仮定の未来 トノ
「おにーちゃん。ネコさんお耳ギザギザだね」
「子音、アレは桜ネコって言ってヒニンキョセイ済みですよ。って目印だよ」
「ヒニンキョセイってなぁに?」
「えっとネコさんやワンちゃんが増えすぎると困るから。赤ちゃんが増えないように手術するんだ」
「増えると困るの? かわいいのに」
「敬信くん、子音ちゃん!」
「乙見ちゃん、双見ちゃん、ごめんね」
妹の軌道修正するつもりが逆に引き込まれて集団登校の列に遅れを出した。
子音は気に留めたフシもなく、同じ年の双子のそばへネコさん見たと報告に行っている。
子音は双子が羨ましいらしくて、パパとママに「ねねも双子がよかった」ってよくムチャを言っている。
そして、子音が小学校に入ってから、明らかにごめんなさいの数が増えている。ちょっと気が重い。
「ねねはねーパパとおんなじおしごとするのー」
アレは口グセ。
パパもママも大きくなったら好きなものになりなさいって言ってくれる。
ただ、おばあちゃんとおじいちゃんは『敬信さんはお医者様になるの』と言ってくる。
それは別にいいんだけど、好きにしなさいって言うパパとおじいちゃんの空気が微妙なものに変わる。
うつうつした気分で子音の様子を見守りながらの登校。学校では少し開放感。
子音は一年生だから。
「おはよー高原ツインズ!」
廊下で元気よく僕の背中を叩いて、乙見ちゃん双見ちゃんに挨拶するのは山辺咲耶。
うちのクリニックのお得意様の一軒だ。
お父さんは『悪の怪人』だとか、お母さんは『悪のブレーン』だとかじょーだんをよく言ってる。
じゃあ、旧水族館が秘密基地かって突っ込めば、澄ましてその通りあそこは出張所なのと返ってくるノリの良さだ。
「咲耶ちゃん、なんで僕を叩くの?」
「高原ツインズは女の子でトノは男の子だからよ?」
何を聞くの? って表情で言い放つ。
ちなみに咲耶ちゃん、水族館の深理にーちゃんの前では結構しおらしい。
「そーだ。もぎゅーがね、最近ごきげんナナメなんだ〜。連れていっていい?」
もぎゅー。咲耶ちゃんが大事にしてるモモンガの名前だ。
世の中には猫にタヌキとつけたり、いきなり仰々しい名前をつけたりする人がいるから驚くなとパパとママは言っている。
ちょっと『子音』だけははしゃいでつけちゃったらしい。だから下の妹は真由にしたと言っていた。
もしかしたらおじいちゃん達がねねと言う名前に不満だったのかなと思う。
「いいと思うよ」
「ありがと。ねぇ、昨日の特番見た?」
えへっと笑ってから咲耶ちゃんは乙見ちゃん双見ちゃんの方へ駆けていく。
今のところ、戸津敬信。僕の将来の夢は宇宙飛行士。だったりする。
だって、かっこいいいよね!
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『うろな第三世代!』
設定情報より
高原ツインズ(乙見ちゃん。双見ちゃん)お借りいたしました。