↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/39

24 未来への帰り方

 アリシアとフレデリックが話をしている間。フレンは街の中をあてもなく歩いていた。


(未来に帰るための手がかりを探すとしても、どこをどう探せばいいのか検討もつかないな)


 本当は、昨日あんなことになったアリシアの状態が気になる。すぐにでもアリシアのそばに行って、大丈夫かと声をかけてあげたい。だが、フレデリックの手前、なんとなく気が引けてしまう。


(いつの間にかフレデリックに遠慮するようになってしまった。あいつは俺なのに)


 この時代に来て、初めてアリシアを見たときには奇跡が起きたと思った。死ぬ直前、もう一度会いたいと願った人物が、過去とはいえまた会えたのだ。共に時間を過ごすうちに、触れたい、そばにいたいという欲も出てくる。だが、今の時代のアリシアの婚約者は、紛れもなく今の時代のフレデリックだ。


(それに、俺がアリシアの婚約者時代だった頃には起こらなかったことが起こっている。俺がここにいるせいで、過去が書きかわっているのか?)


 そのせいで、アリシアがあんな目にあったとしたなら、自分はここにいるべきではないのではないか。かといって、メリッサの件を解決しないままここを去ることも不安だ。そもそも、ここからまた未来へ戻る方法はわからない。


「おや、随分と珍しいものを持っていなさるね」


 考え込みながらただ街の中を歩いていると、露店に座るフードを深く被った女性に声をかけられた。


(俺か?)


 キョロキョロと辺りを見渡すと、他に人はいない。


「そうだよ、あんただよ。あんた、左の内ポケットに入ってるものを見せてごらん」

「急にそんなこと言われてはいどうぞなんて見せるほど俺はお人好しじゃないぞ」

「ほほほ。まあ、そう言わさんな。あんた、未来から来たんだろ」


 フードを深く被る女性の一言に、フレンは両目を見開いて露店の机に両手を置く。


「あんた、なんでそれを知っている」

「ふっ、私に見覚えはないかい?未来の私はあんたに会っているはずなんだけどね」


 そう言われて、フレンは女性をジッと見つめる。フードを深く被っていて顔は全く見えない。でも、この光景、前にも見たことがある気がする。



◇



「あんた、死相が出てるね。もうすぐ死ぬよ」


 それは、過去に戻る前のこと。アリシアと一緒に街で買い物をしていると、突然露店から声がした。


「は?穏やかじゃない話だな。そんなこと言って何か高価なものでも売りつけるつもりか?」


 フレン、つまり未来のフレデリックはそう言って警戒したが、フードを被った女性は楽しそうに笑う。


「そんなことしないさ。捕まりたくないからね。別に私だって他人の人生に口出ししようなんざ思わないよ。でもねえ、あんたは奥さんを残して死ねないだろ?あんたたち夫婦には新しい希望の光が見える。それが見えてしまったのに、それを消すようなことはしたくないからね」


 そう言って、女性は袖から一つの鉱石を取り出した。その鉱石はワインレッドとパープルを合わせたような色で、銀細工が施してありとても美しい。


「これを持っていなさい。きっとあんたを守り導くだろうよ。過去の私に会ったら、無視せずにちゃんと話をするんだよ」


 そう言って、女性は無理やり未来のフレデリックの手を取って鉱石を握らせる。


「あ、おい、ちょっと」


 未来のフレデリックが鉱石を返そうとすると、突然後ろで歓声が上がる。驚いて振り向くと、大道芸が道を歩いていた。ふと露店に目を戻すと、驚くことに、そこには誰もいなかった。



◇



「まさか、あの時の?」

「ふふふ、思い出してくれたかい?」

「信じがたいが、確かにあんただ。……お守りって、結局俺は死ぬことになったんだぞ?ちっとも守ってくれてないじゃないか」


 内ポケットから鉱石を取り出し、見つめながらそう吐き捨てると、フードを被った女性はふふ、と小さく笑った。


「でも、死なずに過去へ戻ってきただろう?こうして私にも会えた。その鉱石が導いてくれたんだ。あんたを守れた証拠だよ。未来へ戻りたいんだろ?」

「帰れるのか?」


 フレデリックが驚愕の眼差しを向けると、フードの女性はまたふふふ、と小さく笑う。


「そのためにそれを渡した。いいかい?チャンスは一度きりだ。このまま戻ったとしてもあんたは同じ目にあって今度こそ死ぬ。そうならないように、こっちでしっかりと問題を片づけるんだ。片づいたなら、その鉱石を手の上に乗せて祈りな。元の場所に戻してくれって」

「それで、帰れるんだな?」

「チャンスは一度きり。大切に使うんだよ。未来の私にもしまた会えたら、ちゃんとお礼を言っておくれ」

「ちょっと待ってくれ、まだ聞きたいことが……」


 フレンが言いかけた時、またあの時と同じように背後で歓声が上がる。思わず振り向くと、なぜか花火が打ち上がっていた。ハッとして露店の方を振り向くと、またあの時と同じようにそこには誰もいなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。