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1 突然の出会い

「俺の方が好きだろ」

「俺の方が好きですよね」


 一人の令嬢が二人の男性に挟まれて言い寄られている。一人は二十七・八歳くらい、もう一人は十八歳くらいでどちらも黒髪にアパタイト色の綺麗な瞳、スタイルがよく美しい顔立ちをしている。

 言い寄られている伯爵令嬢アリシア・ブライドマンは、美しく長い金色の髪を風になびかせ、ルビー色の瞳を戸惑うように揺らしている。


(ど、どうしてこうなってしまったの!?)





 その日、アリシアは自室の窓から屋敷の外を眺めていた。ふと、屋敷のゲートの前に、先程までは無かった光景がある。そこには、なぜか男性が倒れていた。



(えっ!?さっきまではいなかったはず……)


 慌ててアリシアは自室を出て屋敷のゲート前に向かう。そこには綺麗な身なりをした男が意識を失って倒れている。そっと近づいてみるが、起きる気配はない。

 よくよく観察してみると、騎士のようだ。黒髪のその男は騎士服に身を包み、帯剣をしている。見慣れない騎士服だが自国のマークが入っているので、恐らくはこの国の騎士だろう。


(一体、どうしたのかしら……それにしても綺麗な顔)


 気を失っているがあきらかにイケメンだろうと思える顔立ちだ。騎士でこれほどまでに美しい顔立ちであれば、令嬢たちからの人気もすさまじいだろうなとアリアは思う。


(それにしても、どうしたものかしら。ここにこのままにしておくわけにもいかないし……)


 うーんと首を傾げてアリシアは悩んだが、悩んだところで騎士が起きる気配は全くない。アリシアは意を決して、人を呼ぶためにすぐに屋敷へ戻っていった。






 アリシアが屋敷の前で倒れていた男を助け、屋敷に入れてから数時間後。男は来客室のベッドで目を覚ました。目を覚ましたはいいが、近くの椅子に座っていたアリシアの顔を見た途端に絶句する。


「あの……?大丈夫ですか?」


 アリシアの呼びかけに返事はするが、アリシアの顔をジッと見たまま茫然としている。


「アリシア……アリシアなのか?」


 両目に涙を浮かべながら、その男はアリシアの両手を掴んで嬉しそうに微笑んだ。


(えっ、な、なに!?)


「あ、あの突然何なのですか!?」


 両手を急に掴まれて戸惑うアリシアに、男はハッとして手を離す。そして、アリシアの顔を見て不思議なことをつぶやいた。


「アリシア、ずいぶんと若返ったんじゃないか……?」

「は?」


 会話がかみ合わない。アリシアが訝し気な顔で男を見つめると、男は何かに気づいたように辺りを見回す。そして自分の両手を見つめ、何かを確かめるように自分の体をまさぐる。


「傷が、ついていない……痛みも全くない。そんな馬鹿な。でも、この部屋も見覚えがある、そんなまさか……アリシア、今、君はいくつなんだ?」

「は?えっと、十七歳です。もう少しで十八歳になりますが……って、あの、あなたは一体?おかしなことをするようでしたらすぐに人を呼んで追い出していただきますよ」


 怯えるような態度を取ってはいけないと、虚勢を張りつつもアリシアはきりっとした顔で男に言う。すると男は両目を見開き、茫然とする。だが、すぐに乾いた笑いが部屋の中に響いた。


「は、ははは、嘘だろ、はは、そんな、そんなまさか……おれは、過去に……?」


 両手で頭を覆い、その男は驚きと絶望の入り混じった顔でそう呟いだ。


「……十七歳ってことは、まだ俺に出会う前なのか?」


 ぼんやりとアリシアを見つめ、男はまたわけのわからないことをつぶやく。だがアリシアを見つめるその瞳は不思議と暖かく、深い熱のようなものを感じてアリシアは胸が高鳴った。


(な、なに?どうしてそんな目で私をみるの?それに、どうして私の名前を?)


「本当に、一体何なのですか?さっきから意味のわからないことばかり……騎士様の服を着てらっしゃいますが、見たこともない騎士服です。あなたは一体何者なのですか?」


 アリシアがそう言うと、男は一瞬困った顔をしたが、すぐに顎に手をのせて考え込む。そして、アリシアの顔をジッと見ながら、こう言った。


「俺の名はフレデリック・ヴァイダー。アリシアの未来の夫だ」




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