十六
今回で話で『王』の戦闘が終わるので少し長い。
そして主人公、龍生初めて心折られました…。
※一、二、十一話を修正加筆しました。
{縺弱c莠懷惠蜚悶??誓莠樣仭蟀?骭───!!!!!}
「まっっっっっっっずぅい!!!!!!???」
『王』の味は名状し難いレベルの不味さだった……。
あまりの不味さに意識を飛ばしかけるけどなんとか持ちこたえた。
でも、身体は正直で現在龍体であるボクの巨体はズシンッと地面に突っ伏し蹲って震えた。
……いやね、迂闊に喰べたボクも悪かったよ?
血を失いすぎて、味の事まで考えが回らなかったのもあるけどさ。
それでも多少不味くても大丈夫だと思ったんだよ。
だって、向こうでも仕方が無いとは言え、異形ノ者共を殺す為奴らを喰べてたからね。まぁ…どれも不味かったけど。
不味かったけど顔顰める程度だったから我慢は出来たんだ。
だから、『王』もそれなりに不味いだろうなーと一瞬だけ思った。
味の方も彼奴等の千体凝縮して出した味位でしょう、と思って躊躇なく口に入れてしまった……。
結果はご覧の通り、ボクは地面に突っ伏し悶絶していた。
たった一口、されど一口、それは満身創痍のボクの身体のみならず味覚と魂を容赦なく狂気と恐怖に叩きのめした!!
まさかここで、『王の核』の味で倒れるなんて誰が予想出来ると思うっ?!!
幸運だったのは、『王』がボクの血毒で再起不能になっていた事だ。
ボクが奴の味で悶絶している間に倒されたりでもしたら、もう、本当に、恥ずかしくて、白朧に顔向け出来ないっっ!!!
「(あと、このボクの無様な姿を見ていたそこら辺に隠れている異形ノ者共は後で殺す)」
“核”を喰われてまた煩く喚き出したけど、もう魔術も触手等も出せないから大丈夫だ。
もう一つの幸運は、一口だけで済んだ事。
ボクが地面に格好悪く蹲っている間に、龍気と体力が回復した。
まぁ、傷と血の方は回復出来なかったけど、あと一口“核”を喰べたら回復したのだろうけど……ボクにはもうアレをまた口に入れる勇気は無いから試す事はしない、否、したくない。
今まで生きた龍生で初めてだったよ…ただの味でここまで心折られたの……。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆
ん?ああ、ごめん、ごめん。『王』の味の方に気を取られてたから説明してなかったね。
ボク達番龍は異形ノ者共を喰べて体力、傷と魔力を回復する事が出来る体質なんだよ。
なにせ、彼奴等の身体はこの世界に寄生する前に喰べた栄養豊富なモノで出来ているからかな?
『虚』から出る瘴気と毒を取り込んで回復するより早いよ。
奴等の返り血を浴びても発狂しない番龍のボクは、当然食べても害はないし依存症もない。
というかこれはボク達、番龍からすれば奴等の捕食は当たり前で、彼奴等を殺す術の一つなんだから。
さっきも言った通り、瘴気も毒も取り込めるけどそれだけじゃ微々たるものだし長時間殺し続けられない。
通常の食料も同様。と言うか、あの場所はそんなに食べるもの無いからまず使わない。勿体ないもの。
だから消去法として手っ取り早く、彼奴等を食べて殺す方に至ったわけなんだけどね。
じゃないとこっちが殺されるもの。
因みに番龍が異形ノ者共を捕食して戦う事は白朧は知っているよ。
最初にソレを見た時の反応は驚愕こそしていたけど、
軽蔑・嫌悪の眼差しはなく、真一門に閉ざされた口を開いて罵倒するのかと思いきや、やたら体に障りはないか?腹は痛くないのか?とかボクが異常状態になっていないかをずっと心配して確認してくるんだもん。
この反応にはボクの方も驚いたし、心配されるのは初めてだったからちょっと心がむず痒かったかな。
まぁ、それは最初だけだけど…。
だってそこから大変だったんだ。
その日からボクが奴等を捕食した後必ず白朧はボクが異常を来していないかを確認するようになった。
更に毎日の様に住処周辺から獲ってきた獣肉や野菜果物を持って来て、ボクにグイグイ食べるよう進めるようにもなった.....。
別に食べ物に困っている訳じゃなかったから、最初こそはいらないと断っていたんだけど、そうすると表情には出てないけど、盛大にしょんぼりしたオーラを醸し出してくるんだもん。しかも一日中だよ?
当初の白朧と出会って間もない頃のボクは、それが鬱陶しかったのと断るのが面倒くさくなって、仕方なく貰って食べる様になった。
そうしたら持ってくる食料の量が増えた…なんでそうなる?ってその時は疑問に思ったのが懐かしい。
白朧の食料デリバリーのおかげでボクの舌は段々肥えていったのは言うまでもない。
ん?……あれ?もしかして、ボクが『王』の味の不味さに悶え苦しむ羽目になったのって白朧の食料デリバリーもその一因になってる?
…………よし、暫くアイツとは離れて寝ることにしようか……フフフフフフ♪
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆
『王の核』を喰べてからどれ位時間が流れたかは覚えていないけど、やっと今だ舌に残る名状しがたい不味さが少し薄らぎ、自力で立てるようになった。
「はぁ…は…!よう、やくっ落ち着いたっ!」
とは言ったけど、正直しんどい。
足はガクガク震えるし、目眩もするし、動悸·息切れも治まらない。
ハッキリ言ってあと五百年休みたい。
でも、そんな暇はないのは分かっている。
早く『虚』の中から脱出して白朧の安否を確認しなきゃいけないから。
これは『王』と闘っている最中気付いた事だったんだけど、戦い始めて数十年経過した頃。
ある日突然少しずつだけど、ボクの顎の下に付けていた彼の綺麗な黒い逆鱗に変化があった事を…。
この世界の龍種は番になる際、互いの逆鱗を交換しそれが生えていた所に付ける風習がある。
君達の世界で言うと、結婚指輪みたいなものかな?
逆鱗はその龍の魂の一部みたいなもので、体調が悪かったり、寿命が近いと鱗の光沢が陰るか、汚染されるか、最悪罅が入ったりする。
要はそこを見ればその龍の状態が分かるのさ。
また、魂の一部だからこそ逆鱗に直接攻撃を受けてしまったら、その龍も間接的に大ダメージを負ってしまう。龍種最大の弱点だ。
だから、龍達は常に逆鱗が見えなくなる効果と触れられない効果を持つ結界を張るのさ。
龍が番以外に逆鱗に触れられるのを嫌うのがこれが一因だね。まぁ、他の世界の龍はどうだか知らないけど。
白朧の逆鱗に異常現れたと分かった時は驚いて攻撃の手を緩めてしまいそうだったけど、なんとか耐えた。
激しい殺し合いの真っ只中、一瞬でも隙を作ったらあっという間に奴に喰われてお終いになるもの。
歯がゆい思いの中、気を彼の方に向ける事は出来なかった。
死んだらそれこそ永遠に白朧の心配どころか、会えないし彼と交わした約束も果たせなくなってしまうからね。
本当に気にはなったけれど、そこは抑えて闘いに専念するしかなかったんだ……。
でも、その二百年にも渡る死闘はもう終わる……。
バサリと大きく羽を広げボクはゆっくりと上昇する。
回復した龍気を使い百本以上の大きな岩の槍(余った真の血毒付き)を生成し、その内の二十本を放つ。
{縺?◆縺?>逞帙>逞帙>逞帙>逞帙>縺?>縺?>縺?>!!!!}
「長くなりそうだとは予想したけど、ここまでとは思ってなかった……!」
岩の槍で串刺しにして地面に縫い付けた異形ノ者共の『王』を見下ろした。
{閻ケ貂帙▲縺滄」溘o縺帙m繧ッ繝ッ繧サ繝ュ蜈ィ驛ィ縺懊s縺カ!!!!!}
叫んだ反動で毒と岩の槍で開けられた穴からゴポリと大量の血と臓器がどんどん溢れ出るけど、そんなのお構いなしに『王』はまだ諦めてないのか、ボクを喰らおうと意味不明な言葉を叫びながら無い腕を伸ばして暴れている。
「流石、数多の星々を本能のままに貪り喰ってきた異形の『王』だ。
生命力も耐久力も半端ないね。
なにより、その命の光が消える程の致命傷を負っても失わない、異常なまでの食欲には流石のボクも感服するよ」
ボクはそう言いながら、岩の槍とは別の、巨大で轟々と激しく燃え盛る超高温の青白い火球を作った。
「その敬意に評してキミの身体と魂・存在ごとこの特別な炎で灰諸共焼き尽くしてあげる(ボクの“中”に入り込んだ方は…今は面倒、後で殺ろう)」
少しでも肉片が残ってれば時間はかかりそうだけど、復活する可能性があるから念の為徹底的に抹消する。
「さようなら『虚の王』───否、星界を彷徨う永遠の『■の捕食者』の肉片」
最期の別れを告げ終わったのと同時に青い火球を『王』の真上に投下した。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆
{───だから忠告したのだ。
□の力を持つ龍の所有物に手を出すな、と……}
青い高温の炎に全てを灼かれる『王』に■の肉片の無機質な音が響いた。
■の肉から生まれたその異形の仔は生まれた時から飢えていた。
その飢えはまるで呪の様に異形の仔がいくら喰べても喰べても満たされるのは、その快感を得るのは一瞬で、完全に全てを満たしてはくれなかった。
やがて一つの星を喰らい尽くした異形の仔は、新たな餌を求めて星の海へと旅立ち、そこでも自分が見つけた星星を余すこと無く腹に収めた。
……なのに、やはり異形の仔の飢えは満たされなかった……。
気が遠くなる程の時が流れた。
異形の仔は“仔”ではなくなり、創造主と■と同じ様に自分の肉片から“仔”を作り増やしやがて『王』となった。
『王』となった仔は長い旅の果、ある星を次の餌にと狙った。
そこは龍と神が暮らす世界。
何時だったか喰らった星の殆どに“ヒト”という種族がいたが、そこにはヒトの形に変える龍と神がいるだけでこの世界にはソレがいなかった。
だからなのか、この世界は長く在ったにも関わらず瑞々しく、程よい甘さと透き通るような爽やかな命の香りが漂っていた。
色が濁り熟しすぎて腐りかけた臭いしかしない、ヒトがいた世界とは全く違う。
この世界の匂いは『王』の食欲を刺激するには十分だった。
───これは“当たり”を見つけた。
そう思った『王』は早速この世界に降り立とうとしたが、それは出来なかった。
ある一体の白い龍が『王』の邪魔をしたからだ。
白い龍が現れたその時、『王』の中にある■の肉片が大きく警鐘を鳴らした。
───アレは□の力の一部から生まれたモノ。
───□は■と同じ三体の獣。
───だが■と□は同じで違う。
───□は三体の中で遥かに強く、冷酷で慈悲深い、識者で狂者、永遠の『愛』に縛られた獣。
───故に□の力の一部を持つ龍には手を出してはいけない。龍が大切に所有する宝物または……。
───片方或いは双方に手を出して後に待つモノは凄惨な報復と破滅だけなのだから……。
たかが龍一体と『王』は白い龍を喰らおうとしたが、それは出来なかった……それどころか完膚無きまでに敗北した後、“仔”ごと龍が創った異空の結界───後『虚』と呼ばれる大穴に閉じ込められてしまったのだ。
たった一体の龍にやられた『王』は己の敗北が信じられなかった。
同時に■の肉片が鳴らした警鐘に従い、この星から逃げるべきだったと後悔した。
もう全ては遅すぎた。
こうなったのは『王』があれだけ危険と訴えたのにも関わらず、それを無視し『王』は己を満たしたいという欲に身を任せた□の力を持つであろう白い龍に闘いを挑んでしまった結果だ。
唯一幸運だったのは、『王』と残された仔は殺されず『虚』の底に封じられるだけで済んだ事に彼女は安堵した。
結界を喰ってしまえば良かったが、思いの外龍から受けたダメージが深く、結界の大地と岩壁が喰べられなかった。
まぁいい。と、『王』は深くは考えず回復に専念した。
結界は一時的なもの。
あの龍がいなくなれば弱くなるか運が良ければ消えてなくなるだろう…。
その間は自分は傷を癒やしながら、飢えの方は己が生み出した仔を喰って飢えを和らげれば良い、と最初は余裕で構えていた。
この甘い考えが出た時点で『王』の運命は確定した。
『王』はもう忘れてしまっていた。
■の肉片が言った忠告を、
「手を出して後に待つモノは凄惨な報復と破滅だけなのだから……」
と……。
そう、己の宝物を狙われ怒り狂う白い龍がただ『王』達を封印するだけ終わるはずが無い。
『王』達の地獄はもうこの時から始まっていたのだ……。
龍の封印の結界は『王』達の捕食する事で一時的に飢えを満たして得る快感と感覚、宙へ飛ぶ為の翅と自我を少しずつ奪っていく。
奪ったモノはそのまま結界の強度を上げ、底を更に深くする為のエネルギーに変換されていた。
封印され数百年たった頃、結界の上にポッカリと小さな穴が開いていた。
穴を見つけた『王』達は必死で上を目指そうとしたが出来なかった。
上に飛びたくてもいつの間にか翅はボロボロになり飛ぶ事が出来なくなっていた。
岩壁を登ったが上に進むにつれ力が無くなり途中で落ちてしまう。
ならばと、『王』は新しい仔を産みその仔等を外に出し、外の餌を捕食した後『王』の元に帰る様に命令し送り出したが、結局一匹も戻らなかった……。
封印されて数千年。
底にいるのは彼女と一緒に封印された仔等の殆どは、彼女の腹に収まっていた。
彼女の食手から逃れた仔は、彼女が僅かに残した餌の欠片を命がけで拾い喰ってなんとか細々と生き延びていた。
結界の効果は今だ健在で、『虚』の底にいる最初に封印された『王』達の力の方は根刮ぎとまではいかなかったが、自我が無くなり己が何であるかも忘れてしまっていた。
腹を満たす快感と感覚も獲られなくなり、残されたのは極限に達した飢えと、それを満たしたいという初歩的な捕食の本能のみ。
空腹と恐怖に支配された『虚』にある日、いつもとは違う大きさの穴が開いた。
その穴から何かが底に落ちて来た。
正体は紅い眼をした白い身体の生物。
白い生物を見た時、一瞬だけ『王』の中の何かがざわついた。
しかし、仔以外の餌に中のざわつきの事など忘れた。『王』は封印され初めての餌に興奮し、捕食の本能のまま白い生物───かつて己を地獄に封印した同じ番龍である龍に闘いを挑み───……
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆
「……疲れた」
小さく呟いたボクは黒く焼けた大地にだらしなく寝そべっている。
この姿を白朧が見れば、直ぐ様ボクを担いで安全な所まで運ぶんだろうな…。
そして「堂々と敵地のど真ん中(底?)で寝るな!」とお説教しそうだ。うん、絶対するな。
「(大丈夫だよ、白朧。……底にいた奴等は全部焼殺したから…)」
今ここにいるのはボクだけ。
宣言した通り、『王』と下僕みたいな異形ノ者共は灰も残さず灰燼へと帰した。
まだ上の方にいるけど、そいつ等は『王』を殺したボクが怖いのか降りてくる気配はない。
だからボクは安心して身体を休める事が出来るのだ。
まぁ、一応周りに沢山罠と硬い結界を貼っているけど。
そう言えば、『王』は最期までボクに向かって何か言っていたけど、意味を考えるのも億劫だったから止めた。
今はとにかく思いっきり寝て身体を休めたい…。
ボクは重い瞼をゆっくり閉じた。
「おやすみ……白朧」
蛇足ですが、初代の番龍が『虚』を創った事や『王』達・異形ノ者共をそこに封じた事は、二代目から当代の番龍・主人公の景黒は全く知りませんでした。
景黒は『王』の“核”を食べた事で『王』の記憶の一欠片が流れ込んできて初めてその事実を知ったのです。
実は初代は『王』達を苦しめる為以外に、もう一つ『虚』を創った理由があります。
それがしょうもないもので、後始末するの面倒だからと後の番龍が全部処理してくれるだろうと、丸投げしました、そして隠しました。
でも、一応後ろめたさもあったのか継ぎ足し血毒を残してはくれたようです。
□と■について
宙より遥か先に在った名の無いモノ、各幻想種の真の始まりであり元みたいな存在。
□は景黒と同じ全ての龍或いは竜の形と性質を持つ種、■は『王』と異形ノ者共と同じ全ての蟲の形と性質を種です。
宙側にいる龍や蟲等は、実は宙が偶然に彼等の極小の欠片を拾ってそれを元に創られた。
その種の名も宙によって付けられた。
彼等の表記が記号なのは、宙の外・堺・内ですら知らない未知の言語と音だから。(そもそも存在する場所が宙が介入できないから解読不可のなのは当たり前。ただ向こうは加減すれば出来るが…)
この言葉を理解し口に出来るのは、彼等の力か因子・身体の一部から直接生まれたかそれに最も近いモノだけ。
※平気で彼等を呼べて元気ピンピンしている例外的な存在もいる(どっかのマシュマロ)。
因みに□と■以外もう一体同じモノがいる。




