第6話:学園パーティでの告白、阻止できませんでした
断罪エンドの回避どころか、ヒロインのマリアが闇堕ちしそうな雰囲気を醸し出している。
いや、雰囲気どころか、確実に殺意を向けられてた。
「でも……それでも私は生き延びる!」
せっかく転生したんだから、最後はハッピーエンドで締めたい!
そのために、マリアの好感度を回復しつつ、攻略対象たちから嫌われる。それが私の戦略だ。
そんな中、やって来たのは、学園最大のイベント──
『春の夜会』
社交界デビューを飾る貴族の子息・令嬢が集まる、華やかなパーティ。
このイベントはゲームでも重要で、ここで王太子からヒロインに愛の告白がされるルートが多かった。つまり、婚約破棄のチャンス!
「今夜こそ、アレクシス様がマリアに告白しますように……!」
私は願いながら、派手すぎない落ち着いたワインレッドのドレスを選んだ。
これ見よがしな悪役令嬢ドレスじゃなく、“空気モブ”として目立たない装いで、会場の隅で静かにしていればいい。
なのに──
「セリーナ、探したよ」
「え?」
始まってすぐ、王子・アレクシスがこっちに一直線で歩いてきた。
いやいや待て待て待て!! この流れ、本来ならヒロインが王子と踊るやつ!
「わ、私はマリアさんとお話していたいのですわ! ですから王子様はマリアさんと──」
「ダメだ。今夜はどうしても、君と踊りたい」
にっこりと笑う王子。その背後では、マリアが小さく息を呑んでいた。
あっ……これ、完全にフラグ折った。
でも、拒否できない。ここで拒んだら、“婚約者としての体面を潰した”と逆に断罪イベントが加速する恐れがある。
しぶしぶ手を取ると──
「……セリーナ。私にとって君は、最初から特別だった」
「……えっ?」
「政略結婚だと思っていたけれど、君と過ごすうちに、心が惹かれていった。だから……今さら誰が現れようと、私は君を選ぶ」
「まっ、待って、これってまさか──」
「私は君を愛している。正式に、心からの婚約者として迎えたい」
──やっっっちゃったああああああ!!!!!
この瞬間、会場の空気が変わった。
拍手、ざわめき、冷たい視線。そして何より、マリアの顔が……怖い。怖すぎる。笑ってるのに、目が笑ってない!!
「……おめでとうございます、セリーナ様」
「ちがっ、これは違うの、事故なの、誤解なのーーーっ!!!」
だが、誰も私の心の叫びなど聞いていない。
この夜会は、“王子からの愛の告白”が起きたルート確定イベント。婚約破棄どころか、本決定してしまったじゃん!?
──その夜、私は自室でうずくまっていた。
「……なんで、こうなるの……」
死亡フラグが回避できない。
むしろ、ゲームルートを完全に“ヒロインから強奪”してしまっている。
マリアがどう出てくるかも分からない。
でも、ひとつだけ確かなことがある。
このままじゃ、断罪されるのは“私”じゃなく、“マリア”かもしれない。
物語はもう、元のルール通りには動いていない。
私はこの歪んだ世界で、どうにか“バッドエンド”を全員分回避しなきゃならない。
そしてなにより──
「……婚約破棄、遠ざかった……!」
そう、最大の問題はそこだった。




