凄い、上を見上げた、満月が天高く光っている。とても綺麗な月・・・
今までひどい目にあってきたから、尚更綺麗に見える・・・・
すると、疲れてきたのか、眠気が襲ってきた、目をこすった。
まずいかな、周りは暗い、だからといってライトもつけるわけにいかない。
目は効かないのでつむり耳を済ます。建物からの風切りのおと、砂が風で去る音。
あいつの気持ち悪い音はしない。眠気に耐えられず肩を落とし、砂だらけの地面横たわる。
「もう、ここで寝よう・・」
月が雲に隠れて、先がよく見えないし、あの怪物が来る気配もない、そのまま横たわり、気絶するように寝てしまった。
生暖かい風が私を包み込む・・・・・・
・・・・・・・私は、一体何なんだろう?、そう思うと同時に景色が思い浮かぶ、
私の目の前には巨大な大樹がそびえったっていた。周りは広い草原、白い花にチューリップ、色々な花が咲いている。
まるで天国のような景色。私は魂が抜けてるというくらい何も考えてない、ただ、草原に心を飲み込まれている。
大樹は巨大な柱を成し、天を貫きそうなくらいでかい。
大きい枝の隙間からは太陽の光が入り、緑を輝かしている。光を追うと誰か立っているのに気づいた。
白いワンピースの大人の女性がいた。
黒髪が風でなびいている。麦わら帽子をかぶっており顔はよく見えない。
女性は何か呟いた。
「・・ね・・い・・みんなと・・・」
同時に大人びた声が私の脳内に響く。なに言っているかわからないが、どこか悲しそうな声だった。
大きな風がなびき、木の葉が舞い上がり私の視界を埋めた。
「はっ!!」
視界に眩しい光が入る・・目をこすると、夜が明け曇り空になっていた。。
「夢・・」
体を起こす。
体をまさぐるが特に襲われた感じはしない。
コンクリートの上で寝たから少し腰が痛いぐらい。
「何も起きなかったのね・・」
私は起き上がり、夢のことを考えた。
記憶を思い出す度私が何なのか、わからない。
そう思いつつ、前方を見た、夜が明けたので、周りが見やすい、
「山・・」
町の奥に大きな裏山がある。距離的に昨日の時点でつきそうだが、
なんか、遠くなっている。私はポケットからコンパスをみる。方角は南を指している。
遠回りしていた。南西に行くつもりが、暗くて方向感覚が狂ったんだろう。
「行こう。」
私は立ち上がり前に進むと、地上でいくつか人影が見えた。 あの怪物?、
私は咄嗟にふせ、かがんだ。
下に一体の何かが視線に入った。
ひっそりと確かめる、そこには、怪物がよたよたと歩いていた
でも、昨日戦った怪物ほど体はでかくなく、ほっそりしている。
爪もとがってはいるがでかくはないし、動きもぎこちない、でも人間ではない。あれは・・
周りに何体かいる。念のため建物の上を辿って正解だった。・・
下の奴が通りすぎるのを、待ち、気づかれないように、腕を変形させ、前の建物の柵に絡ませる。静かに飛んだが、壁で受け流す時に
背中が、管にあたり、ゴンっと音が。
「うっ!、しまった・・」
動揺して、地面に落下した。尻餅をつき、怯む。服がずれ落ちる。
通り過ぎた怪物が振り向いた。まわりの奴も振り向いて、
まずい、やられる・・急いで構えたが、怪物の動きがのろかった。ぎこちなく、まるで、ゾンビみたいによたよたと迫る。
私は立ち、食い込んだスカートを直しつつ、腕を柵に絡ませ、登った。
「助かった。」
昨日のような獣のように迫る奴はいない。
下の奴を見る。3匹が建物の壁をじりじりと登る
急いで走った。昨日の奴以外もいるのね・・・
私は他の建物に移る。
下にちらほら怪物はいるが、動きが遅いので通り行け、構わずどんどん移動する。
彼方の巨大な山に向かう、、、
さっきの奴は遅くて助かったけどもし、昨日と今日のほかにいるとしたら、私は戦えるのかしら・・
建物・・町を突破し、山が広がってきた。中の森の先は薄暗い、でも、この先に人がいる。そう書いてあった。
山の中にあいつらがいるかもしれない、でも私は・・
拳を握り、意を決し、獣道を上る。
そう動いた刹那、何か、鬱蒼とした森の奥で一瞬光った気がした。私は敵と思い半歩下がり、左腕を前に出し身構える。
しかし、それ以上の事はなかった。
私は地図を取り出し、場所を確認しつつ薄暗い森の奥に進む。
ー地下都市コンコルド、ハンターズ本部、監視室ー
大きいモニターに地上と地下都市に設置している監視カメラの映像が映っている。いくつものパソコンが置いてある席。
白い明かりの室内。
その前方で、モニターを二人の男が座りながら監視していた。
「ほわぁぁ、眠い。もう八時間ですよ。毎度のことこれはきついですね。」
あくびしている部下。
監視員のスプリッドは雪だるまのように太ったお腹を叩き、
ポテトチップスを食いながら話す。部屋から食欲をそそる咀嚼音が鳴り出す。
「本当だな。まぁまぁこれで給料出るから安いもんだろ。ほれ、食うか?。うまいぞ。」
スプリッドはドヤっとした顔でポテチの袋を差し出す。
「いいですか。いただきます。僕はコンソメより塩派ですけど。」
「わがままいうんじゃねぇ。ふぁぁぁ・・俺も眠くなってきた。」
スプリッドは細い目をこすり、肥えたお腹を叩く。部下は欠伸しつつ眠気ざましにスプリッドに気さくに話しかける。
「しかし、いくつか地上のカメラ、うつっていますよね。これは何のためですか。」
部下は地上の森が映っているモニターに指をさす。
「ああ・・地上のカメラか、ここに避難する時に遭難者が出た場合確認出来るようにするためだ。避難したトンネルの周りは山だらけだかな。」
「へえ~。」
「お前はまだバイトで入ったばかりだから知らなかったか。」
「ええ。」
ポテトチップスがなくなり、大きな口で上に向け、残りかすをほおばった。
「んんんうめ。
まぁ、その時の名残で今もついているのさ。万が一遭難者が出てくるかもしれないからな。」
「なるほどですね。」
「ま。地上は核に包まれて人なんているわけないけどな。」
「そりゃそうですね。あっはっはっはっは」
二人は大笑いしたその時、森の監視カメラからピッと赤外線に切り替わった音がした。
「なんだ。」
二人は反応し、モニターをみる。
「これは・・嘘だろ?」
二人は未知の怪物を見たかのように口を開け、絶句する。
森の中に白いパーカーの少女が入って行くのが、見えた。
スプリッドは驚き持ってたポテチの袋を落とした。人間がいるなんて・・
「マジかよ。地上に人が。あわわわスプリッドさんどうします?」
部下もモニターとスプリッドを交互に見るほど動揺する。
「こんなことが起こるなんて・・・」
スプリッドは髪をかきあげる。少女は森の中に入り、別のカメラにうつり変わる。
「・・しばらく様子をみよう。生存者というのは外じゃ考えにくい。
もしかしたら、新種のイロディアンかもしれん。」
涼しくいったが、内心初めてのことで、動揺している。
「わかりました。まさか地上に人間がいるなんて、今日はとんでもない日ですね。」
スプリッドの肩が竦む、ポテチの袋を拾い、ゴミ箱に向かう。
「ああ、全くだ・・だが、森の中はイロディアンの巣だぞ。」
もし、彼女が人でもイロディアンでも、ここで終わりだ、顔が敷かむ・・
今まで、どう生きてきたかしらんが、せめて彼女の最後を俺たちが見届けて・・
いや、どうする。悩んだ。
体がムズムズする。こんな選択でいいのか?
生存者だったら見捨てることになるぞ、しばらくうつむき考え、一本の通信をした。
「おい、ブレス今どこだ?至急ハンターズを要請したい。」
ーーー地上 名もなき少女 山の中ーーーー
私は山に入った。獣道を歩く。木が空の光を覆いかぶさって薄暗い。
森の中は、所々焼けていた跡があり、鉄製の残骸が落ちている、錆びた銃に、何かが爆発したような破片、さらに
どこの部位かわからないが、頭蓋骨が落ちていた。
「まさか・・人の・・」
いや、そんなことは、でもあの怪物とここで戦ったというなら納得できる。木に弾丸が食い込んだ後もあって・・
少し歩いた先に、水たまりがあった,水が透けている、隅っこに水たまりで育ったであろう花が、元気よく咲いている。
私は、水を手ですくい飲み込んだ。冷たい水が乾いた体を癒やす。
「美味しい・・」
服の汚れを水で落とし、手を洗っていると、奥から木が揺れた音がした。何か重く飛び移った音が。
「はっ・・」
咄嗟に振り向き、左腕を前に構える、奥の木から葉がひらひらと落ちる。
ゆっくり近づく、逃げるという選択も頭によぎり後退ったが、この先人がいるとは限らないし、もし奴だったら、後ろを向けること
になる。今ここで戦う・・
腕を変形させる、いつでも貫けるように、3本の鋭利な触手を蜘蛛の足のように広げる。
葉が落ちたとこまで行く、上を見る、木が光を遮断し、影でよく見えない。
恐る恐る首にかけてあるライトをつけようとしたその時、
横の木の上から怪物が赤い眼光を、私にとびがかってきた、
「うっ!!」
吐きそうな衝撃が走り私の体は勢いよく地面に倒れる。虚ろに振り向くと、怪物が
体にのり、唸り声をあげながら、爪を振りかざした。急いで体をねじりよける。鋭利な歯をだし、食らいかかる。辛うじ
てかわし、変形し触手を怪物に向けて伸ばした。触手は怪物を超え、木の上をさす。怪物は浮き、触手の勢いで、横に転がる。
私は立ち上がり、怪物を見る。
怪物の顔をえぐり、青い脳汁がぼとぼと落ちていく。
体が木の模様そっくりで今でも森の背景に溶け込んでいる、顔はトカゲみたい、擬態もするのこいつは!?・・
後ろから各所で
ヒャアアア・・ ヒャアアア ヒャアアア・・
と不気味なうめき声が聞こえた。後ろを向く、木から聞こえいくつもの怪物の赤い鋭い眼が光った、
「まさかこんなに!!」
まずい。逃げないと。
前を振り向いたその時、顔をえぐった怪物が目の前に・・爪を振りかざした。両手で防ぐが、なすすべなく体が吹っ飛び、地面に
転がる。
「うっ・・ううっ・・」
体が泥まみれ、両手が痛い、痛い。腕は爪痕の形でえぐられ・・出血し、地面に染みこむ。
立たないと・・
フラフラと立ち上がった。怪物はうなり声をあげて、じりじりとせまる。
足がよろけ、後ろの傾斜に倒れた
「あっ・・」
体が転がり、下の水たまりに勢い良く落ちた。
うあっっっあああああ、・・・・はぁはぁはぁ
両手が水で染みる、痛い。痛い。あまりの痛さにしかめて涙が垂れる。。
うっ・・・うっっ・・・うっ
泣いてる場合じゃない、逃げないと、
よろけながら、前に進むと、一体の怪物が木から落ち、。
ばしゃあああああああああああん
と着地の轟音と共に、水しぶきが舞った。
くっ・・しつこいっっ
こっちに来る。痛みをこらえて、歯を目一杯食いしばり、腕を伸ばす。
「いいいい、、っくぅ」
あ、、、、、、うっつっ
伸ばすと同時に傷が広がる、激痛が直感した。
痛みに耐え切れず、怪物の前で落ちる。
触手を切り裂こうと、怪物が振りかざした。急いで腕を、戻し、怪物の攻撃が空振る。
その振動でまたもえぐるような痛みが・・・。
うあ・・・あっ・・痛いっっ。うっ、っく、、、両腕を抑え、しかめた。
後ろからも怪物がいくつも降りてきた。水に浸かり、ピタピタと迫る。右からも、左からも
私は、腕を伸ばそうとするが、痛い、力が出ず、肩が抜けた。
「っく、くそっっ。」
完全に囲まれたっ・・もう・・駄目なの。あきらめかけたその時。
「お嬢さん。伏せろっ 」
えっ男の大きい声がした。どこからっ・・。
「ふせろおおおっ!!」
男の人の大声。なにかわからず、体を伏せ頭を手でふさぐ、その瞬間前方の怪物の後ろから白く閃光し凄まじい銃声がなった。
怪物は何発も銃をくらい、倒れた。そして周りの怪物も血しぶきをあげ針の巣になり、
超音波みたいな叫び声と共に、次々と倒れた。赤に染まった水の波紋が次々と体に当たる・・
銃声が収まり顔をあげると、そこには、黒い防弾服にマシンガンとを装備した・・・・人が・・・いた。4人・・・
・・・っ・・・本当に・・人が・・・・いる。
あいた口が塞がらない。駆け寄り、私の前でかがんだ。
「大丈夫か ?」
さっき伏せろって言った声の人・・・
「え? ・・ええっ」
胸の紋章が目に入る。トカゲの顔に爪を引き裂いたようなマークが。
すると男は耳についてるインカムを押した。
「こちら、目標の少女と出会う事ができた。撤退する。」
ーーー第四話に続くーーーー