12 本当のこと
「話って一体なんだよ。それにさっきのはどういうつもりだ!アリシアを抱きしめるなんて……」
「でも、そのおかげでお前もちゃっかりアリシアのこと抱きしめてただろ?結果よかったじゃないか」
フレデリックの部屋で、フレンとフレデリックはにらみ合うようにして話をしていた。
「俺のことをやたらと責めるけど、元はと言えばお前が悪いんだからな。お前がアリシアを不安にさせるようなことをするから」
「だからメリッサとは何もないって言っただろ、あんただって未来の俺ならわかってるはずだ!」
フレデリックがムキになって言うと、フレンは腕を組んで冷ややかな視線を送る。
「もちろんよくわかってる。それは俺もアリシアに伝えたよ」
「だったら」
「それでもだ。お前は何も言わなさすぎる。メリッサに何を言われたのかアリシアに言えば済む話なのに、言わずにまるで隠すようにしてごまかしただろ。アリシアには一目瞭然だよ」
フレンにそう言われてフレデリックは言葉に詰まると、フレンはそのまま話を続けた。
「アリシアはメリッサのことを別に悪く思っていない。むしろ可愛がっている方だと思う。でも、だからこそメリッサに何を言われたのか、お前は言いづらいんだろ」
「そこまでわかってるんならもういいだろう」
「よくねぇよ。アリシアとメリッサの仲を悪くさせたくない気持ちはよくわかる。でも、そのせいでアリシアを不安にさせ続けるのは違うだろ。それに」
そう言って、フレンは眉間に皺をぐっと寄せてひとつため息をついた。
「俺が誰かに刺されて死にそうになってこっちに来たという話を最初にしたよな。後ろから突然刺されたから誰に刺されたかはわからない。直前、誰かと話をしていたはずだが、誰と話をしていたのか覚えていないんだ。ただ、その件に恐らくは未来のメリッサが関わっていることはわかってる」
「は!?」
フレンの話にフレデリックは驚愕し、意味が分からないという顔をしてフレンを見つめる。
「そんな、なんであんたが死にそうになったことにメリッサが関係してるんだよ?」
「今から言うことは絶対に誰にも言うなよ。もちろんアリシアにもだ。俺たち二人だけの秘密だ。守れるか?守らない限りこれ以上のことは話せない」
フレンの真剣な表情にフレデリックは絶句する。未来の自分はそんなにも不穏なことに巻き込まれているのかとフレンを見つめ返すが、フレンはじっとフレデリックの返答を待っていた。
「……わかった。絶対に誰にもいわない」
フレデリックの返答に、フレンはふーっと大きく息を吐いてから力強く頷き口を開く。
「……未来のアリシアはたびたび誰かに命を狙われていたんだ」
「なんだって!?」
「毎回未遂に終わって怪我もなくアリシアは無事だ。むしろ肉体的ダメージはわざと当たらないようにして与えずに、精神的ダメージをじわじわと与え続けているようなやり口なんだ。俺はそれがどうしても許せなくて犯人を必死に探していた」
フレンの話にフレデリックの額に青筋が走る。未来のアリシアをそんな風に狙う奴が絶対に許せない。フレンも未来の自分だから同じように怒り、そいつを絶対に許さないと必死だったのだろう。
「未来のメリッサには夫がいる。メリッサのことを本気で好きな男で、メリッサが若い頃からずっと俺に強い憧れを抱いていることもわかった上で結婚するほどの男だ。そいつがアリシアを狙う犯人だとわかった。あろうことか、メリッサに指示されて、ということもな」
「メリッサに……?どうしてそんな」
このことをアリシアが知ったらきっとショックを受けるだろう。それにしても、メリッサはどうしてそこまでアリシアを気にいらないのか不思議でならない。表向きは二人とも仲が良いのだ。
「わからない。とにかく犯人を突き止め、詳しく調べようとしていたところで俺は誰かに刺された」
「それならメリッサの夫という人物なんじゃないのか?あんたに犯人だとばれて口封じのために殺そうとした」
「その可能性は高い。でも、確証がないからな。とにかく、そういうわけで俺はここでもメリッサを警戒している。だからお前にもなるべくメリッサを警戒してほしいし、アリシアには疑われるようなことはしてほしくないんだよ」
フレデリックは唖然としながらフレンを見つめていたが、フレンの話が終わるとギュッと拳を握り締めた。
「わかった。アリシアにはちゃんと話すよ。メリッサのことも十分に警戒する」
「ただ、警戒しすぎてメリッサやアリシアに変に思われないよう、表面上はいつも通りにしていてくれ」
フレンがそう言うと、フレデリックは神妙な面持ちで頷いた。




