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女性指揮官の独白

作者: 火具土楽文

 今から三○年ほど前、その科学者は突如としてこの街に現れました。彼はボロボロの白衣を纏い、汚れた身なりをしていました。しかし、彼の持っていた書類だけは綺麗な状態だったのです。現れた彼は辺りを見回していました。そんな彼を、私たちは警戒し様子を伺っていました。彼は私たちと同じ言語を話しますが、身なりはこの世界ではない、もっと文明の遅れた異世界のものだったのです。私たちは意を決して、彼にコンタクトを試みました。成功でした。彼はとても知的で冷静で、状況を理解し、私たちに着いていくことを決めました。私たちは彼を預かる事になったのです。

 彼はとても真面目で、物事に真っ直ぐに進んでいく科学者でした。私たちは、彼の遅れながらも新しい柔軟な発想を、最初は喜んで受け入れました。そして、私たちは彼に専用の研究室を与えました。私たちと彼は手を取り合い、友好関係を築いていきました。

 そして彼は、とても大きな発明をしたのです。この世界の未だ解明されない未知のエネルギーを使い、強大な力を得ることの出来る機械を作り上げました。私たちは大いに喜びました。しかし、同時に彼に恐怖しました。彼を失えば、私たちは大きな損害が出るのは免れません。なぜならば、彼は研究途中の設計図や理論は決して他人に明かさない人物だったからです。私たちは、彼に情報の提供を要求しました。彼は拒否しました。彼はとても頑固だったと言えるでしょう。彼は決して他人に情報を公開することはありませんでした。その態度を崩さない彼に、国は怒りを見せました。権力を使い、彼を脅したのです。彼はそれでも靡く事はありませんでした。国はますます怒りを露にさせていきました。

 ある時、彼の研究室に空き巣が入りました。それは国からの刺客でした。彼の研究室は荒され、書類は踏み散らかされ、工具には壊されたものもありました。しかし、何も取られる事無く、事件は国によってもみ消されました。大事な書類は、全て彼が肌身離さず持っていたからです。彼は怒りました。事件から二日後のことです。彼は突如として姿を消しました。国は、彼を隅々まで探しましたが、とうとう彼を見つけることは出来ませんでした。彼は現れるときも、消える時も突然なために、私たちの中では妖精だったのではないか、と噂も流れています。

 そうして今から二年ほど前、彼の機械が発見されました。森の中で、偶然小屋を発見し、機械を見つけたのです。彼の機械は、五つ発見されました。しかし、彼はどこにも姿がありませんでした。異世界に帰ったのか、この世界で生きているのか眠いっているのか、それはどうにも分からないことです。また、機械の設計図も発見されませんでした。彼は誰にも分からないように、隠してしまったのでしょう。

 機械を見つけた国は、それを解明するために全力を出しました。しかし、殆ど解明されませんでした。彼が使っていたのは、異世界の技術だったのです。異世界の技術を理解するには、私たちは早かったのかも知れません。そんな中、一つだけ分かった事実がありました。その機械は、異世界人にしか使えないように設計されていたのです。機械の中には、彼の遺伝子が組み込まれていたのです。その遺伝子を、私たちの遺伝子に書き換えようとしましたが、それらは全て失敗に終わりました。失敗の内、一度大きく間違いを犯してしまい、一つが爆発してしまいました。それは国にとってとても痛手となることでした。国は、遺伝子の書き換えを行うことを禁止しました。それ以外に、方法は無かったのです。

 国は、その機械を巨大搭乗兵器へ組み込みました。国の真意を、私たちは当時知る由もありません。そして作られたのがグルスダルス‐ギガーズだったのです。グルスダルス‐ギガーズに足りないものは、後は異世界人だけでした。私たちは、異世界人以外でも操縦出来ないかと試みましたが、やはりそれは失敗に終わりました。そして、国は異世界人を召喚する手段を模索し始めました。この頃は、異世界への通信手段や移動方法が各地で研究されており、召喚する手段を開発するのはスムーズに行われました。異世界人を召喚する準備が整ったのは、軌道衛星上に奴らが現れてからです。そこで、大急ぎで召喚を行いました。以前、彼が現れた際の位置情報を利用し、見事二人の少年を召喚することに成功しました。この試みは、彼がまだ私たちの元に居たときに「この世界は地球と酷似している」と発言したことにより試されたものです。

 私が知り得る情報は以上の通りです。これ以上は私には知らされていません。どうして奴らがこの世界を襲うのか、国は未だ隠したままなのです。

 私は異世界人の近くで仕事をしています。ゆえに、心が痛いのです。まだ子供である少年達に、異世界の事情を無理に押し付けるばかりなのがとても辛いのです。出来ることなら、少年達に真実を教えてあげたい。戦いに行かないように、そして元の世界へ戻してあげたい。私にはそれが出来ないのです。無力な私は自身が情けなくて仕方ありません。

 神よ、主よ、私達にお慈悲を。少年達にお慈悲を。どうか少年達をお救い下さい。主よ、どうか少年達をお導きください。アーメン。

多分一年以内に本編投稿します。

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