第3話:なぜか好感度が上がっていくんですが!?
──死亡フラグをへし折るには、婚約破棄が最短ルート。
なのに、王太子に媚びを売ってもいないのに好感度が爆上がりしている気配がする。
「はぁ……なんであんなセリフ言うかな、あの王子……」
お茶がぬるいって文句言っただけなのに、「君らしい」とか「どんなに振り回されても構わない」って、どこの恋愛ルートだよ!?
こっちは生き延びたいだけなのに、なぜ本編開始前から好感度イベが連発してるの!?
「……次は、アレイン騎士団長ね」
アレイン・グリード。銀髪碧眼の騎士団長であり、筋金入りの堅物。
乙女ゲーム本編では、ヒロインが一生懸命近づいても、心を開くのに時間がかかる難攻不落タイプだ。
よし、彼にヒロインを引き合わせて、「私は応援するだけのモブ」でいれば……!
* * *
作戦は完璧だった。
ヒロイン(ゲームの主役)であるマリアとアレインが出会えるよう、私はあえて「お忍びの護衛をお願いしたい」と依頼し、マリアを同行させた。
「アレイン様、私の護衛はこの娘に任せたいの。将来、王子妃になる娘ですもの。貴族社会を見ておくといいわ」
あえて“私は身を引く”というポジションを強調。これでいい、ヒロインに光が当たって、私はフェードアウト──
「……断る」
「……へ?」
「セリーナ様の護衛は、私以外に任せられません」
えっ、ちょっと待って!? その台詞、原作でヒロインに向けて言うやつじゃないの!?
「それに、王子妃の座は……誰にも譲る気はありません」
え、え、何その意味深発言!?
しかも今、アレインの頬がわずかに赤い!?
ああああああああ!!!
この世界、フラグが歪んでる!!
* * *
その夜。私は日記に叫びを書き殴っていた。
《失敗。完全に失敗。むしろ好感度が逆に上がっている。死亡フラグ加速中。》
ゲームのルールが通用しない。
いや、通用しないどころか、私の行動が新しいルートを作っている可能性すらある。
もういっそ、森の奥で一人で暮らしたほうが安全じゃない?
「でも……それじゃただの逃避よね。私がここにいる理由が、何かあるのかもしれないし」
私は机の上に置かれたゲームのシナリオメモ──いや、記憶を頼りに書いた全イベント表──を睨みつける。
「次は……学園パーティ。ここが勝負所!」
死亡フラグをへし折るための嫌われ作戦、まだ諦めない!
だがその頃、すでに学園内では“セリーナ様推し”の生徒たちが密かに増えはじめていたことを、彼女はまだ知らない──。




