ワンマンアーミーⅡ
「……他人と協力し合って、良い事なんか無ぇからだ」
零がそう言った瞬間、玲奈は目を見開いて言葉を失っていた。玲奈の瞳に映っている零の瞳は、龍眼となっているように見える。まるで龍と同じ眼光に見えて、その姿は異様な影を纏っている。
「……これが、俺なのか」
「霧原、くん?」
「いや、なんでもない。俺の中の龍がまた暴れたらしいな。閣下に迷惑掛けちまったな」
零はそう言いながら、自分の手の平を眺めて目を細める。目を細めている零の表情には、何処か寂しげで後悔のような物が見え隠れしているようだ。そう感じた玲奈は、何処かに行こうとする零の腕を掴み取った。
「ま、待って!」
「離せ。俺に近付けば、近くに居る奴を傷付ける可能性がある」
「だからいつも、あんな高圧的な態度を取ってるの?」
「勘違いしてんじゃねぇ。俺は思ってる事を行動してるだけだ」
零は玲奈を睨み付けて、そう言った。だがしかし、玲奈は零の睨みを物ともせずに見つめ返す。そして肩を引き寄せて、思い切り玲奈は零の頬を殴った。
「っ……!?」
「霧原くんは、そんな事しても何の得にもならないじゃん!!霧原くんが一人で飛び出して、もし一人で死んだらあーしは嫌だよっ?」
「……」
「閣下が死ぬのも嫌だし、楠木副官が死ぬのも嫌だ!!あーしだって、もう誰かが死ぬ所なんて見たくないのっ!!迷惑掛けたと思うなら、それ以上に龍を倒して!霧原くん一人じゃなく、みんなで!!」
「……そんなのは綺麗事だろうが。俺が前衛に出て、お前らが後衛の方が良いだろうがっ!!」
零は玲奈の胸倉を掴み上げ、奥歯を噛みながら声を荒げた。零はこのまま玲奈の事を殴ろうとしたのだが、すぐにその腕を止めて零は目を見開いた。何故なら、玲奈は身体を震わせて目を強く瞑っていた。
それは恐怖を覚えている者の取る行動であり、強者が弱者へ怯える行動と言える行動である。それを見た零は、昔の記憶に残っている妹の怯える姿を思い出した。そしてその記憶は自分が感じた恐怖へと変わり、目の前に龍が現れた事を思い出した。
「っ……チッ、任務以外で俺の前に現れるな。その顔は見たくねぇ」
「…………」
零は玲奈を解放し、吐き捨てるように言った瞬間に身を翻した。その様子を見た玲奈は、遠くなっていく零の姿を見届けるのだった。何も言えず、手を伸ばす事も出来ず、玲奈は一人取り残されるのであった。
ただ一人で行動をした零は、施設外へと出て夜空を見上げる。
「日本海域、だったな……」




