プロローグ
誤字脱字修正します。投稿不定期です。
幼くして前世を思い出した私はこの世界に目を剥く。
私はまだ生まれて幼い。体力がなく大人の彼等に守ってもらう存在だ。そして、決して人間には見つかってはならない。
私達種族は絶滅の危機に頻しているから――
―――私は餓狼と呼ばれる種族だ
餓狼族はその名の通り、狼だが…そこらの狼とはワケが違う。魔力を持ち、人へ変化できる。そして、変化した姿は皆美しく…若い。
大人になろうとも変化した姿は歳以上に幼いのだ。
私の親も然り餓狼の姿は大きく逞しくとも変化した姿は幼い、皆大きくても20歳位にしか見えない。しかしそれで力が薄れるわけではない。変化したとしても元の筋力は変わらず、大きな木などへし折れる。走る速度も早く、聴覚・視覚・嗅覚も良い。人間の様に考え、感情があり知性がある。そして…長寿なのだ。
昔、餓狼族はルネスチアと言う国で飼われ重宝されていた。主に戦争の戦力として。
筋力・知性・聴覚・視覚・嗅覚が優れ僅かな魔法が使える長寿の餓狼は捕らえられ人間たちの手によって次々と数を減らし、逃げ延びた餓狼族は人間の踏み込まない深い深い森の中へ身を隠し今の状態になった。餓狼は地上の支配者だ。それでも基本的素直で信じやすい種族で人間の罠にかかり奴隷の首輪を着けられ、従った。
戦争は終わり国で保護されている餓狼族はもう数頭しか居ないらしい。人間はその数頭しか餓狼族はもう居ないと思っているが、逃げ延びた餓狼族は深い森の中で静かに生きていたのだ。餓狼族の長老になるともう、3000年は生きている。
今では、何とか繁殖し餓狼族は2000人程居る。餓狼族は繁殖が難しいのだ。
そして、そんな中私は生まれた。
私は今年で11歳になる。私の父と母はもう300歳ほどになる。長寿と呼ばれるほど、餓狼族は長く生き生命力が高い。そのため頭か心臓が吹き飛ばないと死なないことが多い。
もう、本当に化け物だ…。何故そんな種族に私は転生したのだろうか…私は前世人間だった。
けれど病で10歳から入院し13歳で死んだ。原因は不明。ただただ動くことができず本とテレビを見る日々が続き衰弱し死んだのだ。呆気なかった、まだ生きたい、死にたくないと涙を流し願ったら転生したのだ。
5歳で自覚し、何故転生したのかと毎日考えた。前世人間だった私がここで何が出来るだろうかと。前世が人間だったけれど、生まれつき体が弱かった私は喘息も有り走ることもできず友達もいなかった。
ただ、病気になって親に迷惑をかけた。13年と言う短い生涯ベッドで暮す日々、それが餓狼族に転生して強い体を手にした………これは、神様からのプレゼントなのか…。
頭か心臓が無くならないと死なない、病気にもならない、運動ができ友達もできた。これ程の幸せがあるだろうか。
綺麗なな空が歪む…頬には温かいものが伝った。
「鈴…泣いてるの?」
視界が暗くなり、涙を拭うと心配そうな顔が、私を見つめていた。
「ううん…」
彼の耳はペタリとして私を心配そうにしている。
起き上がり、深呼吸をする。
彼の方を見ると澄んだ青い瞳が私を見つめている。
彼は私の幼馴染の木ノ葉。同じ年に生まれ、姉弟のように育った。
餓狼族には細かくすると三種いる。
南で暮らしていた餓狼
北で暮らしていた餓狼
人間との間に生まれた餓狼
暮らすところの違う餓狼は種族の危機で合併し同じ森へ移り住んだのだった。住む場所が違うだけでも見た目が少し違う。
南で暮らしていた餓狼は黒く、尻尾が細長く耳が鋭く尖っている。
北で暮らしていた餓狼は白く、尻尾のげが多く耳が大きい。
そして……人間との間に生まれた餓狼は人間の遺伝も受け継ぎ違う色をしている。
私の親はどちらも北の餓狼だ。
肌が白く、髪は銀色をしている。瞳の色は赤色だ。
どの餓狼も瞳の色は茶色か金色なのだが、私は変種なのか、北の餓狼にしては肌が白すぎる。理由を聞いても誰も教えてくれない。長老様は「そういう事もあるさ…」そう言ってくれたので気にすることをやめた。
けれど、木ノ葉は人間との間に生まれた餓狼だ。南の餓狼と人間の子供。長く愛玩用に買われていた木ノ葉の母親は身籠り決死の思いで逃げ出しこの森へ来た。
けれど、心を壊していた木ノ葉の母親は産み落とし名を付けると亡くなった。精神的に壊れ死ぬ餓狼もいるのだ。仲間思いの餓狼族が減った理由は戦争で仲間を失い精神を壊し亡くなったからだ。
その為、木ノ葉の瞳は澄んだ青い色をしている。
恨めしい人間との子供だからと、疎ましく思われ肩身の狭い思いをしていた木ノ葉を引き取ったのだ。なので、正しく言うと私の義理の弟。
人間との間に生まれた餓狼は変化も上手い傾向がある。木ノ葉もそうだが、変化の下手な私の真似をして耳と尻尾を出している。
木ノ葉は私に懐いて良く後ろを付いてくる。前世ひとりっ子で友達のいなかった私は嬉しく思う。
今日も木ノ葉は私に付いてきて、私のお気に入りの野原にいた。私はよく考え事をしたくなるとこの野原に来る。寝転び空を見ると落ち着くのだ。
「鈴…そろそろ帰ろう、日が沈むよ」
男の子にしては可愛らしい木ノ葉が大きな瞳に私を映す。さっき私が涙を流したことを気にしているようだが追求してこない。そんな木ノ葉の事が大好きだ。
「うん!」
餓狼特有の愛情表現で、木ノ葉の頬を舐めると顔を真っ赤にして慌てている。ふふ、可愛い。
手をつなぎ、家へと走って帰った。
読んでいただきありがとうございます